キース・アウト

マスメディアはこう語った

学校がはっきり言わない「箸の持ち方を直した方がいい」ほんとうの理由

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「お箸の持ち方がおかしい。お嫁にいけないよ」
などと簡単に言わず
親はきちんと説明しなくちゃいけないかもな
言わずもがなのことも言わないと 親は分かってくれない
何でもかんでも説明するのが これからの学校だかもしれない

というお話。

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2019.06.17

 「お箸の持ち方がおかしい。お嫁にいけないよ」
娘への言葉に母が反論


BuzzFeed Japan 6月17日]

 

「お箸の持ち方がおかしい。お嫁にいけんよ」
小学校1年生の女の子が、学校の先生に言われたという言葉が、Twitterで大きな注目を集めています。【BuzzFeed Japan / 伊吹早織】

「お箸の持ち方」を先生が指導
発端となったのは、二人のお子さんを育てるちゃちゃこさん(@shinkontosa)が投稿したツイートでした。

「娘が小学校の先生から『お箸の持ち方がおかしい。お嫁にいけんよ』と言われたというので、朝から母はヒートアップ。お箸の持ち方が変だから結婚したくないとかいう人とそもそも結婚せんでいいし、いや、結婚する相手を決めるのは娘やし、女が選ばれる時代なんてとっくに終わってる」

ちゃちゃこさんによると、朝、学校に行く前に「昨日先生と一緒に給食を食べたら、『お箸のもちかたがおかしい。お嫁にいけんよ』と言われたがよ」と打ち明けた娘さん。

「『お箸の持ち方がおかしいから、お嫁にいけない』という先生の発言は、時代錯誤だと感じました。『お箸の持ち方で人の優劣を決めること』を私はしたくありません」

「人を攻撃しない、迷惑をかけない、ということはちゃんと教えています。でも、しつけやマナーに関しては、我が家では『相手を不快にすること』以外は重要視していません」

そう語るちゃちゃこさんは、娘さんにも「お嫁にいけんとか先生が決めることじゃない。気にせんでいい」と伝えた、とBuzzFeed Newsの取材に話します。

このエピソードをTwitterに投稿すると、お箸の持ち方をめぐって「よほど変じゃ無い限り、他人の持ち方を気にしたことないなあ」「お箸の持ち方に口を出してくれる先生なんて貴重でありがたい」などと様々な意見が投稿されました。


「親御さんの前で恥かくぞ」
都内などで働く20代の男性も、中学生の頃、お箸の持ち方について「結婚するとき、相手の親御さんの前で恥をかくぞ」と先生に指導されたことがあるとBuzzFeed Newsの取材に話します。

「何度も言われましたが、僕はあんまり気にしていなかったので、『直します!』と返事だけして、その後も持ち方は変えていません」

「たまに会食などの場で『箸の持ち方のせいで、常識がないと思われたらどうしよう』などと考えることはあります。でも交際相手の両親と食事をした時に、何か言われた記憶はないですね」

その一方で、相手によっては「知らないうちに損をしている可能性はある」とも言い、「直したくない人が直す必要はないですが、直して損はないかなとも思います」と話しました。


自分で考えて行動すること
ちゃちゃこさんは今回のツイートに対して、「親が子どもに箸の持ち方を教えないのは虐待だ」とまで非難する人がいたことに、ショックを受けたと語ります。

「『恥をかくのは娘さんだから、親がしつけをしろ』という意見も多かったですが、娘が持ち方を直したい時はもちろん手伝いますし、直す必要がないと娘が思うなら、直さなくてもいいと思います」

「過剰な『しつけの文化』や、それを怠った時に親を責めるような風潮が、日本で子育てしにくい一つの大きな原因だと感じさせられました」

また、「子育てしてみたらわかると思うんですけど、子どもって全然思い通りにならないんです」と話すちゃちゃこさん。

「お箸をきれいに持てないことで、恥をかく可能性があったとしても、そうした失敗を親が最初から全て排除しなくていいと思います。失敗の経験を通して、子どもは成長すると思います」

「『自分で考えて、自分で行動すること』が、娘の将来のために一番大事だと思っています」



 先生の言い方自体は「食べてすぐに横になるとウシになるぞ」「いつまでも裸で歩いているとカミナリ様におへそを取られるぞ」と同程度の暗喩なので「時代錯誤だ」「非科学的だ」と非難するほどのこともないと思うが朝からヒートアップしてTwitterに投稿するまでしたところを見ると、躾ができていないと言われたことによほど傷ついたのか、そもそも学校や担任に対して根深い不信感を持っているかのどちらかだろう。

 不信感で満水になっているコップに一滴水を落としただけで、驚くほどの水が誘引されて零れ落ちる。
 つまらぬことで怒ったものだと馬鹿にしてはいけない理由がここにある。

 教師はそもそも指導をするのが仕事で、年中同じようなことをやっているのでついつい丁寧さを書いてしまうが、本当は「お嫁にいけない」などと言わず、こう言えばよかったのだ。


【箸の持ち方を直した方がいい理由】
 ねえ、あなた、
 あなた、お箸の持ち方、ちょっと変かもしれないね。

 お箸の持ち方というのは親が最初に直面する最も難しい躾で、放っておいても自然にできるということはない。手間もものすごくかかる。その点でトイレット・トレーニングと違うんだ。

  だって親からちゃんと躾けてもらわなかったから未だにオムツをしている大人って、会ったことないでしょ? でもお箸の持ち方の方は本人が意図して直さない限り、大人になってもずっとそのままだ。

 知ってるかい?
 お箸の持ち方の練習って、実は二段階からなってるんだ。

 ホラ、私が正しい持ち方をするから見てごらん。

 このときね、右手の薬指が下の箸を持ち上げるように支えなければならないんだけど、習い始めの子どもはそこがうまく行かないんだ。でも、子どもは薬指で支えなくてもうまく箸を動かせるんだよ。
 私は真似してもうまくできないんだけど、下の箸を小指で支えたり、そもそも支えないまま動かしたりして、親指と人差し指と中指の三本で箸が動かせるようになったら、 そこまでが第一段階。しばらくはそれで気持ちよく食べさせるようにすればいい。薬指のことは忘れてね。

 で、その食べ方に慣れたら、後で薬指を添える練習をする。
 それが第二段階で完成というわけさ。

 箸を使わせることに熱心な親御さんは自然にそういうことをやっている。いつまでもこだわって箸の持ち方を練習させていると、薬指の問題が最後になるのが自然だからね。

 さて、そうなると次に出てくるのは、
「箸をきちんと持てない子の親は、そうした丁寧で根気の必要な躾をきちんとしてこなかったのか」
という問題になるんだけど、それはおそらくその通りだろうと思う。

 私はよく知ってるのだけど、あなたのお父さんもお母さんも必死に働いてあなたのことを育ててきたよね。お父さんとは、朝も夜も一緒に食事をしたことなんてほとんどなかったんじゃない? お母さんだって、あなたが朝食を食べている時間はたいていランドセルの中身のチェックをしたり自分のお化粧をしたり、夜は夜で一刻も早く食事を終えて洗濯をしたりお風呂の用意をしたりと、あなたのお箸の持ち方を気にしている暇なんかなかった――だよね。
 わかるよ。ウチだって似たようなものだから。

 しかしね、私のようにあなたの家の事情を知っている人間ならともかく、そうでない人から見ると、お父さんやお母さんが頑張って生きてきたからお箸の指導ができなかったのか、ただの不熱心でだらしない親だったから教えなかったのか、分からないんだよ。

 だから、例えばあなたが大人になって、お嫁さんになろうとするときなんか、気をつけなくちゃいけない。相手の親御さんはついつい慎重になって、あなたの頭のてっぺんからつま先まで、言葉の使い方から箸の使い方まで、丁寧に見ているかもしれないんだ。あなたのお父さんやお母さんは、どんなふうにこの子を育てたのかってね。

 昔から「箸がきちんと使えないとお嫁にいけない」とか「親が恥をかく」と言われるのはそのためだ。もちろんよく調べもしないで疑う方が悪いと言えば悪いのだけど、第一印象って大事だよ。

「ああこの子、なんて美しい食べ方をするんでしょ。きっと丁寧できちんとした教育を受けてきたからね」
から始まる人間関係と、
「アラやだ。この子、なんて汚い食べ方しているの? 親の顔が見てみたいわ」
から始まる人間関係では、すくなくとも最初の段階ではずいぶんちがったものになるだろう。

 あなた自身の問題は修正の機会がいくらでもあるからいいけど、めったに会わない親の方はそうはいかない。ご両親がそんな誤解を受けたらいやでしょ? しかもこの手の問題は相手もめったに口にしないから、誤解されていること自体に気づかない。

 だからね、親御さんのためにも、あなた自身がその気になっていまから箸の持ち方を直しておくといいんだ。それにそもそも、「見た目だけでなく仕草も美しい」なんて言われたらあなた自身が幸せでしょ?
 だから、ね、頑張ってみようよ


 しかしこんなこと、小学生に話してもなかなか分かってもらえない。そこで簡単にしてこんなふうに言ってしまうのだ。
「お箸の持ち方がおかしい。お嫁にいけないよ」


【世間は案外常識的】
 問題を提起した方のツイッターに対して、
「親が子どもに箸の持ち方を教えないのは虐待だ」
は言い過ぎにしても、
「お箸の持ち方に口を出してくれる先生なんて貴重でありがたい」
「恥をかくのは娘さんだから、親がしつけをしろ」

といった意見が出てくるのは、ある意味で自然なことだ。

 また、取材を受けた人が、
「たまに会食などの場で『箸の持ち方のせいで、常識がないと思われたらどうしよう』などと考えることはあります」
とか、相手によっては
「知らないうちに損をしている可能性はある」
「直したくない人が直す必要はないですが、直して損はないかなとも思います」

と発言するのも理解できる。

 かしこまった席で会食することが絶対にないという人ならともかく、向かい合わせで食事をすれば視線は自然に手のあたりに向かうから、気にし始めるときりがない。
 他人の箸の持ち方が気になるというよりも、うまく使えない人は自分の持ち方が気になり続けるのだ。
 やはり直せるものなら直してやる方がいい。


【最後に一言】
 売り言葉に買い言葉でバンバン出てくる話なのでいちいち突っかかっても仕方がないがお母さん、
「娘が持ち方を直したい時はもちろん手伝いますし、直す必要がないと娘が思うなら、直さなくてもいいと思います」
「過剰な『しつけの文化』や、それを怠った時に親を責めるような風潮が、日本で子育てしにくい一つの大きな原因だと感じさせられました」
「お箸をきれいに持てないことで、恥をかく可能性があったとしても、そうした失敗を親が最初から全て排除しなくていいと思います。失敗の経験を通して、子どもは成長すると思います」

は全部違っていませんか?

「『自分で考えて、自分で行動すること』が、娘の将来のために一番大事だと思っています」
とおっしゃいますが、子どもが「自分で考えて、自分で行動する」とき、必ずしも正しい考えにそって正しく行動するわけではない。
 お嬢さんが「明日から一人で旅に出る」とか「もう学校に行かない」とか言い出しても、その決心を応援できますか?

 ただし、
「子育てしてみたらわかると思うんですけど、子どもって全然思い通りにならないんです」
 それは正しいと、私も思う。