キース・アウト

マスメディアはこう語った

悪いのは禁止した学校ではなく 勝手にツーブロにした美容師の方だろう

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 マスメディアの校則批判には 一定のお約束がある

 批判が前提なので本質を見誤る
 事実に関する取材が甘いので
 結論がお門違いになる

 校則批判は定期的な行事なのだから
 もっと丁寧に調べてほしい
 

というお話。
 
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2019.04.16

 ツーブロックはダメ?校則に疑問の声
学校「高校生らしくない」


西日本新聞 4月13日]

 
 春4月。多くの子どもたちが新たな学校生活をスタートさせる中、福岡市の高校2年の男子生徒(16)から気になる声が特命取材班に届いた。「なぜ、ツーブロックの髪形がだめなのでしょうか」。ツーブロックは頭頂部を長く残し、サイドや後頭部を短く刈り上げた若者に人気の髪形だ。取材班が福岡県立の高校・中等教育学校全95校の校則を調べたところ、少なくとも約3割の27校が禁止項目に明記していた。

 男子生徒は中学1年だった2015年4月、服装検査で教員の指導を受けた。「君の髪はツーブロック。校則違反だからすぐに直してくるように」。中高生の散髪も手掛ける美容師には、ツーブロックが校則違反と伝えてカットしてもらっていた。それでも教員に指摘されて素直に従い登校するも「まだだめだ」。

 もう一度、美容室で髪を切り、ほぼ丸刈りにしたがなおも認めてもらえず、
憤った保護者が学校に抗議。違反の基準や根拠を示すよう求めた。しかし学校側は「見た目で判断しており、明確な基準はない」と回答しただけだったという。

 ツーブロックはスポーツ選手や高級ホテルの従業員にもよく見かけ、清潔感が漂う。ただ、男子生徒は流行を追ったわけではなく、あくまで「さっぱりしたかっただけ」。その後も説明がないまま卒業し「なぜ違反なのか、いまだに分からない」と、もやもやした思いを抱き続ける。

      ■

 取材班は今年2月、福岡県教育委員会に県立高校の校則に関する資料を請求。入学前に配布される「新入生のしおり」などの資料約550枚が提供された。併せて全校へのアンケートも実施。生徒指導担当教諭らに頭髪などの規定を設ける意図などを尋ね、25校から回答を得た。

 頭髪については、95校のうち全日制の全93校が規定。染髪や付け毛などを禁じ、禁止する髪形として27校はパーマやそり込み、リーゼントなどと同列の扱いでツーブロックと明記していた。「技巧的」「不自然」「特異」などと表現する高校もあった。禁止する理由として、多くは「高校生としてふさわしくない」ことを挙げる。

 校則の頭髪を巡っては、熊本県の中学校で丸刈りの強制は憲法違反として生徒が学校などを訴えたケースがある。17年には大阪府立高校の女子生徒が生まれつき茶色っぽい髪を黒く染めるよう強要されたとして提訴し議論になった。

 丸刈り校則はほとんどみられなくなったが福岡県内の複数の高校は、天然パーマや生まれつき黒髪ではない生徒に対して「地毛証明」の申告を求め、小さい頃の写真の提出を求めるケースもあった。

 関西学院大桜井智恵子教授(教育社会学)は「厳しい頭髪指導の背景には、教育現場が地域の目に気兼ねし生徒の規律を重視している現状があり、構造的な問題。生徒と向き合い、多様性を引き受ける姿勢とゆとりが学校側には求められる」と指摘した。

=2019/04/13付 西日本新聞朝刊=



 校則、特に頭髪規定に関する記事は一定の期間を置いて、どこかの新聞から必ず定期的に出てくる。それだけ根の深い問題とも言えるし、メディアが本気で追及して改善しようという気のない(だから何回でも使いまわせる)問題ともいえる。表現の自由と強要に関する重大な事件だと訴えた生徒・保護者も、大部分は卒業すると忘れてしまうらしくそれ以上継続的に追っていこうとはしない。

 だからこのまま放置しておいてもいいような話だが、それにしても今回の西日本新聞の記事は分かりにくい。

中高生の散髪も手掛ける美容師には、ツーブロックが校則違反と伝えてカットしてもらっていた。それでも教員に指摘されて
と言うが、校則違反にならないように依頼したのに校則違反――そもそも最初のヘアスタイルはどんなものだったのか見てみたいものである。

さらに、
素直に従い登校するも「まだだめだ」。
とここでもダメが出る以上、第二段階の状況も記録にとどめておきたいところである。

もう一度、美容室で髪を切り、ほぼ丸刈りにしたがなおも認めてもらえず、
と二度にわたって修正しても認められないとなれば、
憤った保護者が学校に抗議
というのも無理はない。都合3回も美容院に行けば軽く1万円は超えてしまっただろう。
 しかし学校に抗議することはない。
 
 2度も修正してなお痕跡が消せないとしたら、最初の段階でサイドが相当に刈り込まれていたはずだからである。おそらくはじめは誰が見たってツーブロック中のツーブロックだったはずだ。
 ツーブロックが校則違反と伝えてカットしてもらっていた。
 それも、中高生の散髪も手掛ける美容師にである。
 これはもう美容師に責任を取ってもらい、代金の返済どころではない、多額の慰謝料を請求すべき案件である。

 最近、中国人の投稿動画で、出来上がった自分のヘアスタイルが気に入らないといって担当の美容師の頭を刈ってしまった客の映像が評判になったが、ここまで気を遣っていった美容院でそんな頭にされて、なぜ生徒保護者は美容師を不問に付すのか。
 なぜ西日本新聞はお門違いの学校批判に与するのか、私には全く理解できない。


 さらに後半のまとめの段階になると一層わからない。

 熊本の丸刈り訴訟(1985)は原告敗訴だったし17年の大阪公立黒染め訴訟が議論になったのはその通りだが、元大阪府知事橋下徹をはじめ学校側に立って論陣を張った人も少なくなかった。
 裁判の結果は分からないが、かなり胡散臭い訴訟であったことは私も覚えている(*)。
『大阪「髪染め強要」訴訟 ほとんど報じられない学校側の主張を伝える【前編】』

 それに「地毛証明」は生まれつき髪の毛の赤い子や天然パーマの子を、誤った指導から守る方策なのだ。これさえあれば黒髪やストレートパーマを強制されずに済む。それを非難するということは差別されやすい子を放置しろということなのか?

 さらに最後に専門家の口を借りて、
生徒と向き合い、多様性を引き受ける姿勢とゆとりが学校側には求められる
を結論としているが、教員にゆとりがないのは周知のこと、教師の働き方改革の問題として今、もっとも熱い社会問題となっている話題を、西日本新聞記者は知らないのかもしれない。

 生徒と向き合い、多様性を引き受ける姿勢はまだしも、そんなゆとりを学校に求められても困る。仕事を減らすか人員を増やすかして「ゆとり」を生み出すのは政府の仕事だ。
 ゆとりがあってこその丁寧な行き届いた指導である。

 このことは是非、文科省と社会に要求してもらいたい。
 そして生徒・保護者にも、
 ツーブロック・ギリギリの頭髪なんか追究せず、教師を煩わせることもつつしめ
 流行を追ったわけではなく、あくまで「さっぱりしたかっただけ」なら丸坊主にしろ
と、メディアは強く訴えてほしい。
 特に西日本新聞