(写真:フォトAC)
記事
同僚に舌打ち・あいさつ無視4年間、歴代校長らが注意していた女性教諭を戒告処分
(2022.02.16 読売新聞)
www.yomiuri.co.jp 約4年間にわたり、同僚に対し、あいさつを無視したり、舌打ちしたりするなどの行為を繰り返したのはハラスメントに当たるとして、堺市教育委員会は14日、市立小学校の女性教諭(41)を戒告の懲戒処分とした。
市教委によると女性教諭は2017年度~20年12月、同僚の30代女性教諭のあいさつを無視したほか、ため息や舌打ちを繰り返したという。机に乱暴に物を置く、扉を強く閉めるといった行為、職員会議で自分と異なる意見が出ると、大声を出したり物に当たったりすることもあり、歴代の校長らが注意していた。
市教委に対し「仕事への姿勢や価値観が違い、感情が抑えられなかった」と話しているという。
評
【それほどのこととも思えないのだが――】
先生と呼ばれる人は全国に100万人近くいるから、1000人にひとりといった特別な奇人もざっと1000人近くいることになる。だから同僚に舌打ちしたり挨拶を無視する輩もいないわけではないだろう。職員会議で自分と異なる意見が出ると、大声を出したり物に当たったりするとなると、これはもう教育委員会よりも病院に相談すべき内容で、戒告の懲戒処分というのも馴染まない気がする。
おそらく実際にはもっと大変な状況があって、しかし発表にはなじまないので穏便な形で世に出したのだろう。これだけでは不当とも妥当とも判断しがたい。しかし私は
「仕事への姿勢や価値観が違い、感情が抑えられなかった」
という女性教諭の発言が気になるのだ。
【同僚たちが不甲斐なく見えるのは当たり前】
同僚の仕事への姿勢や価値観が、立派なので腹が立ったということではないだろう。おそらく逆だ。
ある種の教員には、自分より働いていない同僚たちが許せない人たちがいる。自分ばかりが働かされているという被害者意識があると言ってもいい。
教員世界では誰もみな過酷な労働環境下で働いていて、その中には優秀な者もいればそれほどでもない者もいる、苛酷であることに耐性のある人もいれば弱い人もいる、まったく自由に時間を使える人も、介護などでギリギリの日常を送っている人もいる――。
もちろん処分を受けた女性教師も、多くの場合は同僚の状況を斟酌できたろう。しかし全く問題のなさそうな人たちの不熱心や情熱のなさは許せなかったのかもしれない。特に若い教師たちだ。
だが、考えてみてほしい。
41歳といえば職業人として最もあぶらの乗り始める年齢ある。20代はおたおたと過ごし、30代では力を蓄え、40代となると周辺のことはだいたい目を瞑っていてもできるようになる。要するに最も充実した時代に差しかかっている。
そんなあなたからすれば、年下はみんな不甲斐なく、50代・60代はすでに枯れて見えるはずだ。それで当たり前ではないか。
【あなたは立派だった。しかし若者たちだって立派だ】
あなたが大学を卒業と同時に教員になったとすると、2003年か2004年の新規採用者だ。このころの学校は始まったばかりの「ゆとり教育」でみんなが苦労していた。手探りの部分が多くありすぎて、ベテランといえど新人に自信をもって助言できる人はいな かった。あなたも大変だったに違いない。
ところがようやくゆとり教育に燈明が見えたころ、突然、それは終わった。
代わって始まったのは、減らした時数を元に戻さず内容だけを戻す「学習内容の詰め込み教育」だ。
これにもあなたはよく耐えた。全国学力学習状況調査が行われ、学校マネジメントといったこともしなくてはならなくなった。小学校英語が始まり、プログラミング学習も始まる。そして新型コロナだ。
あなたの今日までの頑張りに比べたら、特に年少者たちはまるで努力していないように見える。
だがどうだろう。
あなたが20年近い歳月をかけて経験してきたことを、若い教師たちは一時に経験しなくてはならないのだ。あなたが徐々に、力量を上げながら対処してきたことに、若者たちは無力なまま、いきなり直面させられている。
【できることは他にあったろう】
どの世界もそうだが、より優れた者、より強い者、より余裕のある者が弱い部分を補い、全体として良くしていくのが人間社会の習いだと、私は思っている。
あいさつを無視したり舌打ちをしたところで、弱者が急に強くなるはずもない。あなたがすべきことは他にあったはずだ。