キース・アウト

マスメディアはこう語った

学校の先生は、“言葉のできない外国籍の子どもに日本語のIQテストをしているらしい”と考える愚かしさ

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特別支援学級に在籍する外国籍児童が有意に多い
――それは統計的事実だ。

日本語が理解できないため知能指数(IQ)検査の結果が低く、知的障害などと判断された可能性がある
――それは勝手な憶測だ。

そんなアホな憶測をした「専門家」とは誰なのか?
なぜ直接学校に問い合わせないのだ

 という話。

 




2019.09.02

 外国籍の子どもを特別支援学級に追いやる教育は外国人労働者に頼ろうとしている日本として恥ずかしくないか

[Yahoo Japan ニュース 9月 2日]

 8月31日付の『毎日新聞』(電子版)が、「文部科学省への情報公開請求などで判明した」という記事を掲載している。それによれば、「外国人が多く住む25市町の公立小中学校に通う外国籍の子どもの5.37%が、知的障害がある子らが学ぶ『特別支援学級』に在籍していた」そうだ。外国籍の子どもの在籍率は、この25市町の全児童生徒の在籍率の2倍超になっている。

 なぜ、こんなに外国籍の子どもの特別支援学級在籍率が高いのか。同記事では、「日本語が理解できないため知能指数(IQ)検査の結果が低く、知的障害などと判断された可能性がある」との専門家のコメントが引用されている。

 知的障害ではないにもかかわらず知的障害と判断されている可能性がある、というのだ。本来ならば普通学級で学べるにもかかわらず、特別支援学級にいれられてしまっているわけである。

 日本政府は、外国人労働者を増やす施策を推し進めている。日本の労働者不足を穴埋めするためである。

 家族をともなって日本にやってくる外国人労働者は少なくない。その子どもたちは、多くが日本の公立学校にかようことになる。当然ながら、そこに立ちふさがるのが「言葉の壁」である。

 今年6月28日には、「日本語教育の推進に関する法律」が公布、施行されている。外国籍の児童生徒や留学生、就労者らに対し、日本語教育を受ける機会を最大限確保することを基本理念としたものだ。「言葉の壁」は、政府としても無視できないところにきているわけだ。

 しかし、法律はできても対応がじゅうぶんにできていないのが実態でもある。日本語教育のための予算や人がじゅうぶんに確保されている、といった状況にはない。現実は、その逆である。

 学校では、日本語教育の役割は教員に押しつけられている。日本語教育のノウハウもなく、ましてや「忙しすぎる教員」にしてみれば負担以外の何ものでもない。

 そのために「言葉の壁」を抱える外国籍の子どもたちは、学校で「放置」されてしまっている。「登校はするけれど、ジッと座ったままで耐えているだけの子どもたちは少なくありません」と学校における外国籍の子どもたちに詳しい人物はいった。

 それは、教員にとっても「歓迎せざる存在」のようだ。そして、「特別支援学級に追いやる」ことになってしまっているのではないだろうか。

 労働力不足を外国人労働者に頼ろうとしているにもかかわらず、外国籍の子どもたちの対応はできていない。教育の貧困であり、日本の貧困さの表れでしかない。




 昨日ブログに、
「学校批判をする人たちは疑問を持っても学校に訊きに行かない。
なぜ訊きに行かないのか。なぜ教師に訊いてみようとしないのか。」

と書いたばかりなのに、調べることをしない教育ジャーナリストの記事がまた載っていた。

 

【問うたら調べよ】

 なぜ、こんなに外国籍の子どもの特別支援学級在籍率が高いのか。
 問うたなら調べればいいではないか。1時間かそこら学校へ電話して訊けばきっと教えてくれる。
 それを横着して、
 同記事では、「日本語が理解できないため知能指数(IQ)検査の結果が低く、知的障害などと判断された可能性がある」との専門家のコメントが引用されている。
とやるから厄介なことになる。話が迷走する。記事に信頼性がなくなる。

 そもそも毎日新聞のこの記事自体に、疑いの目を向ける気持ちは微塵もなかったのか?

 日本語が理解できないため知能指数(IQ)検査の結果が低く
って、それでは要するに「学校が言葉のできない児童に日本語のIQテストをやらせた」ということではないか。そこまで教師が馬鹿だと思われているとしたら本当に情けない、涙が出そうになる。

 私はマスメディアが匿名で「専門家は」と言い出したら、それは存在しない人だと思うことにしている。
 記者はさほど悪意も持たないまま、なんとなく文章の締りがいいので「専門家は」と書いて私見を述べる、そんな仕組みがあるのだ。そうでなければあまりに素人臭い言葉は出て来ないはずだ。

 

 

特別支援学級に入れるのは子どもを守るためだ】

 特別支援学級に外国籍の子どもが有意に多く在籍しているのは、IQテストのためではない。その方が子どもにとって手厚い教育を受けられる、有利だと考えらたからなのである。

 上の記事にある通り、1クラス最大40人もいる普通学級に入れられてしまうと、
「言葉の壁」を抱える外国籍の子どもたちは、学校で「放置」されてしまっている。「登校はするけれど、ジッと座ったままで耐えているだけの子どもたちは少なくありません」と学校における外国籍の子どもたちに詳しい人物はいった。
ということになる。
 可哀そうに。

 しかし特別支援学級は違う。最大でも1クラス8名。実際には担任教師とマン・ツー・マンで指導を受けている場合すらある。
 だから全く日本語のできない児童生徒が入ってきたとき、とりあえず特別支援学級に入れてそこで最低限の学習を確保し、学年相応の学力を保障したいというのが学校の願いなのだ。

 もちろん普通学級に耐えられるだけの日本語能力が確保できれば、普通学級に戻す。
 外国籍の子どもが在籍している間じゅう、本来の支援学級の児童生徒は受けられるはずの授業の一部を譲り渡しているわけだから原状はできるだけ早く回復されるべきであろう。

 

 

【記事の趣旨には一部賛同する】

 労働力不足を外国人労働者に頼ろうとしているにもかかわらず、外国籍の子どもたちの対応はできていない。教育の貧困であり、日本の貧困さの表れでしかない。(だから何とかしろ)
という記事の趣旨には、私も賛同する。
 けれどもろ手を挙げて全面的に賛成するわけにはいかない。

 外国人労働者の子弟教育のために予算を増やせとあまり強く要求すると、少人数教育や発達障害対応の予算から回されてしまうことがしばしばだからだ。教育予算の大枠は増やさないのが原則だからだ。
 この問題で何かを語るとしたら、そういう点にも気を配っておかなくてはならない。


*なお、私が引用したYahooJapanニュースの記事では、毎日新聞の記事のタイトルを「文部科学省への情報公開請求などで判明した」としているが、正しくは「外国からきた子どもたち 支援学級在籍率、外国籍は2倍 日本語力原因か 集住市町調査」である。

 そもそも「文部科学省への情報公開請求などで判明した」などといった曖昧な見出しが、世の中にあるとは思えない。些細なことであるが、プロならそこまで丁寧に見るべきだろう。