目の前の子どもの学力が心配だといって9月入学を認めてしまうと、10年後、お宅の子どもは東大に入れないかもしれない

 学校が休校中、金持ちの子どもは塾やオンラインで高い学力をつけているのに、
 
お宅の子どもは置いて行かれるばかり――。
 
そんな脅迫に屈して9月入学に賛成したら、
 
10年ののち、
 もしかしたら東大に入れたかもしれないあなたの息子は二流大学に甘んじ、
 
せめて三流には入ってほしいと願った子どもも、
 
四流・五流に居場所を探さなくてはならないかもしれない。
という話。

f:id:kite-cafe:20200501144929j:plain(「東京大学安田講堂パブリック・ドメインQより)

 

記事


9月入学、具体化作業入り 来秋想定、6月にも方向性 政府
(2020.05.01 時事通信

www.jiji.com

 政府は30日、新型コロナウイルス感染拡大による休校長期化を受け、「9月入学」の実現に向け具体的な検討作業に入った。
 来年秋からの制度化を想定。
(中略)
 全国の学校では児童・生徒の感染を予防するため臨時休校が続いている。政府は自宅で学習できるオンライン授業の普及を促しているが、自治体によって取り組みに差があり、学力の「地域格差」拡大が懸念されている。

 感染終息のタイミングによるが、全国一律に9月入学で仕切り直せば、こうした不安を払拭(ふっしょく)できる可能性がある。欧米や中国では9月入学が主流で、留学生の往来がスムーズになるメリットもある。

 一方、国や自治体の会計年度、企業の採用スケジュールなど4月スタートを前提にしてきたシステム全体への影響は大きい。新型コロナウイルス感染で社会全体が混乱する中、こうした大規模な制度改正を同時並行で行う余力があるのかについて懸念する声も出ている。  

 

 

【誰がいつ、小学生に上がるのか】

 私には間もなく5歳になる孫がいて、今は保育園の年中(ねんちゅう)組。来年の年長組を経て、再来年は小学校だからランドセルの用意もしなくては・・・と思っていたのだが、来年から9月入学になるかもしれないとのこと。そうなると孫も来年の入学となるが、ブランド・ランドセルは一年前でも手に入らないと聞く。これは急がねば・・・と考えているうちにふと気づいた。
 来年6歳になる孫はともかく、いま、つまりこの4月~8月の間に6歳になりつつある年長組の子どもたちはどうなるのだ?

 来年9月にウチの孫が入学するとき、一緒に入るのは今年の9月から来年の8月までに6歳になる子であることは間違いないとして、それ以前、今年の4月から8月までに6歳になる子たちは、入学したばかりの今の一年生と一緒に、この9月から小学校に通うことになるのか? それともウチの孫たちと一緒に、来年になって小学生になるのか――。
 前者だと2019年の4月から2020年8月までに6歳になる子が1年生になるのでその数は現在の1.4倍。後者だと孫たちの学年が例年の1.4倍の人数になってしまう。

 人数が1.4倍になると当然、学級数も増える。教員の方は金を出せばすぐにも集められるが(教職が敬遠される現在は、もしかしたらこれも難しいかもしれないが)、教室が足りないということになると大変だ。
 通常、教育委員会は数年後を見越して校舎の増改築を行っていくが、こんな形での学級増など、考えているはずがない。

 いや教員も教室もそうだが、その前にそれらを増やすための学校予算がどうなるのか分からない。
 国の会計年度は4月始まりだが、学校の会計が9月始まりなるとどう予算をつけてどう決算をはたすのか――。
 もっともそういった難しいことは頭のいい人たちに任せることにして・・・、学校に付随する様々なこと、例えば部活動のことなどを考えるとさらに分からなくなる。

  

【部活や高校野球はどうなるのか】

 9月に新入生を迎えて月末までに入部指導を終え、10月から新体制が始まって11月から市町村大会、12月地区大会、1月に県大会をやって2月が全国大会か。
 裸足で競技を行う柔道・剣道は足が冷たいだろうな・・・と考えているうちに、おい、おい、柔剣道ではないだろう、相撲はどうする、水泳なんかできるのか? 野球だって雪深い秋田や山形からくる代表は気の毒だ。

 野球と言えば高校野球はどうなるのだろう? 夏の甲子園は7月の卒業式が終わったあとだから1~2年生の大会になるのだろう。すると春の選抜大会が3年生の大会ということいなって、ドラフト会議は6月かぁ。指名されなければ就職あるいは進学と考えている子にとっては遅すぎるよな。

 いずれにしろメチャクチャ大変なことは確かだ。しかし大変でもその先に大きなメリットがあれば耐えていくべきだろう。

 

【9月入学のメリット】

 報道によればメリットは二つ。
 ひとつ目は現在休校のために学校に来られない子たちに、来年8月まで、今の学年のままで就学させることで十分な学習機会が増やせること。そうしないと塾やオンラインで学習を進めている子たちとの学力差が縮まらない。
 もうひとつは中国や欧米の大部分が9月始まりなので、それに合わせることで留学等ががしやすくなる点。

 しかしどうだろう? 一点目はともかく二点目。
 この慌ただしく難しい、危険な時期に、何を慌ててエリートやお金持ちのためにこんな大変革をしなくてはならないのか――。

 

【9月入学は産学政府の悲願】

 実は9月入学(特に大学・大学院の)は日本の産学政府共通の悲願なのだ。

 今回のコロナ事態で多少怪しくなったとはいえ、日本の大企業には巨大な内部留保があり、企業はそれを大学に投資して成果を吸い上げたい。いわば紐付きの資金提供で成果を独占したい。それがアメリカの成功の秘訣のひとつで、もちろん日本もそうしたいのだが、そのとき前に立ちはだかっているのが4月入学なのである。

 4月入学であるばかりに世界の優秀な人材を呼び集められない。ノーベル賞級の大学教授を呼び寄せようとしても、日本に赴任する前後で時間的な無駄が生じてしまう。
 THEを始めとする大学の世界ランキングで日本が20傑にも入れない大きな理由のひとつは留学生があまりにも少ないこと、外国人教授が少ないことなどいわば国際性に大きな課題を抱えているからである。
 したがってこのコロナ事態のどさくさの中で、9月入学を一気に進めてしまえば、産学政界すべての人々にとっての幸せなできごとになると言えるのだ。

 

【だからあなたの子は東大に行けない】

 ところで、そのことは将来こどもを海外留学に出す予定などない私たち庶民にとってはどういう意味をもつのか――。
 ひとつは東大・京大など税金が最も多く投入されている大学の定員の、多くを外国人が占有するということである。日本人の枠が少なくなる。
 その結果、日本人学生が大学の階層を一段、あるいは二段、降り始める。

 考えてみるがいい。本来、学問に王道はないのだ。
 学校が休校中、金持ちの子どもは塾やオンラインで高い学力をつけているのに、ウチの子どもは置いて行かれるばかり――それは幻想である。金持ちであろうとなかろうと、勉強をする子はするし、しない子はしない。
 それにも関わらず不安商法に巻き込まれ、9月入学にすればウチの子も伸ばしてもらえると信じてウカウカと乗せられれば、10年の後、東大に行けたかもしれないあなたの息子は外国人留学生に押し出され、せめて三流には入ってほしいいと願った子どもも四流・五流に居場所を探さなくてはならないかもしれないのだ。

 諸般の事情を考えると9月入学への変更などそう簡単にできるものではない。だからそう心配することもないと思うが、美味しいは必ず眉に唾をつけて聞かなくてはならない格好の記事である。