ここのところ急速に増えつつある不登校に関して、中教審は対面型一斉学習の見直し、同年齢同一学年の見直しなどを言い始めた。 どさくさに紛れてエリート養育を始めようという腹だ。

f:id:kite-cafe:20211112184854j:plain

(写真:フォトAC)

記事


不登校過去最多「授業の改善も急務」 末松文科相

(2021.11.02 日本教育新聞)

www.kyobun.co.jp
 不登校の増加に歯止めがかからない状況から、一斉授業を原則とする現在の学校制度の見直しを求める指摘が中教審などで出ていることについて、末松信介文科相は11月2日の閣議後会見で、「不登校児童生徒への支援については、スクールカウンセラーの拡充など、教育の相談体制の充実に取り組んできたが、授業の在り方の改善も急務と思う。制度の問題があるが、現場で対応できることもたくさんあると思う」と述べ、ICT活用と少人数学級の推進を軸として一人一人の子供に対応することで、不登校への支援につなげていく考えを示した。学校制度見直しの必要性については「あらゆる観点から常に考えていくことが大事。今はそこまでしか申し上げることはできない」と慎重姿勢を崩さなかった。

 末松文科相は、小中学校の不登校の児童生徒数が昨年度に過去最多の19万6127人となったことについて「憂慮すべき事態」と指摘。増加の背景を「児童生徒の休養の必要性を明示した教育の機会確保の趣旨が浸透した側面もあるが、コロナ禍での生活環境の変化によって生活のリズムが乱れやすい状況もあった」と説明した。
(中略)
 不登校の増加と学校教育については、10月28日の中教審初等中等教育分科会で、委員から「調査結果は深刻度を年々増している。対面、学年制をはじめ、同年齢の子供たちが同じ学びを共有するという、この学校制度モデル自体がひずみを生んでいる。新しい学校制度モデルを検討する段階に来ている」(貞廣斎子・千葉大教授)、「不登校の要因を見ると、学校が何らかの変化をしなければならないところが多い。これは今の学校に対する明確なフィードバックだと受け止めていい」(今村久美・認定NPOカタリバ代表理事)と、学校制度の見直しが必要との指摘が相次いだ。荒瀬克己分科会長(教職員支援機構理事長)も「本当に重要な課題。具体的にどういった学校の在り方が今の子供たちに必要なのか考えていかなければならない」と述べた。

 

【問題の所在】

 記事は要するに本質的・全面的な教育改革を求める中教審文科省の常設諮問会議)の過激な意見に対して、文科省が「いや、待て、今のままで何とかなる」と抑えにかかったという話である。
 それにしても中教審はすごい。

  • 対面、学年制をはじめ、同年齢の子供たちが同じ学びを共有するという、この学校制度モデル自体がひずみを生んでいる。新しい学校制度モデルを検討する段階に来ている
  • 具体的にどういった学校の在り方が今の子供たちに必要なのか考えていかなければならない

 20万人近くにも膨れ上がった不登校も問題だが、そのために950万人に及ぶ日本の小中学生の学びのあり方を、根本から変えようというのだから凄まじい話である。

 

【思いつきで今日の学校制度ができたわけではない】

 日本の教育は近代以降だけでも150年近い歴史をもつのだ。教育学は小さな改良を重ねて入れ替える「経験の学問」であって、研究室の実験の成果を現場に移す実験科学ではない。
 同年齢・同一地域の子どもたちを一か所に集めて対面で学ぶという学習のあり方は、先人たちがたゆまぬ努力と犠牲によって獲得したものである。それを否定する以上は、よほど確かな未来の学校像がなくてはならない。
 
 もちろん発言者である貞廣教授には、留年・飛び級と合わせてリモートによって全国のトップエリートが学びを共有する未来の学習といった見通しがあるのだろう。それならば現在の学習に倦んだエリートは生き生きと学び続けるだろう。
 残った子どもたちは自分の身の丈に合った学習を、気持ちよく行えばいい――しかし子どもたちは、勉強がわからないから学校に行きしぶっているだけなのだろうか?
 この機に無学年制(到達度別学級編成)を行おうというのは別件逮捕のようなものだ。本来の狙いは別のところにある。

 

文科省、逃げる】

 常に中教審の考えを尊重しなくてはならない文科省もさすがに腰が引けたと見えて、末松大臣も、
「あらゆる観点から常に考えていくことが大事。今はそこまでしか申し上げることはできない」と慎重姿勢を崩さなかった。
ということになる。しかしだからといって、
 制度の問題があるが、現場で対応できることもたくさんあると思う
はないだろう。
 不登校について、現場はもうできることはやりつくしており、疲弊しきっているのだ。
 
 文科省スクールカウンセラーの拡充など、教育の相談体制の充実に取り組んできたのは事実だが、そのカウンセラーがあざやかに問題を解決したという例を私は聞かない。そんなすばらしい方法があるなら、すでに全国に波及しているはずだとも思う。教師は勉強家で、しかも不登校解決の妙案を渇望しているのだから――。

 

【それはない!】

 大臣! あなたの、
「児童生徒の休養の必要性を明示した教育の機会確保の趣旨が浸透した側面もあるが、コロナ禍での生活環境の変化によって生活のリズムが乱れやすい状況もあった」
という説明は、ここのところの急激な不登校の増加を説明するのに、十分とは言わないが、かなり適切なものだ。それなのに、
ICT活用と少人数学級の推進を軸として一人一人の子供に対応することで、不登校への支援につなげていく
という頓珍漢!

 大臣、あなたは何も分かっていないわけではない。しかし正直な発言をしているわけでもないようだ。