教員免許更新制、「10年もやったのに教師の資質はさっぱり上がっていないじゃないか」と言われている件について

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 教員免許更新制。
 
メディアはさっぱり効果がないじゃないかとご不満。
 教員は高い金を払って大した講習ではないとご不満。
 それなのに、
 10年に一度の講習が全員にいきわたってもやめられない。
 そこには浅~いワケがある。


 

 記事            




2019.12.09

教員免許更新制10年 資質の向上、乏しい効果

神戸新聞NEXT 12月 7日]


 かつては一度取得すれば終身有効だった教員免許に、10年に1度の「更新制」が導入されてから10年が過ぎた。目的は教員としての資質を高めることにあったが、導入以降も体罰やわいせつ行為などで懲戒処分を受ける教員数は高止まりし、大きな変化は見られない。神戸市立東須磨小学校の教員間暴行・暴言問題でも教員の質が問われる中、専門家からは効果を疑問視する声が出ている。(堀内達成)

 教員免許更新制は「教育再生」を掲げる第1次安倍政権の下で導入が決まり、2009年度に始まった。背景には教員の指導力不足や全国の高校で発覚した必修科目の未履修問題など、教育現場に対する批判の高まりがあった。

■講習30時間以上

 文部科学省によると、17年度末までに全国で約74万人が更新を迎え、このうち失効したのは約千人。兵庫では3万2414人で、41人が失効した。質の保持や向上が狙いではあるが、同省は「不適格教員の排除が目的ではない」とも。失効割合は全国、兵庫とも0・1%程度となっている。

 兵庫県教育委員会によると、失効理由は退職時期が近くあえて更新しなかったケースが8割。残りは更新に必要な講習の受講を忘れるなどのミスだった。

 では、求められる質の向上をどう実現するのか。その柱となるのが、更新時に定められている30時間以上の講習だ。期限を迎える直前の2年間に、それぞれ教職課程のある大学などで受講する必要がある。

 内容としては、国の教育施策などを学ぶ「必修」や、免許状や勤務する学校の種類に応じた「選択必修」などに分かれるが、重点は近年の教育課題や教科指導に置かれがち。コンプライアンスなどに関する講習は乏しい上、基本的には受講さえすれば更新できる。多忙な教員にとっては負担の大きさも課題とされる。

 県内の中学校に勤める50代の男性教員は、4年ほど前に夏休み期間などを利用して受講。人権問題など興味のあるテーマを選び、姫路市内の大学や通信制で学んだ。費用は自己負担で約3万円。「ためになる授業もあったが、知っていることも多く、質の向上につながったかは分からない」と振り返る。

コンプライアンス

 一方、文科省のまとめでは、更新制導入前の08年度に懲戒処分を受けた公立学校の教員数は全国で1059人(免職は182人)、兵庫では神戸市教委分も含め39人(同6人)。以降も年度によってばらつきはあるが、17年度まで全国では777~1162人、兵庫では22~55人で推移し、必ずしも教員の質が高まったとは言い難い結果となっている。

 処分理由は例年、体罰とわいせつ行為が合わせて3~5割程度を占める。同省はこうした現状について「コンプライアンス研修の充実などで対応していきたい」としている。

■教員免許更新制に詳しい池田賢市・中央大教授の話

 教員の資質を培うには、職員室でのコミュニケーションが必要だ。勤務する学校の児童や生徒についてしっかり議論すれば、課題が具体化する。その話し合いを通じて、子どもとの関わり方や解決方法を学ぶことが質の向上につながるのではないか。一方、毎年のようにミスで失効者が出てしまうのは制度設計上の問題。仕組みが複雑で、学校の管理職も把握できていない。

【教員免許更新制】制度導入以前に交付された免許は「旧免許状」と呼ばれ、各教員の生年月日に応じ、2010年度末~19年度末の間に最初の更新期限が割り振られた。以降の更新は10年に1度。一方、制度導入後の免許は「新免許状」で、当初から10年の有効期限が定められている。更新には30時間以上の講習が必要で、受講後に修了証明書が発行される。仮に免許が失効した場合でも過去に取得した教職課程の単位は有効で、講習を受講・修了し、各教育委員会への申請などを行えば再び免許を取得できる。




【いつものマスコミのやり口】

 神戸新聞NEXTはいいところに目をつけた。
 マスメディアはときどき人々が忘れていることを突然目の前に突き出して、「これどうなってる?」と驚かすことがある。

 かつて新しい学力・「総合的な学習の時間」に夢中になっていたら「ところで算数数学や国語の力、落ちてない?」とか、
 だから学力の国際比較でより高い成績を上げようとして頑張っていたら「『道徳』の授業、ちゃんとやってるよね?」とか、
 そこから慌てて道徳の授業にも力を入れ始めると、「これからの社会はやっぱ英語力でしょ」
とか言った具合。
 ただし今回、教員免許更新制に注目してくれたことは、ありがたいドッキリであると言える。

 

【バカな教師を叩き直すための制度】

 教員免許更新制度は全国学力学習状況調査(全国学テ)とならんで、教師が「働き方改革を言うならとりあえずやめてほしい」ツートップのうちのひとつだ。
 いつも問題にされる部活動などにはやりたい教師もいるが、このふたつに限って「なくなると困る」教師は皆無だろう。

 特に「教員免許更新制」は、”学力低下や教員の質の低下問題など、日本の教育が死んでしまったことは明らかだから生き返らせてあげよう”という趣旨でつくられた「教育再生会議」の提案によって、2009年から始められた屈辱的な制度である。

 「教員は質が落ちているにもかかわらず、バカで勉強しないから政府が場を与えてやる。3万円払って30時間の講習を受け、まっとうな教師になれ」
 そんな悪態が聞こえてきそうな腹立たしい制度だが、10年ごとに受講することになっているために一応10回はやらないと全員に行き届かず、不公平になるので今日まで続いてきてしまった。
 さらにそこには誤解もあった。

 

【教員の不祥事をなくための制度ではない】

 神戸新聞NEXTが勘違いしているのは教員の資質向上をコンプライアンス(法令順守)の問題と同一視していることである。
 更新制導入前の08年度に懲戒処分を受けた公立学校の教員数は全国で1059人(免職は182人)、(中略)17年度まで全国では777~1162人(中略)で推移し、必ずしも教員の質が高まったとは言い難い結果となっている。

(更新講習の)内容として(中略)重点は近年の教育課題や教科指導に置かれがち。コンプライアンスなどに関する講習は乏しい上、基本的には受講さえすれば更新できる。

 教師の不祥事が再三にわたって報道される昨今、コンプライアンス講習が10年に一度では世間が黙っていないだろう。実際には年中行事のように繰り返し行われ、「法令順守」など耳にタコができるほど聞かされている。校内研修など年に何回行われるかわからない()。

 

【“知”は現場にある。大学に落ちているわけではない】

 更新講習の中心はあくまでも教育課題への対処と教科指導だ。しかし“専門家”の池田先生のおっしゃる通り、
 教員の資質を培うには、職員室でのコミュニケーションが必要だ。勤務する学校の児童や生徒についてしっかり議論すれば、課題が具体化する。その話し合いを通じて、子どもとの関わり方や解決方法を学ぶことが質の向上につながる

 実際に教育に関する実践的な”知”は現場にこそあるのであって、大学の構内に落ちているわけではない。
 記事の中でも一人の教員が遠慮がちにこんなふうに言っている。
「ためになる授業もあったが、知っていることも多く、質の向上につながったかは分からない」

 そういうものだ。

 

【それでも教員免許更新制はなくならない】

 講習の最後には必ずアンケートがあって、まったくムダということもないし敢えてケンカを吹っ掛ける必要もないから大半の教師が「講習を受けてよかった」に〇をして帰ってくるが、設問が「今後も続けて3万円払って30時間の講習を受けるか」だったら絶対に〇はしない。
 
 そんな「へ」にもならないような制度が教員の熱望にも関わらずなくならないのは、毎年10万人もが受ける更新講習の受講料、総額30億円が大学の運営費に組み込まれているからである。
 政府が負担すべき費用の一部を学校の先生たちが出してくれるわけだから、この制度、なくなるはずがない。
 そういうことだ。

*この件に関して、よく女性の先生たちが怒らないものだといつも感心している。
「もういい加減にしてよ! 教員不祥事っていったってやっているのは99.99%男の先生ばかりじゃない! だったらコンプライアンス講習なんで男の先生だけが受ければいいのよ!」
 そう言われても仕方がないと私は思っている。そのくらい講習会は繰り返し行われているのだ。