キース・アウト

マスメディアはこう語った

休校が続くからといって慌てて政府や学校をせっついて、オンライン授業なんか始めさせたら大変なことになるぞ。

 新年度が始まったとたんに再び休校になり、
 「子ども在宅ストレス障害」に陥った保護者から、
 オンライン授業への要求が高まっている。
 けれどあんなもの、
 うっかり導入すると大変なことになるぞ。
という話。

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(「パソコンで学習する子ども」 フォトACより 

 

記事

 

日本のコロナ「学力格差」を止めるための方策  
      
オンライン授業「後進国」日本は何をすべきか

親野 智可等 : 教育評論家
(2020.04.09 東洋経済オンライン)

toyokeizai.net


 新型コロナウイルス感染症の終わりが見えない。学校がいつ再開するかわからない地域も多い。再開したところでいつ休校になるかもわからない。先の見えない不安定な状態が続いていて、いつ安定するのかも皆目わからない。「長期戦」を覚悟する必要があると言う専門家も多い。

そんな中で、子どもの学力について保護者たちの不安が増大している。家庭で勉強するといっても限界がある。財力に余裕がある家庭は、家庭教師、個別指導塾、パソコンやタブレットでのオンライン学習、通信教材など、さまざまな選択肢が可能かもしれない。でも、そうでない家庭は学力格差が広がることへの不安が大きい。
 

オンライン授業、フランスやアメリカの場合

 では、どうしたらいいのか? 実は、答えはすでに明らかになっている。それはオンライン授業だ。これが唯一の解決策であり、これなくして問題解決はありえない。実際に、諸外国はいち早くオンライン授業の実施に舵を切っている。

例えば、フランスでは3月16日以降、幼稚園から大学まですべてが休みになったが、そのとき教育大臣は「これからの期間は、子どもたちが勉強できない期間ではない。勉強の方法が進化するだけだ。教育の続きを遠隔でおこなう」と宣言した。そして、オンライン授業が始まった。現在、主にZoomを使ってのオンライン授業が行われている。

柱になる内容としては2つあって、1つは既習内容についてのクイズ形式の問題、もう1つは画面を通して教師と生徒がやり取りしながら進めるオンライン授業だ。

毎日、先生から子どもたちへのメッセージと当日の勉強プログラムの説明ビデオが届くとのこと。また、家庭でプリントアウトできる教材を電子メールで送信することもある。オンラインで質疑応答したりビデオを見たりテストをしたりすることもできる。

アメリカのニューヨーク市では3月中旬からグーグル・クラスルームやユーチューブなどでオンライン授業を行っている。グーグル・クラスルームでは、学習教材や課題を提供したりメッセージのやり取りをしたりできる。子どもは課題ができたらオンラインで先生に提出する。先生に質問を送ったり返事をもらったりすることもできる。

シンガポールでは4月当初からオンライン授業を始めている。Zoomを使ってのやり取り、動画視聴、課題をこなしてからグーグル・クラスルームで提出するなどが主なところだ。

韓国では4月9日に高校3年生と中学3年生のオンライン授業が始まった。4月下旬からは小学校に広げるとのこと。
(以下、略)

  

 「日本の教育は劣っている」という話が出ると、私は反射的に「それはウソだ」と思う癖がついている。
 個々細かな点については優劣のあるものの、総合的に考えて日本を越える公教育を行っている国・地域はひとつもないからだ。

 そして調べる。
 その話にはどこかに錯誤か、嘘が混じっているからである。

 ところが今回取り上げた『日本のコロナ「学力格差」を止めるための方策 オンライン授業「後進国」日本は何をすべきか』は吟味するまでもなく、破綻がありすぎてどこから手をつけていいのかわからないほどなのだ。

 

【ニューヨークで可能なのか?】

 すぐにピンとくるのはニューヨーク。
 アメリカのニューヨーク市では3月中旬からグーグル・クラスルームやユーチューブなどでオンライン授業を行っている。
 多少なりともニューヨークについて知識を持っている人なら(といっても普通の大人程度でいいのだが)、そこがとんでもなく重い貧困問題を抱えた街だということを知っているはずだ。

 実際に今回、ニューヨークの一斉休校がトランプ大統領の国家非常事態宣言から一週間も遅れたのも、1日3食の食事を学校給食に頼っている子どもがかなりいて、彼らの命の保障をしてからでないと休みに入れなかったからだ。
 もしかしたらその一週間がニューヨークにとって命とりだったかもしれないが、それでも休校を遅らせざるを得なかった。目の前の子どもを救わざるをえなかったわけだ。
 そんなニューヨークで「一週間待つから、Wi-Fi環境と最低一台のパソコンを用意しなさい」と言われても全員ができるはずがない。
 案の定、3月20日付のDIAMOND ON LINEには次のような記事が出ている。

 学校のオンライン授業は、3月23日に開始される予定だ。報道によれば、公立学校の100万人以上の生徒たちのうち30万人は、必要な環境が家庭にない。このため、アップル社を始めとする大手企業の協力のもと、市はオンライン環境の整備にあたっているという。
 しかし休校から1週間後、オンライン授業を予定通りに無事に開始できるのだろうか。「この1週間で、生徒たちに配布されそうなiPadは2万5000台」という報道もある。その調子なら、全員に行き渡るのには少なくとも10週間が必要だ。不安や懸念は尽きない。
(2020.03.20  DIAMOND ONLINE『日本だけではない、コロナで「全校休校」を決めたニューヨーク市の苦闘』)

『日本のコロナ「学力格差」を止めるための方策』の筆者は、あとの方(省略された部分)で呑気に、
 問題はありつつも、しばらくすると教師も子どもたちも慣れてきてかなり使いこなせるようになることが多いようだ。家庭にいながらも、オンライン授業によって一定の緊張感が得られて生活にメリハリがつくという効果もある。
などと言っているが、実際に何が起こっているか、おそらく確認しようともしていない。

【韓国はいち早くオンライン教育に舵を切ったのか?】

 私は韓国に関する部分についても首をかしげる
 筆者は、
4月9日に高校3年生と中学3年生のオンライン授業が始まった。4月下旬からは小学校に広げるとのこと。
と紹介しているが、4月9日はこの記事が配信された当日だ。しかも朝の配信だからまだ授業は始まっていない。それにもかかわらず韓国も、
問題はありつつも、しばらくすると教師も子どもたちも慣れてきてかなり使いこなせるようになることが多いようだ。
のくくりの中に入れている。筆者は預言者か?

 私はそもそも韓国が「いち早くオンライン授業の実施に舵を切っている」国のひとつに上げられていること自体がおかしいと思う。
 なぜなら韓国の公立学校は12月下旬に冬休みに入って1~2月を全部休み、3月1日(今年は日曜日だったので3月2日)から新学期が始まる国なのだ。それが新型コロナ禍で3月に始められず、4月になっても始められないからオンライン授業を開始したたのである。

 2月中旬には感染者が増えて爆発直前までいったのだから3月2日の登校など夢のまた夢、その時点でオンライン授業を始めていれば「いち早く」の表現も悪くはないが、3カ月も休んだ後ではけっして早いとは言えないだろう。

 みんなが手探りでやっているのだから、迷いながらもようやく今月から始めた韓国の判断は間違っていない。しかしそれを「いち早く」と持ち上げて、返す刀で、
日本全体で言えば、はっきりいって諸外国に比べてあまりにも遅い、遅すぎる。
と切り捨てる筆者はあまりにもきたない(と私は思う)。

 ではフランスはどうか。

 

【フランスのオンライン教育は保護者の助けになったのか、授業の成果は?】

 フランスも貧困問題・移民問題があると思うが、どうやらWi-Fiやコンピュータの負担を保護者に押し付ける形で始めたらしい。
(意外な盲点があって、ワークシートなどを大量にプリントアウトするためにOA用紙がすぐになくなってしまい、買いに行こうにも文房具店がすべて休業という大変さもあったらしい。)

 調べてみるとこんな記事があった。

  • 「授業中・授業後、保護者は『ICT支援員』の代わりです。Zoomが固まったり、共有されたホワイトボードが自動で表示されなかったといったトラブルが発生すると、小学校低学年の子どもがすべてを解決するのは困難です。そして否が応でも、保護者は日々『授業参観状態』になります。家で会議資料を読み込んでいる最中も、どこかで子どもの一喜一憂に反応してしまいます」「子どもにオンライン教育を」と保護者は簡単に言うが、実は保護者にはICTに関する様々なサポートが、求められることをよく知っておく必要がありそうだ。
  •  授業中、チャットで友達に話しかけたり、大量のスタンプを投稿したり、さらにはZoomのホワイトボード機能に勝手に落書きしたりする子どもがいるなど、リアルの授業以上にカオスになることもあった
  •  「リアルな場でも同じですが、最初に場の雰囲気や、参加者同士の関係構築がうまくいかないと、自由に議論しづらくなります。特にオンラインだと相手の表情が掴みきれず、一つ一つの発言の裏にあるニュアンスが伝わらないので、場が温まるのに時間がかかりました」
  •  「アイデアを生み出す場合、雑談や余白がないといけないのですが、オンラインだと常にオンの状態なのですぐ煮詰まったり、真面目なアイデアしか出なくなりがちです。これは意図的に雑談や休憩、遊びを取り入れる、もしくは個人ワークの時間をオフラインにすることでうまくいくかもしれないですね」
    (2020.04.01  FNN PRIME「初めての子どものオンライン授業 保護者と教育者に求められるものは何か」

 こちらも手探りの最中で、決して好ましい状況とは言えない。

 

シンガポールはどうか】

 シンガポールのオンライン授業に関する最新の記事は今日(4月10日)のNews weekだから記事の筆者には気の毒だが、それでも取材は落ち着いてしなさいという警告の意味で引用しておく。

 シンガポール教育省は10日、教員にビデオ会議サービスの米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズが提供するアプリ「ズーム」の使用を停止するよう指示した。新型コロナウイルス感染拡大を受けてオンライン授業を実施するなかで「極めて重大な事案」が発生したという。

 現地の報道によると、10代の女子学生に対し地理の授業をオンライン配信していた際に、わいせつな画像やコメントが表示されたケースなどがあった。

 教育省幹部は「教育省はいずれの件についても調査を進めており、必要があれば警察にも協力を求める」と述べ、安全性の問題が解決されるまでは、教員による「ズーム」の使用は停止するとした。

(2020.04.10  News week Japan「シンガポール、教員に「ズーム使用停止」命じる オンライン授業中に重大事案が発生」 )

 すべて準備不足がなせる業だ。
 わいせつ画像や卑猥なコメントならまだしも、死体だの内臓だの写真がバンバン出てくるようなら、私も我慢できない。

 

【日本はどうするのか】

 ほんとうは新型コロナの感染拡大など起こらなければよかったのだが、それでも日本では最初の感染者が発見されてから2カ月以上も平穏だった。それが大きな利益だ。

 遅くなったおかげで「感染者の8割は軽症で済む」とか「無症状の感染者がかなりいる」とかいった知見が手に入り、「ドライブスルー方式のPCR検査」「軽症者の待機場所の確保」「アビガン等の試験的使用」といった優れた試みを真似することができた。

 オンライン授業も同じだ。「遅れている、遅れている」と急かすのではなく、遅れているからこそ得られる利益に注目すればいい。失敗や苦労は他人に負ってもらい、成果だけをいただく――。
 子どもを実験台に供するような先進的な取り組みは、公教育にはいらない。右顧左眄して半歩遅れて歩くくらいがちょうどいいのだ。

 え?
財力に余裕がある家庭は、家庭教師、個別指導塾、パソコンやタブレットでのオンライン学習、通信教材など、さまざまな選択肢が可能かもしれない。
って?

 大丈夫。金持ちの子でも塾やオンライン教育できちんと学習する子はわずかだ。むしろ中途半端な先行学習(一歩先の内容を学ぶ学習)で混乱してしまう子の方が多い。
 一方、塾にもいかず、しかし届いた新しい教科書がうれしくて、それだけで勝手に学習を進めてしまう子も少なくない。
 2~3か月まったく授業をしなくたって、みんな一緒に遅れるのだから問題はない。

 

*追補(2020.04.10夜)

懸念していたことが現実になった。オンライン授業初日の9日、全国各地でさまざまな混乱が起こり、質の低い授業に対する不満が出た。45分授業で5分の動画がすべてというクラスもあったし、ある授業では動画どころか教科書の資料とパワーポイントファイルだけ提供されたという。ビデオ会議のプログラムで出欠を確認するのに路上でスマートフォンのカメラで出席した学生もいた。

より大きな問題は、ほとんどの学校で学習管理サイトとして使用するEBS(韓国教育放送公社)のオンラインクラスに朝から繋がらなかったという事実だ。午前中、終始接続できない状況が繰り返され、授業に大きな支障が生じた。そんな中、パソコンからアクセスしなければならないとか、特定のブラウザを使わなければならないなどという未確認情報も溢れ、混乱を煽った。

(以下、略)

japanese.joins.com

 

卒業式の保護者謝辞をなくせというのは、子どもに「感謝の気持ちなど持たなくていい、自分はひとりで育ってきたのだと教えろ」と言うに等しい

 卒業式の次第に「保護者謝辞」があるのはおかしいという意見がある。
 学校が自ら、「自分たちに感謝しろ」というのはおこがましいというのだ。
 そうではない。
 学校を通して、子どもを支えてくれた社会に感謝の気持ちを伝える、
 親のその姿を見て、子どもも社会に対する感謝の気持ちを育む、
 それが「謝辞」だ。

という話。

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記事

 

 【卒業式】学校に「いらない」と言われても“謝辞”を続ける保護者の不思議
(2020.03.14 Yahooニュース)

news.yahoo.co.jp


 引き受け手がいないのならと、学校側が謝辞をなくす提案をしても…

 全国で一斉休校の措置がとられるなか、卒業式も縮小、短縮されています。
 「来賓を呼ばない」「在校生は参加しない」といった参加者絞り込みのほか、「祝電披露(読み上げ)をやめ、代わりにプリントを掲示する」「PTA会長の挨拶をやめ、文書で配布 or メールで配信する」「保護者代表の謝辞をやめる」など、ご挨拶系の省略をよく耳にします。

 がっかりする人もいるのかもしれませんが、多くの出席者、特に式の主役である子どもたちにとっては、ありがたいことかもしれません。卒業式は、証書の授与だけでそれなりに時間がかかりますし(児童生徒数が多い学校はかなり長くなります)、この時期の体育館はよく冷えます。「もう少し時間を短くできないものか」と感じてきた人は、大人でも少なくないでしょう。

 今年は新型コロナウイルスの影響で縮小されましたが、逆に考えると、なぜこれまで卒業式は短縮できなかったのでしょう。複数の原因があると思いますが、来賓や保護者への遠慮や気遣いもあったと考えられます。学校行事ですから、式が長くなるのは学校都合に見えますが、じつはそうではない面も一部にはあるのです。

 筆者も以前、PTAのクラス役員が決まらない最大原因だった「卒業式のときの、6年保護者代表の謝辞」という慣習をなくしたのですが、このとき驚いたのは「謝辞をなくすことに反対してきたのは、当の保護者だった」という事実です。

 その小学校では毎年、6年の学年長が卒業式の際に「お着物で謝辞を読み上げる」という風習があり(PTA会長の挨拶はまた別にある)、そのために毎年6年学年長が決まらず、揉めていました。母親たちは「前に出て挨拶する役」を嫌がることが、とても多いのです(しかもお着物)。

 この年は私が6年学年長になり、洋服で謝辞を読むつもりでした。ですが、あるとき数名の保護者から「毎年、あれ(謝辞)のせいで役員決めが揉めるんだから、なくしたほうがいいよ」と言われ、「なるほど、そうだな」と根回しを始めた矢先、意外な事実を知りました。

 学校は以前から保護者に対し、謝辞をなくすことを打診していたのに、保護者のほうが断っていたというのです。「謝辞を言いたい保護者」がいないのに、「誰かに謝辞を言わせたい保護者」の声が優先されていたわけです。

 しかし、そもそも謝辞は学校へのお礼の言葉です。学校側が「不要(なしでお願いね)」と言っているのに、それをつっぱねてまで謝辞を言うのは、本当に感謝の気持ちなのか? よくわからなくなります。この年、やはり謝辞はやめることにしました。

 こんなケースは珍しいかと思ったのですが、その後たまに似たような話を聞きます。先日も、ある学校で同様の話(引き受け手のない挨拶の省略を打診された保護者側が拒絶)があったと聞いたのですが、ついに今年は、新型コロナウイルスの影響から省略することになったそうです。

 学校には、保護者や来賓(地域住民)の反発を恐れて変えられないこと、やめられないことが、じつはいろいろあるのですが、「震災などを機にようやくやめることができた」という話は、先生たちから割合よく聞きます。

 この春は新型コロナウイルスの流行で各方面に大変深刻な影響が出ていますが、意外なところで合理化を進める効果も生じています。使えるところは使っていってはどうでしょうか。
( 大塚玲子  | ライター、編集者、ジャーナリスト)

 

 大塚玲子はPTA活動の過剰・強制性を批判し、規模縮小、脱会の自由化などを訴えてYahooニュースにしばしば登場してくる人物ある。これだけ頻繁に扱われるのは、やはり一定のニーズがあるからだろう。大塚はこれで糊口を凌いでいる。

 しかし卒業式の短縮を、
特に式の主役である子どもたちにとっては、ありがたいことかもしれません。
と書いた時点でこの人は終わりだ。何もわかっていない。
 卒業式で中心になるのは子どもではない。百歩譲って「子どもが主役」であるにしても、そのまま演劇になぞらえるなら、学校が監督で、市町村教委はプロデューサー、市民が観衆として存在することを理解していない。

【卒業式は「子どもの卒業を祝う会」ではない】

 きちんと説明するなら、卒業式は子どもに「6年間(3年間)よく頑張りました。よかったね。おめでとう」と言うためのものではない。
 正しくは「卒業証書授与式」と言い、設置者――公立小中学校なら市町村、私学の場合は学校法人――が校長を通じて、児童生徒に卒業証書を「授与する」日なのである。あくまでも上から目線の儀式なのだ。

 さらに何のための式かと言えば、税金あるいは学費を納めてくださった納税者及び保護者に対して「学校はここまで子どもを育てました。市町村教委、理事会はこの子たちを卒業させてもかまわないと認めます。どうぞご覧ください」とお披露目するための式なのだ。
 したがって入学式なら来賓の側にいる教育委員会代表や理事長は、証書授与式では学校側の、しかも校長より上席に座って主催者であることを示している。

【子どもは、自分を育ててくれた社会に感謝すべきだ】

 そう考えると、保護者が納税者・教育員会・理事会・教員に謝辞を述べるのは当然だという考え方が出てくる。少なくともこの機会に学校に感謝の気持ちを伝えたい、お礼を言いたいという保護者が存在することは理解できなくてはいけない。
 学校側が「不要(なしでお願いね)」と言っているのに、それをつっぱねてまで謝辞を言うのは、本当に感謝の気持ちなのか? よくわからなくなります。
というのは、やはりこの仕組みが分かっていないからであり、学校教育は政府の義務なのだから(金銭ばかりでなく、精神的に肉体的エネルギーについても)無償であるのは当然だと考える消費者根性しかない人間の言いぐさである。謝辞をなくそうという学校側も、社会におもねる間違った態度と言える。

 子どもは、自分一人で、あるいは親と自分だけで育ってくるものではないーーそのことを、卒業式の日くらいは意識しなくてはならないと思う。

 社会に対する意識の薄い子どもの前で、親が社会や学校に対して感謝の言葉を述べる姿を見せるのは重要なことだ。その姿を見て、子どもたちは社会や教育委員会・理事会、学校の先生方、そして保護者――、そうした人々のおかげで自分はここまでくることができたと意識できるのだ。

【一部、妥協しよう】

 ちなみに卒業式の長いことに毎年うんざりしている人間というのは案外少ない。
 保護者は毎年来るわけではないし、教員はそれぞれ仕事があるからうんざりしている暇はない。来賓の中には退屈な人もいるかもしれないが、いやなら来なければいい。
 卒業生がうんざりとしているとしたら、それは指導不足だ。

 かわいそうなのは“在校生”たちで、呼びかけの時間以外はほとんど添え物状態である。その状況が許せないというなら、まあ、今後も在校生抜きでやるというのも一案かもしれない。
 その程度なら、私も譲歩していい。

粉飾された「釜石の奇跡」を、丁寧に洗い落として正す若者がいるという奇跡

 悪意ある粉飾「釜石の奇跡」を丁寧に解きほぐし、
 粉飾を削ぎ落そうとする若者がいる。
 偽物の美談のために将来の子どもたちが道を誤らないように。
 美談より事実の方が美しい場合がある。
という話。

f:id:kite-cafe:20200311172037j:plain(「東日本大震災 岩手県 釜石市」 フォトACより)

 

記事


本当は違う「釜石の奇跡」 24歳語り部が伝えたい真実

(2020.03.11 朝日新聞デジタル)

www.asahi.com
 小中学生3千人のほとんどが助かり、「釜石の奇跡」と呼ばれた。鵜住居地区では中学生が小学生の手を取って避難したと称賛された。でも「全てが本当のことだったわけではない」。あの時の中学生の一人、菊池のどかさん(24)は振り返る。この地区にできた津波伝承館で働き始めて1年。語り部として真実を伝えることの難しさを日々感じている。

《誤解があればできるだけその場で正すようにしていますが、十分わかってもらえたかどうか自信はありません。でも、震災直後に報じられたことと、私たちが体験した事実と違うことはたくさんあります。》

 県立大を卒業と同時に、「いのちをつなぐ未来館」に就職した。今度は助ける人になりたいと消防士や教師をめざしていたが、地元に防災教育の場ができると聞き、ぴったりだと思った。

 《避難のお手本のように伝えられてきたので、来館者の中には「釜石の子どもは全員助かった」と思って来る人もいます。》
 しかし、鵜住居地区の鵜住居小…

 (以下、朝日新聞デジタル有料会員限定記事)

 

【こんな大切ことを有料記事にするとは・・・】

 有料会員限定記事なので全体の3割程度しか読めないが、この記事一本のために980円を払う気になれないので、諦める。

 もっとも検索でこの記事に関するコメントを探すと、
“私たちが助かったのは消防団員の的確な指示や近所の人の助言のおかげ。運や偶然も重なって生かされたんです。一般的な防災教育だけではだめだと思う。地形を知ること、ふだんから近所の人たちと交流しておくこと……。やるべきことは多いと思います”

“実は私たちも最初から小学生の手を引いて逃げたのではなかった。いったんは自分たちだけ逃げたんです。これからはそういう真実も語っていかないと本当の教訓にならないと思う”
といった抜粋も拾えるので、内容の一部は分かる。

 また、釜石東中学校の生徒は震災直後から報告会や語り部活動で「釜石の奇跡」の真実を語っているので、丁寧に調べていくとネット上でもさまざまな記事を拾うことができる。そのため朝日新聞の記事の残りの部分もおおよそ推察できる。それで980円は払わずに済む。

 

【「釜石の奇跡」と「釜石の真実」】

 私たちの知る「釜石の奇跡」は実は、片田敏孝・東京大学情報学環特任教授による粉飾報告である。創作と言ってもいい。
 片田は2004年から釜石市の防災・危機管理アドバイザーをやっており、2011年の東日本大震災は彼にとってまさに奇貨だった。自らの手柄を誇張することによって片田は防災教育の専門家としてマスコミの寵児となり、当時は連日連夜テレビに引っ張りだこだった。

 しかし片田が大仰な自慢話をしているその間も、釜石東中学校の生徒・卒業生が地道な活動をしていたことを私は知っている。
 その一例が、早くも震災の年の8月に行われた報告会である。

www.nhk.or.jp 片田の創作では、
 中学生たちは教師の指示を待たず自主的に高台に向かい、小学校の屋上に避難している子どもたちに気づくと声をかけて一緒に行動することを促し、手を引いて坂道を駆け上った。そして生徒自ら、予定された避難場所が危ないと判断すると二度にわたって場所を変え、さらに高い場所を目指して移動して、全員、津波に飲まれることなく助かった。

――ということになっている。

 その様子は片田自身のレポート

wedge.ismedia.jpにも詳しい。しかし事実は違う。

 釜石東中学校の生徒は教師の指示によって屋外に出て、点呼もしないまま避難場所に向かうというのも教師の判断だった。
 最初の避難場所で点呼をとるとそこに小学生がやってきて合流する。その間も余震が繰り返され、裏山のがけが崩れる。
 副校長(*)は地元住民の助言でさらに高い場所を目指して移動を指示する。中学生が小学生の手を引いて避難する有名な写真は、このとき撮られた。

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*校長はこの日、校長会のために不在だった。

 第二の避難場所に着くか着かないかのタイミングで津波が押し寄せる。

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「逃げろ!」という大人の声で子どもたちは再び走り、これ以上は山しかないという地点まで行ってようやく止まる。

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 振り返って見ると、最初の避難場所は津波にのまれていた。間一髪のだったと言っていい。

 そうした様子は先に上げた「報告」に詳しいので是非とも読んでもらいたいところだが、片田の報告とはずいぶん違う。

 

【教師の言うことに従うと殺されてしまうのか】

 釜石では小中学生の全員が助かったわけではない。当日、病気などで欠席していた5名が津波被害に遭っている。片田の「小中学生の生存率99.8%は奇跡じゃない」はそこから来ているのだが、それを言うなら隣町の気仙沼市だって99.8%なのだ(11人/ 5688人)。
 さらに言えば、大川小学校で74人もの児童を死なせてしまった石巻市でさえ、全体でみると98.6%の子どもが助かっている。片田の指導のいかんに関わらず、学校は子どもを助けることができたのだ。

 私がこの件に激しくこだわるのは、「釜石の奇跡」が大川小学校の悲劇と対比され、
「釜石では先生の指示を待たずに動いたために全員が助かり、大川小学校では先生の言う通りにしたために殺されてしまった」
という形で報道、流布されたからである。
 マスメディアは学校を権力と考えており、教師を貶めることに余念がない。片田はそうしたメディアの性向をよく知って利用したのだ。

 津波であろうと火災であろうと学校が被災したとき、子どもたちが「てんでんこ」とばかりに勝手に逃げ出したら私たちは困る。子どもたちが全員、常に正しい判断をするとは限らないからだ。
 むろん大人も常に正しいとは限らない。しかし全員がバラバラに動くよりは、より正しい道が示せるはずだ。私たちは大人だから。

 片田は罪深いことをした。
 けれど2011年3月11日を釜石に生きた子どもたちは、それよりずっと誠実な生き方をしていると知って、私自身はほっとしている。

 (参考)

kite-cafe.hatenablog.com

ひっそりと、神戸・教員いじめ事件の処分が下りた。

 新型コロナウイルス騒動の陰で、
 ひっそりと、神戸・教員いじめ事件の加害教員の処分が下った。
 
懲戒免職2名、他に3カ月の停職、減給。
 教員としては決して軽い罰ではない。
 しかし私にはひとつの心残りがある。
という話。

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(「神戸市役所からの風景」フォトACより)
 

記事

激辛カレーなど教員間暴行の加害教員4人処分 神戸市教委
2020.02.28 神戸新聞

 神戸市立東須磨小学校(同市須磨区)の教員間暴行・暴言問題で、市教育委員会は28日、加害教員4人のうち、外部の調査委員会から悪質なハラスメント行為を多数認定された30代男性2人を懲戒免職とし、40代女性を停職3カ月、別の30代男性を減給10分の1(3カ月)の処分にした。

 管理職では、パワハラが認定された前校長を停職3カ月、一連の問題に適切に対応できなかった現校長を減給10分の1(3カ月)、前々校長を戒告とした。

 また、調査委の報告書で「ハラスメントと評価しうる」行為が分かった別の40代女性は文書訓戒とした。

 

 北海道で新型コロナウイルスに関する緊急会議が始まった直後の17時45分、ネットの片隅にひっそりと載った記事で危うく見過ごすところだった。

 意外に思ったのは30代の男性教諭2人が懲戒免職になったのに対し、週刊誌等で“女帝”と揶揄された女性教諭が停職三か月で済んだことだ。もっとも処分は具体的事実に基づいて行われるものであって、実際の暴力案件はこの女性の場合、他の二人との間に大きな差があったのだろう。
 いずれにしろこれで幕引きは終わったと言える。

 刑事事件にはおそらくならない。
 あの程度の暴行をいちいち裁判にかけていたら、裁判所はたちまちパンクしてしまうからだ。
 また、教員の懲戒免職は軽い罰ではない。教員免許が取り消されてしまう。
 セールスマンは懲戒解雇になっても他の場所でセールスを続けることができるし、エンジニアも職場を変えて同じ仕事をすることができる。しかし教員は免許をはく奪されればもう二度と教壇に立てないのだ。
 したがって仮に裁判になったとしても、社会的制裁は十分に下されたものとみなされるに違いない。重い罪に問われることはないはずだ。

 

 別記事(「停職の教諭らに指導させず」と神戸市教委)には、
 神戸市教育委員会は28日、教諭いじめで停職や減給処分を受けた市立小の加害教諭2人を学校現場以外へ異動させ、当面は子どもの指導をさせない方針を明らかにした。(2020.02.28 KYOUDO)
とあった。

 普通、教員が学校以外で働くといったら、出世コースに乗って都道府県教委や市町村教委に入ることを言う。しかし免職にならなかった二人がその流れに乗るはずもなく、どこかに無理やり閑職を用意し、自主退職してもらうよう仕向けているのだろう。
 4人とも優秀な教員だっただけに、返す返すも、残念なことである。

 もちろん一義的にはこの4人の罪が一番重い。
 しかし雰囲気に流されていく学校全体を指導しきれなかった三人の校長の罪も重く、心情的には、私の気持ちは元校長・現校長の罪を問う立場に傾いていく。

 さらにもうひとつ。
 私には世間に受け入れてもらえそうにない、ひとつのこだわりがある。

 それは被害教員が、元校長に訴える以外に自分の人権を守るための戦いをしたのだろうかということである。
 もちろん報道の偏りのために、その部分が十分に掘り起こされなかったという面もあるのかもしれない。しかし子どものいじめではないのだ。

 私は大人の社会に“いじめ”という言葉が入るのを好まない。なぜなら基本的人権というものは天から与えられ、誰かによって守られるものではないからだ。

 それは先人が血と汗と涙で獲得したものであり、私たちが命に替えても守らなければならないものだ。その力の十分に育っていない子どもは、もちろん大人や周囲の子どもたちが守ってやるにしても、大人はまず、自分で自分を守る努力をしなくてはならない。

 被害教員はそうした努力をしたのだろうか?
 加害教員をつけ上がらせたり、罪の意識を鈍麻させたりするような、対応の甘さはなかったか?

 そのことがいつまでも疑問なのだ。

 彼は精一杯抵抗し加害教員の非を打ち鳴らしたが、しかしどうしてもかなわなかった――そういう記事があって私が見落としていただけなら、むしろ幸いである。

 

全国の公立小中学校・高校が休校になり、しかし、もしかしたらそれでも子どもを預かってもらえるのかもしれない。

  北海道で道内の小中学校が休校になるというので大騒ぎをしていたら、
 政府が全国の公立小中学校・高校を春休みまで休校にすることに決めてしまった。
 大阪市はそれでも休みの取れない家庭のために、子どもを預かってくれるという。
 授業も特別活動もないのに子どもが集まってくる学校!
 カオスだ!
という話。

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記事

一斉休校 拡大防ぐ妙薬 「でも…子の面倒誰が」
 新型肺炎
2020.02.27北海道新聞

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、道内の小中学校に休校が呼び掛けられ、全市町村教委が感染症対策のために前例のない一斉の臨時休校を決めた。各教委は感染拡大を断ち切るために必要として多くの学校が27日からの休校に踏み切るが、仕事を休めない保護者からは「子どもを自宅に残せない」といった不安の声も聞かれた。

 「1週間が保護者の方々に協力いただける一つの単位と考えた」。鈴木直道知事は26日の記者会見で、休校期間について国立感染症研究所の専門家らの助言を踏まえ、自身が判断したと説明。ウイルス感染から発症までの潜伏期間は最大12・5日間とされるが、それより短縮することで保護者に配慮した点を強調した。

 ただ、保護者が仕事を休むための具体的な支援策は示されず、ひとり親や共働きの家庭には不安が広がる。ひとり親世帯で、小学4年の長男(10)と暮らす介護福祉士多田めぐみさん(47)=札幌市豊平区=は「休校の間は、長男には一人で留守番してもらうしかない」と漏らす。職場は年度末を控え、退職予定者が有休を取得するため人手が足りず、簡単には休めない。多田さんは「子どもが心配でも神経をすり減らしながら働くしかない」と話す。

 共働きで3人の子どもを育てる釧路市音別町の団体職員加藤亮さん(39)も「妻に休んでもらう以外方法はなく、家計への影響は大きい」と話す。2人の子どもを共働きで育てる札幌市西区の会社員松山晴崇さん(40)は「今のところプールや塾などの中止の連絡は来ていない。接触感染を防ぐにはそうしたところも休まないと意味がないのでは」と指摘する。

 鈴木知事は1週間の休校を要請したが、新たな感染者の確認など「状況の変化」によって、長引く可能性もあるとした。小学1年の長女がいる旭川市行政書士山本千慧さん(37)は「家で仕事をしながら面倒を見るしかないが、できる業務が限られるので長引くと困る」。4人の子どもがいる函館市の自営業高橋麻実さん(36)は「1週間も家の中で過ごすと子どもに相当なストレスがたまる」とした。

  道内で前例のない一斉休校。道外では2009年に新型インフルエンザが流行した際、大阪府兵庫県の全域で小中高校などの一斉休校を1週間実施。文部科学省によると、これ以降に都道府県単位で一斉休校した事例はない。

 当時の対応を検証した大阪府の報告書によると、学識者らから、一斉休校後に日別の患者数が大幅に減ったことを評価する声が目立った一方、就学時間の減少や保護者が欠勤を余儀なくされるなど「負の側面」を懸念する意見もあった。

 今回の北海道の休校措置について、帯広市PTA連合会会長の金尾泰明さん(48)は「知事や市教委の判断は迅速だった」と評価した上で「共働きが増えるなか、仕事中の一時帰宅を認めるなど、企業や経済界の柔軟な対応が必要」と要望する。

 一方、各地の自治体や学校関係者からは休校明けの対応を心配する声も。胆振管内自治体職員は「休校を決めてからの通知は今日の午後3時。保護者への説明をするのに時間がなさ過ぎる。本来であれば明日の午後から休校といった対応が妥当だった」とする。

 空知管内の中学校の50代女性教諭は「休校は仕方ないが、授業時間が確保できるか心配」と話す。卒業式の練習時間などを授業に充てるなど予定を組み直す必要があり、「7時間授業を行う可能性もある。卒業シーズンに余裕がなくなり、子どもがかわいそうだ」と複雑な思いを明かした。
(以下、略)

 若いころの私だったら、
「学校は託児所じゃねえ! 自分の子どもの世話くらい自分でしろ!」
くらいは思ったが、今はそうではない。

 仕事を休めないのは教師も他の公務員も民間企業も皆同じだ。自営業やパートだと、休んだ分だけ収入が減ってしまう。
 さりとて子ども一人、いや二人三人でも、大人のいないところで丸一日過ごさせるのも不安だ。

 低学年の子どもは時間の使い方もわからないから可愛そうだ。火遊びをされても困る。

 高学年の子どもだと何をするのかわからない。ウチの子は信じられても、他人様の子どもまで信じる筋合いはない。“友だち”と称する連中が大挙して押し寄せ、家じゅうをめちゃくちゃにしているのではないか、ウチの子がいじめられているのではないか・・・。

 元気のいい子は元気のいいなりにさらに心配だ。
 何のための休校か分かっていても繁華街へ出かけ、大人と濃厚接触して戻って来かねない。
 そんなことを考え始めたら、気の狂いそうになる親も少なくないだろう。

「今のところプールや塾などの中止の連絡は来ていない。接触感染を防ぐにはそうしたところも休まないと意味がないのでは」

 もちろんその通りだが、おっつけスイミングスクールも学習塾も休みになるだろう。PerfumeEXILEは億単位の損失を出しても危険を回避した。集団感染の責任を取りたくないのはどこも同じだ。
 こんな状況で、学校より狭い学童保育が子どもを預かるとも思えない。

「1週間が保護者の方々に協力いただける一つの単位と考えた」
という知事の発言は、まことに正鵠を得たものと言えるだろう。

「1週間も家の中で過ごすと子どもに相当なストレスがたまる」
 お母さん、頑張ってくれ。

「休校は仕方ないが、授業時間が確保できるか心配」
 先生! 確かにそうだが、この際、未履修のまま進級させることも考えよう。

 

 ところで、
ただ、保護者が仕事を休むための具体的な支援策は示されず、ひとり親や共働きの家庭には不安が広がる。
と書いた北海道新聞よ。どんな支援策を思い浮かべているのだ?

・・・と一緒になって考えていたところに、東京と大阪からとんでもない速報が入ってきた。

 

記事

全国すべての公立小中高休校へ
安倍首相が表明、新型肺炎で3月2日から
2020.02.27 産経新聞

 安倍晋三首相は27日、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、全国すべての公立小中高校を週明けの3月2日から休校とすることを発表した。当面、春休みまでとする。
(以下、略)

記事

【速報】大阪市が『幼・小・中学校を臨時休校』決定
…卒業式は最少人数で時短で実施
 (2020.02.27  MBSニュース

  速報です。2月27日午後4時半から、大阪市役所で新型コロナウイルスの対策会議が行われていて、この会議で、大阪市立の幼稚園や小・中学校合わせて471校について、2月29日から3月13日の約2週間、臨時休校にすることが決まりました。

 臨時休校中に予定されている卒業式については、必要な感染予防対策を行った上で、参加人数を最小限にするなどして、時間を短縮して実施されます。

 保育施設などは通常通りだということです。

 急な休校で対応できない家庭については、授業は行われないものの、学校は開けて濃厚接触にならない形で預かるとしています。

 学校側は休校中、保護者と健康観察をとりまとめ、発熱などの症状が出た場合は、感染者情報システムに登録することで、教育委員会に報告されるということです。

 ※2月27日午後6時半追記…大阪府堺市の幼稚園・小学校・中学校も同じ期間休校にするということです。

 

 全国の公立小中高校が休みになるとして、北海道が心配する支援策を、大阪市のように、
 急な休校で対応できない家庭については、授業は行われないものの、学校は開けて濃厚接触にならない形で預かるとしています。
という形で行うとしたら、

 共働きの家の子どもの大半が登校してくるぞ!
 授業も特別活動もしないとなると、学校はカオスだ!

それとも、
濃厚接触にならない形で預かる
って、みんなをバラバラにして8時間も遊ばせる特別なカリキュラムを、教師が毎日考えるってことか?

 

 

子どもが持ち込んだスマホで盗撮したら、学校が謝れ!

スマホを容認すればさまざまに大変なこともあるが、
なんとか頑張ってくれ。
ただし教員の働き方改革。勤務時間は増やしちゃだめだよ。
文科省は言った――のかもしれない。

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記事

複数の男子生徒 中学校内で盗撮 生徒間で画像売買も 奈良 生駒
(2020.02.11 NHK)

2020年2月11日 2時15分 奈良県生駒市の中学校で複数の男子生徒が女子生徒のスカートの中などを盗撮し、一部の動画や画像を生徒間で売買していたことが学校などの調査でわかりました。

生駒市教育委員会によりますと、生駒市立の中学校で5人から6人ほどの2年生の男子生徒が、去年11月以降、ペン型の小型カメラやスマホを使って、校内で女子生徒少なくとも十数人のスカートの中や着替えの様子を繰り返し盗撮していたということです。

男子生徒たちは無料通信アプリのLINEを使って盗撮した動画や画像をやり取りし、一部は数百円から1000円で売買されていました。

「同級生が盗撮しているようだ」という情報が今月7日に生徒から学校に寄せられ、学校の聞き取り調査に対し、男子生徒らは「興味本位でやった」などと話したということです。

教育委員会と学校は警察に相談するとともに、スクールカウンセラーが女子生徒のケアにあたっているということです。

教育委員会と学校は10日夜、記者会見し「被害にあった生徒や保護者に深くおわびします。道徳教育の充実など再発防止に向けた取り組みを進めます」と謝罪しました。

 

 こうした事件に対する一番確実で簡単な方法は、学校へのスマホの持ち込み禁止である。「いくらスマホを規制しても、ペン型カメラなどを持ち込まれたら対応しようがない」とみる見方もあるだろうが、アメリカで「いくら銃規制をしたところでナイフや包丁が自由に売られているようでは殺人は防げない」というのと同じである。規模が違う。

 しかし大阪府を筆頭に政府までもが、子どもの学校へのスマホ持ち込みを許可しようとしている。
「いざというときの安否確認のため」だということだが、だったらスマホを持たせない親は子どもが心配じゃないネグレ親だということになる。
 可愛そうに子どもが3人もいたら通信費だけでも大変だ、という発想は政治家にも役人にも金持ちの保護者にもない。

 ましてやそのスマホを使ってウチの子が盗撮するかもしれない、いじめの加害者になるかもしれない、という発想もない。
 教育委員会と学校は10日夜、記者会見し「被害にあった生徒や保護者に深くおわびします。道徳教育の充実など再発防止に向けた取り組みを進めます」と謝罪しました。

とのことだが、文科省都道府県がスマホを許可しておいて学校が謝らなくてはならないのは気の毒だという考えもない。

 ただスマホの持ち込みは許可したうえで「悪用しないよう丁寧に指導しなさい」と指示して「教員の働き方改革に逆行しないよう、くれぐれも仕事を増やさないよう注意してください」と付け加えることも忘れない。
 そんなことはできないだろう! どうすればいいんだ!
と叫ぶと、
「そういう具体的なことは、すべて学校にお任せしています。自由にやってくださって結構です」
と言う。

ああ!

 

京都市もまた、教員の働き方改革に真剣に取り組み始めた。ただし仕事を増やすことも忘れていないらしい。

 教員の働き方改革京都市もまた真剣に取り組み、
 夜は7時に電話を切り、教師の意識改革も強く訴えている。
 ただし同時に、京都市は授業日数を増やし、
 小学1年からの英語活動や小学4年からの長期宿泊学習など、
 独自のカリキュラムにも熱心に取り組ませている。
 アクセルをガンガン踏みながら、ブレーキを強く踏む矛盾。
 しかしそこはとにかく、教師の“自覚”で乗り越えてもらうしかない。
という話。

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記事

教員「ブラック職場」改革進まず 保護者対応や授業準備…新たな負担も
(2020.01.27 京都新聞)

 

 午後7時、教員が職員室の電話のボタンを押すと、自動音声の対応に切り替わった。「本日の対応は終了しました」。京都市右京区の西院小。職員室にはまだ約20人の教職員が残り、翌日の授業の準備などにあたっていた。

 先進国でも突出する日本の教員の長時間労働が問題となっている。京都市もここ数年で学校現場の働き方改革を進めてきたが、文部科学省が目標に掲げる「残業は月45時間以内」の達成はまだ遠い。市教育委員会は出勤・退勤時間を記録するシステムを2019年度から導入。昨年1月からは、市内の小学校で夜間の電話応対が長時間勤務の一因として原則午後7時で終えることを決めた。

 さらに西院小では独自に時間割や行事、部活の見直しを進めているが、國重初美校長は「午後9時ごろまで多く残っていた数年前に比べると早く帰るようになったが、残業を月45時間以内にするのはまだ厳しい。もっと教員の意識改革を進めたい」としつつ、「専科教員の配置などがもっとあれば…」とも話す。

 教職員が多忙な理由はさまざまだ。授業の準備、児童への指導、保護者への対応…。さらに4月からは新学習指導要領の導入で外国語が小学校高学年で教科化されるなどし、3年生以上で授業時数が年35こま増加する。プログラミング教育実施の準備にも追われる。

 そこに市教委独自の施策も多忙化に拍車をかける。市教委は年間授業日数を06年度から従来より7日増やして「205日以上」にしており、全国平均よりも2日ほど多い。
 市教委は「行事や学級閉鎖などを見込んで余裕を持たせている」とするが、教員からは「行事の精選をもっと進めるべき」との声が漏れる。小学1年からの英語活動や小学4年からの長期宿泊学習など、市教委が力を注ぐ取り組みも一方では教員に重くのし掛かる。

 負担を軽減するために市教委は、教員の業務を支える「校務支援員」や「スクールサポーター」「総合育成支援員」などを増員してきたが、支援が必要な子どもの増加などに追い付いていないのが現状だ。
 19年度の市一般会計予算に占める教委所管分は、13・7%にあたる約1093億円。近年は観光振興予算が増える中、教育費は伸びていない。市教委の幹部からは「観光PRにお金を使うなら教育に回してほしい」とのぼやきも聞かれる。

 20年度の教職員採用では、志願者数が10年度採用と比べ約15%減の1798人だった。「ブラック職場」との批判が高まる学校現場へ、就職をためらう学生も増えつつある。教員の負担軽減と教育の質の保障をどう両立するか。ある現職の市立学校教員は「教育費は未来への投資。手厚くすべきだ」と指摘し、市長選の各候補者の主張を注視している。

 

 人は立場で話さなければならないこともあるので、必ずしも本音ではないと思うが、

 もっと教員の意識改革を進めたい

――本校の教員に自覚がないばかりに勤務時間を減らせないと言わんばかりの校長のセリフ。部下に私のようなひねくれ者がいないよう、心から願う。

 もっとも意識改革以外に何の打つ手もない校長の立場も、今の私ならまったく理解できないわけでもない。

  • 3年生以上で授業時数が年35こま増加する。
  • プログラミング教育実施の準備にも追われる。
  • そこに市教委独自の施策も多忙化に拍車をかける。
  • 市教委は年間授業日数を06年度から従来より7日増やして「205日以上」に
  • 小学1年からの英語活動や小学4年からの長期宿泊学習など、市教委が力を注ぐ取り組みも一方では教員に重くのし掛かる。

  これだけグイグイとアクセルを踏み込んでおきながら、他方で「残業は月45時間以内」と強力なブレーキをかける――これでクルマ(学校や教員)が傷まないわけがない。

  もちろん市も、
教員の業務を支える「校務支援員」や「スクールサポーター」「総合育成支援員」などを増員してきた
と言い訳するが、
近年は観光振興予算が増える中、教育費は伸びていない。
という状況では結局、学校の消耗費や備品・修繕費を減らしてそちらに回しているだけのことなのだろう。調べてはいないが「支援員」も「サポーター」も「焼け石にスズメの涙」程度のもののはずだ。

 教員の働き方改革によってさらに教師たちは擦り減っていく。
 しかもどうやら責任は「意識改革の進まない教員自身」にあるらしいのだ。