キース・アウト

マスメディアはこう語った

文科省が学校への持ち込みを許可したスマホで、子どもたちが盗撮をすることがあるからしっかり指導しろって、オイ! 「教師の働き方改革」「労働時間の削減」はどうなってるんだ!

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(写真:フォトAC )

 

記事

 被害者にも加害者にもなる中高生…スマホ悪用「校内で盗撮」目立つ

(2021.03.28 読売新聞)

www.yomiuri.co.jp

  スマートフォンの普及が進み、学校現場でスマホを使った盗撮などの事件やトラブルが相次いで表面化している。生徒が校内で盗撮し、児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で摘発されるなど、軽率な行動が罪に問われるケースが目立つという。進学などで新たにスマホを手にする子どもが増える季節を迎え、専門家は「児童生徒には事件に巻き込まれないことに加え、加害者にならない教育も必要だ」と指摘する。(沢井友宏)

「加害者、想定外」
 「まさか校内で盗撮事件が起きるとは……。想像もしていなかった」。九州北部の高校の教員はそう振り返る。同校では昨年度、スマホのカメラによる盗撮事件が発覚。新年度から、トラブルを引き起こさないように注意を喚起する教育を始める。

  警察や同校によると、男子生徒は数人の友人らとともに、カメラを起動させたスマホを教室などに置き、着替えをする女子生徒の写真や動画を撮影。児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)などの容疑で書類送検された。警察が男子生徒のスマホを調べたところ、複数の盗撮画像が出てきた。

  同校では、放課後に塾に通う生徒もいることから、スマホの携帯は許可する一方、校内での使用は禁止してきた。ここ数年は、授業でSNSを悪用した性犯罪などに巻き込まれないように注意を呼びかけていた。

  教員の一人は「被害防止は意識してきたが、加害は想定外だった」と悔やみ、「幼い頃からスマホを持つ子どもが増え、しっかりとした指導が必要だと感じた」と話した。同校では新年度から警察などと連携し、生徒や保護者に対して具体的な加害事例を示しながら指導していく方針という。

(以下、略)

 

【当然、予想されたこと】

 取材に応じた高校教師が本気で、

「まさか校内で盗撮事件が起きるとは……。想像もしていなかった」

などと思っていたとしたら、とんでもない大バカ者だ。

 校内における生徒による盗撮事件など、いくらでもあるだろう。一度も指導したことがなかったのか?

 教員と違って児童生徒の盗撮はニュースになりにくいが、有名なところでは一昨年、2019年1月15日に東京都町田市の都立高校で、挑発に乗せられた教師が生徒に暴力を振るい、その様子を生徒が盗撮。その日のうちにツイッターに上げられるという事件があった。

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 また2020年には奈良県生駒市で男子中学生が同級生のスカートの中を撮影、動画や静止画を生徒間で売買したという事件も起こっている。

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 こうした前例を思いだしただけでも、子どもたちが加害者となることは容易に想像がつこうというものだ。

 おそらく生徒指導の問題として校内で処理され、表には出ないもののスマホを使った犯罪の数は教員よりはるかに多い。なにしろ児童生徒は教師の数より何十倍も多いし、中高生男子の性欲はしばしば制御の効かない暴れ馬だ。確率からすれば圧倒的に多くなるはずだ。

  それを「まさか校内で盗撮事件が起きるとは……」と驚いて見せるのは、

「生徒を十分に疑って盗撮を予想していたのに、結局、防げなかったバカ教師」と「生徒を信じていたのに裏切られた誠実な教師」を秤にかけて、後者をとっただけのこと。新聞記事としてもその方が収まりがいいので、記者もそのまま採用した(あるいは捏造した)のだろう。

 

スマートフォン:本来は子どもに持たせてはいけない道具】

 ケータイ・スマートフォンは便利な道具だが同時に非常に危険なものでもある。

  私は決して忘れないのだが、2004年に奈良市内で起こった小1女児殺害事件では、娘を必死に探す母親の携帯へ「娘はもらった」と言うメッセージとともに少女の遺体写真が送りつけられてきた。少女自身がもっていた携帯で撮影され、そのまま送信されたものだ。親は娘の登下校を心配して持たせたが、携帯は誘拐に際して何の役にも立たないどころかそんな悪用のされ方をしたのである。

 これは最も極端な例だが、出会い系サイトを通して少女が誘い出されたり、ネットいじめにあったり、ケータイ・スマホを媒介にした犯罪、ケータイ・スマホがなければ起こりえなかった犯罪は、数え上げたらきりがない。

  そうした犯罪から(そして記事にあるような子ども自身が加害者となる危険から)、児童生徒を守るためには何をどうしたらよいのか――。

  答えは簡単である。あんな悪魔の道具を子どもに持たせなければいいのだ。少なくとも学校に持ってこさせなければ、子どもが道具に触れる時間は半分以下に減らせる。

 ところがここに、たいへんな壁が立ちはだかる。親と文科省である。

 

 【危険なものは親も子どもも文科省も大好き】~苦労するのは学校

 昨年6月、親やマスコミの要求に耐えかねた文科省は、わざわざ専門家会議を設けて、

小中学校では携帯電話の持込みは原則禁止だが、中学校では一定の条件のもと持込みを認めることが妥当だ

という結論を出し、全国に通達した。文科省が「許可する」と言えば「全員もってこい」というのと同じだ。多くのの小中学生が学校に持ち込んでいるに、ウチの子だけ(ウチの孫だけ)に我慢しろと言える両親・祖父母は少ない。

kieth-out.hatenablog.jp ただ闇雲に持ってこられては困るから文科省も、

学校や教育委員会が持込みを認める場合、一定の条件として、学校と生徒・保護者との間で「学校における管理方法や、紛失等のトラブルが発生した場合の責任の所在を明確にすること」「フィルタリングが保護者の責任のもとで適切に設定されていること」「携帯電話の危険性や正しい使い方に関する学校および家庭における指導が適切に行われていること」の3つの事項について合意がなされ、必要な環境の整備や措置が講じられていることが求められる。

てなことを言う。

 今回、このブログで引用した読売新聞の記事にも、

専門家は「児童生徒には事件に巻き込まれないことに加え、加害者にならない教育も必要だ」と指摘する。 

とある。

 さあ結論だ。私は声を大にして言いたい。

 ひとこと「ケータイ・スマホの学校への持ち込みは禁止」と言えばいいものを、さらに言えば元々そうだったのだから改めて言う必要もないのに、わざわざ持ち込みを許可しておいて、「学校と生徒・保護者との間で(中略)3つの事項について合意がなされ、必要な環境の整備や措置」を講じ、「加害者にならない教育」も行わなければならないとは!

 いったいどれほどの時間が必要だと思うのだ!?

 

 勝手に仕事を増やしておいて、それで「教員の働きかた改革」「長時間労働の解消」たあ、へそで茶を沸かすとは、このことだワィ!

 いい加減にしてくれ!