一部自腹で毎年修学旅行に参加しなければならない校長が、スイートルームに宿泊したと非難されている。ミーティングのできる広い部屋でさえあれば、どこでもよかったのだが他に部屋はなかった。コロナ禍でとんでもない苦労の末に実現した修学旅行だが、それでも配慮が足りなかったと学校は責められているのだ。

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(フォトAC)

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修学旅行で校長が1泊13万円のスイート宿泊 教委「上乗せない」

(2021.12.08 朝日新聞)

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 大分市は7日、市立小中学校6校の修学旅行で、引率した校長が宿泊先の大分県内のホテルでロイヤルスイートルームに宿泊していたことを明らかにした。通常の室料は税込み1泊13万2千円だが、市教委は旅行会社に確認したとして「旅行代金に13万円が上乗せされているわけではない」と説明している。

 同日の市議会一般質問でスカルリーパー・エイジ市議(53)が質問した。市議によると、市立小学校で11月末にあった修学旅行の「しおり」に記された宿泊先の図面と部屋割りに、校長の部屋が「ロイヤルスイートルーム」とあるのを見た保護者から「税金が使われているのではないか」といった疑問が出たという。

 ホテルによると、この部屋は168平方メートルあり、ジェットバスなどが備えられている。市教委とホテルによると、部屋割りは学校側の「子どもと教員を同じフロアに、校長の部屋はミーティングのため広めにしてほしい」といった要望に沿ってホテル側が決めており、スイートルーム宿泊は学校側の要望ではないという。料金についてホテルは、学校側が示す規定額に収まるようにしていると話した。

 エイジ市議は一般質問で「このような高級な部屋に泊まるのは一般的に考えられない。職務である引率で、このような宿泊は正しいのか疑問だ」と指摘。末松広之教育部長は「校長を含む教職員と児童が支払った金額は同額。児童および保護者に疑念を抱かせてしまい申し訳ない。校長会などで綱紀粛正が図られるよう指導する」と答弁した。

 エイジ市議は「保護者や市民の感情からすると、おかしいと感じるはずだ。子どもたちも校長先生が13万円の高級な部屋に泊まったことを知っており、教育上どうなのかと思う」と話した。

 

【これが議会で扱う内容か?】

 ツッコミどころが多すぎて、どこから包丁を入れたらいいのかわなからないような記事だが、とりあえずこんなくだらない話が市議会の一般質問の中で扱われたこと自体がわからないというところから始めよう。
 校長の部屋が「ロイヤルスイートルーム」とあるのを見た保護者から「税金が使われているのではないか」といった疑問
を持った保護者がいたなら、その人はまず学校か教育委員会に自分で問い合わせればいいではないか。そんなくだらないことを市会議員に頼む方がどうかしているし、引き受ける方も引き受ける方だ。
 仮に引き受けたとしても、議員自ら学校や教委に問い合わせれば合点の行く話だ。どう考えても市民から託された大切な時間を使って質問するようなことではない。
 さらに言えば、こんなくだらない記事を全国に流しているようでは、朝日新聞の行く末も心配になる。

【学校とホテル、両者に得なやり方だった】

 とにかく先生たちは、
「子どもと教員を同じフロアに、校長の部屋はミーティングのため広めにしてほしい」
と望んだだけなのだ。短時間にしろ、宿舎での教員のミーティングは必要だ。しかも見学先と違って、ホテルに入って気の緩み切っている生徒たちは一瞬たりとも目が離せない。したがって遠く離れた会議室へ全職員を集めるというわけにもいかない。不可能ではないが、目の前に広い部屋があるの、わざわざ遠い区へ行く必要もない、と教師たちは考える。それが普通なのだ。
 ホテルとしても、両脇すべてが修学旅行生のフロアの中央に、VIPやら新婚さんを入れるわけにはいかないだろう。空気を泊めるか学校から希望のあったミーティング・ルームにあてるかだ。同じフロアにほかの広い部屋があるわけではない。
 私は、むしろ校長はこの部屋に押し込められたのではないかと思っている。図を見ると職員の部屋は生徒の部屋を挟むように(あるいは部屋の要所要所に)配置している。それは生徒を管理する教師の根源的な欲望である。
 ということはいずれにしろロイヤル・スイートか隣の432号室(ツイン)には誰かを入れなければならない。校長か学年主任か、その他の職員か――。答えはおのずと明らかだろう。432に校長を入れて、ミーティングがあるたびにロイヤル・スイートに来てもらうというやり方もあるが、入れ代わり立ち代わり校長と話さねばならないとしたら最初からいてもらう方が楽だ。
 校長としては、自分の部屋に職員が出入りするとなると散らかしておくこともできず、迷惑な話だがその方が便利となればいたしかたがない。かくてそうした配置になった、それが事実だろう。

【校長は神様、ロイヤルスイートがふさわしい】

 それにしても、校長がロイヤル・スイートに泊められていたというのは実に象徴的だ。
 修学旅行の引率に参加する校長なんて全く役に立たない。現地で「次はどこに行くんだ?」などといっていられるのは、子どもを含む全参加者の中で校長だけである。全く役に立たない。
 しかしそれにも関わらずほぼ確実に校長が引率責任者になるのは、まさにその“責任”を取るためである。校内と違って一朝、旅行先の事故となると半端では済まない。生徒が交通事故に遭った、窓伝いに女子の部屋に行こうとして転落事故を起こした、飲酒した、集団万引きがあった――等々、めったにないことだが起これば重大だ。その責任を、学年主任に取らせるわけにはいかない。何しろ校長は定年退職が目前、学年主任は一家の大黒柱として働き盛りの30代~40代だ。辞職すべきはどちらか――誰が考えたって答えは同じになる。
 かくして多少重くても、校長を神輿に乗せ一緒に連れて行くのが便利ということになる。そして校長はいざというときの守り札、神様のようなものだからロイヤル・スイートにでも投げ込んでおくのがふさわしい――。 

【校長は、好きでもないミュージカルを毎年、自腹で観るのが仕事】

 もっとも神様扱いでも連れていかれる校長の方は気の毒だ。
 記事に、
 校長を含む教職員と児童が支払った金額は同額。
 とあるように、交通費・宿泊費・食費・見学料などはみな一緒。もちろん市町村から基本的な費用は補填されるが、体験学習などはやらなくても済むということで出ない(しかし校長だけやらないで済むか?)。
 また、学年主任が張り切って「どうしても子どもたちに一流のミュージカルを見せたい」とか言い出してS席など取ろうものなら、子どもは6050円でも大人は12100円だったりもする。もちろん夜の浅草仲見世巡りみたいな無料イベントとも交換できる内容なので市町村からは一銭も出ない。すべては自腹。昼食も基本料金に上乗せする部分は自腹、遊園地も子どもと一緒に楽しもうとすれば自腹。
 数年に一度しか引率をしない教師はまだしも、校長と養護教諭は毎年参加である。たまったものではない。そのうえ責任まで取らされて、校長はほんとうに気の毒である。

【その修学旅行は簡単に計画されたものではない】

 2年続きのコロナ禍で修学旅行。
 大分市内の小学校が、大分県内のホテルにしか泊まれなかったと聞くだけで涙が出てくる。いったい何回延期をし、何回計画を作り直し、そのたびにホテルを探し、頭を下げてここまでたどり着いたのか。それを、
「子どもたちも校長先生が13万円の高級な部屋に泊まったことを知っており、教育上どうなのかと思う」
と刺され、教育長が、
「校長会などで綱紀粛正が図られるよう指導する」
と答弁する。

「子どもと教員を同じフロアに、校長の部屋はミーティングのため広めにしてほしい」
は、その学校の例年通りのやり方なのだろう。それがたまたま今年はロイヤルスイートだっただけの話だ。それなのに綱紀粛正の問題として校長会で指導される。

 校長をロイヤルスイートに配置してしまった修学旅行の計画作成者(おそらく学年主任)もホテルの責任者も、こころの中で泣いているに違いない。

 事情を知ればその方がよほど、保護者や市民の感情からすると、おかしいと感じるはずだと、私は思う。