不登校の原因は「いじめ」と「教師」でなくてはいけないという文科省の判断

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 学校から報告される不登校の原因が信じられないから
 直接 子どもに聞き取り調査をするという

 経験を積んだ教師の観察・判断より
 子どもの自己分析の方が信じられるようだ

 しかし子どもは、ボクの不登校は家庭のせいだと答えるだろうか?
 勉強が分からないから 部活が苦しいからと分析するだろうか

 かくして「いじめ」と「教師」が不登校の主因となり
 学校が叩かれ 研修が増える

 教職はブラックだという評判がさらに高まり
 教員志望がさらに減る

 それで幸せになるものはいない

 という話。

 




2019.08.20


不登校調査は学校介さず…来年度数百人聞き取り
 
[読売オンライン 8月20日

 
 不登校の原因や背景を詳細に把握するため、文部科学省は来年度、欠席が続く小中学生から学校などを介さずに、聞き取り調査を行う方針を固めた。不登校の児童生徒が5年連続で増加し、過去最多の14万人を超えている中、いじめや家庭状況などの背景を多面的に探ることで今後の対策につなげる。

 学校などを通さずに、文科省が児童生徒から実態を聞くのは初めて。民間の調査機関に委託して実施する。対象は数百人で、関連費用を概算要求に盛り込む。

 背景にあるのは、いじめの認知件数が過去最多となっているのに対し、学校側が挙げる不登校の理由では、「いじめ」の割合が極めて低い状況にあることだ。

 文科省では毎年、「問題行動・不登校調査」を行っており、不登校の要因は、「学業不振」「進路に係る不安」「いじめ」などの調査票に示された区分から、学校側が選択し、教育委員会経由で文科省に報告している。ただし、要因を児童生徒から聞き取っているケースは少ないという。

 2017年度の同調査(複数回答)では「家庭状況」が36・5%と最多で、「友人関係」(26・0%)、「学業不振」(19・9%)が続き、「いじめ」はわずか0・5%で、723人だった。

 これに対して、いじめの認知件数は同年度、小中学校で約39万8000件と過去最多を記録。「不登校の要因として挙げている数字と実態に大きな乖離がある可能性がある」(文科省幹部)として、学校や教委を介さずに、児童生徒から聞き取ることを決めた。具体的な質問方法や項目は今後詰めていくが、学校や部活動での状況、教員や親との関係などについて選択式で尋ねることを検討している。

 文科省では「不登校になった原因の本質を浮かび上がらせ、いじめの実態についても検証したい。いじめに伴う自殺という最悪の事態となることも防ぎたい」としている。

 ◆不登校文部科学省は年間30日以上の欠席と定義するが、病気などの理由は除いている。同省の「問題行動・不登校調査」によると、2017年度は小中学校で14万4031人で、統計開始の1998年度以降で最多。中学生では31人に1人が不登校


 これはほとんど罠としか言いようがない。

 記事に添付されたグラフを見ればわかる通り、いじめの認知件数は2006年と2012年に飛躍的に増加し、2015年から2016年、2017年とわずか3年の間に2倍にも増加している。2006年から比べると4倍だ。

 その間に学校で何が起こったのか、かくも学校が殺伐としてきた背景には何があるのか・・・。

 テレビ番組の触発された「いじめブーム」が起こったのか、小中学生にまで浸透したどこかの秘密組織が繰り返し指令を出しているのか、あるいは日本転覆を狙う外国勢力が密かに破壊活動を続けているのか――。
 
 そんなことはない。
 単に基準が変わっただけのことだ。これまでいじめと認知されなかったものもいじめとし、見過ごされそうな些細なものまでも拾い上げないと一気に4倍などということはありえない。

 ことに2015年から2017年にかけては、「ゼロ回答」を出した学校に教育委員会の担当者が直接出向いて、とにかく「子ども同士のじゃれ合いでも何でも、嫌な思いをした子がひとりでもいたらいじめとして報告しろ」と再三指導した結果が40万件という巨大な数字なのだ。
 これについては以前、「いじめ認知41万件に=最多更新、小学低学年で急増-17年度問題行動調査・文科省」というメディア評論で扱った。

 何のためにこんなインフレ報告をつくるのだ、教員でも増やしてくれるのか、と思っていたらそんな動きはまったくなく、気がつくと、
「いじめの認知件数が過去最多となっているのに対し、学校側が挙げる不登校の理由では、『いじめ』の割合が極めて低い状況にある」(だから学校は信じられない)
――これではまったく詐欺か罠である。

 その上で、
 
文部科学省は来年度、欠席が続く小中学生から学校などを介さずに、聞き取り調査を行う方針を固めた。
ということだが、とりあえず、
 経験を積んだ教師の観察・判断より、小中学生の自己分析の方が正しいという前提自体が気に入らない。
 子どもがそこまで内省的で優秀なら、少なくとも道徳教育の入り込む余地などないだろう。教科指導だけをしていればいい。
 
 
 考えてみるといい。そもそも子どもたちが、自分の不登校の原因は「家庭に係る状況」(=家庭のせい)と言うか?
 「学業不振」「進路に係る不安」――、具体的に「勉強が分からない」とか「進路をどうすればいいのか分からない」と言えば教師も親も、「だったらなおさら学校に行きなさい」と言うに決まっている。
 「クラブ活動・部活動等への不適応」「学校の決まり等をめぐる問題」「入学・転編入学・進級時の不適応」等を理由に上げれば、教師も「善処しよう」「キミにあった方法を考える」「だから学校に来なさい」といった面倒なことになる。
 
 しかし「いじめがある」「先生が怖い」と言えば、大人は引いてくれる。少なくとも保護者は、無理をしても学校へ行けとは言わない。
だから子ども本人に聞けば、「いじめ」「教職員との関係をめぐる問題」「特に該当なし」がやたら増える。
 
 実際にこれまで出会った不登校児で、「いじめ」「先生」「特に理由はない」以外の理由を語った子どもを私は知らない。
 
 
 今回文科省が実施を決めた調査は、したがって最初から原因を「いじめ」と「教師」に求めようとするものだと言える。不登校は家庭や本人の問題ではない、学校に責任がある――そう結論したいのだ。その上でどうするのだ?
 
 もちろん教員を増やしたり給与を上げていじめに対処できる人材を増やしたりするわけではないだろう。教員の自覚を促し、研修を増やすことぐらいが関の山だ。
 
 かくして教員の多忙にもうひとつ拍車がかかり、教職がブラックだという評判が高まり、採用試験の倍率が下がって「誰でも教師になれる」どころか「教師のなり手がいない」事態へと進む。

 それで幸せになるものはひとりもいない。