キース・アウト

マスメディアはこう語った

片方でこの夏も金を払って免許更新をしている教師がいるというのに、他方、九州では資格のない人にただで教員免許を渡して学級担任をやってもらっているという。しかも、それには無理なからざる事情があるというのだ。

 

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(写真:フォトAC)

 

記事

 

教員不足、頼みは臨時免許 大学生にも…「乱発は制度形骸化招く」

(2021.07・11 西日本新聞

www.nishinippon.co.jp

 

 大学や短大を卒業して取得する教員の普通免許ではなく、欠員を補うための臨時免許で教壇に立つ「先生」が増えている。九州7県での臨時免許交付件数は2020年度、小中高と特別支援学校で計2197件に上り、14年度の約1・3倍。全体の3分の1に当たる755件が小学教員で、特別支援学級の急増や35人学級の導入に伴って必要な教員数に採用が追い付かない状態にある。

(中略)

 佐賀県は20年度、14年度の約3倍の97件になった。欠員を埋めるため、17年度から小学校の臨時免許を解禁したという。県教委は「大量退職が続いており、教員が足りない」。教員のサポートは学校現場に委ねているという。低水準が続く熊本県でも20年度から条件を緩和し、学校の勤務経験を不問とした。

  鹿児島県は20年度が617件と14年度の約1・4倍に増え、中学教員が全体のほぼ半数を占めた。小規模校が多いため全教科をカバーできる教員数を一つの中学にそろえられず、臨時免許で対応しているという。

  九州大大学院の元兼正浩教授(教育行政学)は「そもそも普通免許でも教員として必要な資質や力量を示す最低限の専門性の証明にすぎない」と指摘。その上で臨時免許で小学校教員になった場合、専門外を担当する危険性は否定できないとして、系統だった養成と研修が必要との認識を示す。「各教委が安易に臨時免許を乱発すると、専門職としての教員の地位が崩れることになりかねない」として、早急な改善を求めている。 

    ◇    ◇

【ワードボックス】教員免許

 教員免許には普通と臨時、特別の3種類があり、いずれも都道府県教育委員会が交付する。普通免許を取得するには大学や短大に入学し、法令で定められた科目を修得して卒業することが条件。臨時免許は普通免許がある人を採用できない場合に限った対応として発行が認められている。特別免許は社会経験に基づく専門知識のある人が対象。有効期間は普通、特別の免許が10年、臨時は原則3年。

 

 

【問題の筋が違う】

 記事を書いているのが教育の専門家ではないこというのは、こういうことなのだろうか、教育に関するマスコミの記事は、いいところを突いていると思う時ですらどこかでピントを外している。

 

 今回の引用記事についていえば、

 大学や短大を卒業して取得する教員の普通免許ではなく、欠員を補うための臨時免許で教壇に立つ「先生」が増えている。

は確かにいいところに注目したが、その結論が大学教授の口を借りての、

「各教委が安易に臨時免許を乱発すると、専門職としての教員の地位が崩れることになりかねない」として、早急な改善を求めている。 

というのはいかがなものであろう。

 臨時免許で穴埋めをする状況が好ましいものでないことは、採用の担当者は百も承知なのだ。しかし早急な改善を求められたって、できないことはできない。

 

 

【そもそも教員志望がいない】

 昨年行われた2021年度教員採用試験の九州・沖縄地方の受験倍率は下の通りである。なお中学校については教科ごと倍率が違うために平均を掲げた。 

 

        小学校    中学校

福岡県                  1・4倍  平均2・8倍(1・7~5・0倍)

大分県                  1・4倍  平均3・7倍(1・0~8・5倍)

宮崎県                  1・9倍  平均5・2倍(1・9~7・8倍)

佐賀県                  1・4倍  平均2・6倍(1・3~6・6倍)

長崎県                  1・4倍  平均3・7倍(2・5~6・2倍)

熊本県                  1・8倍  平均4・2倍(2・1~7・7倍)

鹿児島県              2・1倍  平均4・3倍(3・1~13・0倍)

沖縄県                  4・7倍  平均12・6倍(4・3~18・9倍)

「【2021年度教員採用試験】 最終選考実施状況(九州・沖縄)」(教育新聞 2020年11月11日)より整理・引用》

 

 競争率が2倍を切れば合格者の質に問題が生れると言われる採用試験で、九州地方は軒並み2倍割れなのだ。しかも1・5倍さえない県が四つもある。

臨時免許で小学校教員になった場合、専門外を担当する危険性は否定できない

などと悠長なことをいっていられる場合ではない。倍率をどんどん下げていかない限り、臨時免許でも使わないと学級担任が埋まらないのだ。

 

 中学校でも細かく見ていくと大分県の技術科は受験者がわずか2名で二人とも合格させて倍率1・0。数字には出てこないが熊本県の家庭科には受験生が1名しか来なくてその受験生も落としている。まさか需要がゼロなのに受験させたということもないだろうから、よほど成績が悪かったか当日欠席だったのだろう。

 これでどうやって早急な改善などできるというのだろう。

 

 もう言葉がない。

 教員が足りない以上、35人学級どころではない。早急に45人学級に戻し、学級数を減らさなくてはならないところまで追い込まれているのだ。