キース・アウト

マスメディアはこう語った

退職教員ボランティア諸君! 学校は乾ききった砂の世界だ。善意のためにうっかり近づくと、あっという間に吸い込まれるアリジゴク。「砂の女」に取り込まれぬよう、ゆめゆめ近寄ることなかれ!

(写真:フォトAC)

記事


教育現場を救え!多忙を極める先生をサポートするのは元教員 “担当不在サポート”とは《新潟》

(2022.07.22 TeNYテレビ新潟)

www.teny.co.jp

教員の多忙化についてです。通常の授業に加え、新型コロナウイルスの対応などで悲鳴に近い声が上がる学校現場・・・多忙を極める教員を少しでもサポートしようと活動する団体があります。
所属メンバーは〝元教員”。〝後輩たち”を助けるべく立ち上がった〝先輩たち”を追いました。

新潟市の関屋小学校です。4年生の教室で教壇に立つ笠原恵子先生です。
分からないところがないか…必要に応じてアドバイスをしながら様子見て回ります。
その後の給食ではエプロン姿に。新型コロナウイルス感染症対策として机を消毒し、アレルギーのある児童のメニューを確認。

実は笠原先生・・・このクラスの担任ではなく、ましてやこの学校の教員でもありません。
教員サポートを行うNPO団体「smileういんず(読み:スマイルウインズ)」のメンバーとして不在の担任に代わり子どもたちの見守りを行っていたのです。

「担当不在サポート」と呼ばれるこの取り組み。学校は担任や養護教諭が不在時に一日4時間、月5日を上限に見守りできる人を依頼。依頼を受けた「smileういんず」は対応できる人をマッチングして学校に派遣します。
対象は新潟市内にある小中学校です。サポートはボランティアで行われ、派遣時の交通費は寄付金で賄われています。
この取り組み、一番の特徴は派遣される人が全員“元教員”なのです。笠原先生も3年前まで市内の小学校に勤めていました。
(以下、略)


【教員はひとを助けるのが仕事。そうしたいと願っている】

 方法論は違っても、すべからく教員は子どもが好きだ。少なくとも子どもの成長を見守ったりその手助けをしたりすることが好きでなければ、この職に長くはいられない。その最も大切な子どもが困っている、同僚が疲れ果てている、そう聞けば何とか助けてあげようとするのが教員の性である。
 そして現在のように、現職が忙しすぎて子どもや同僚を助けられないとしたら、ここは退職教員の出番であろう。

 退職後は楽をしたいと思っていた人も、趣味に生きたいと思っていた人も、あるいは別に働き口を考えている人も家に仕事のある人も、どこかで悲鳴が上がれば行かないわけにはいかない。なにしろ「困っている人がいたら助けなさい」と40年近くも教え続けてきたのだから。

 

【本来はなかなか悪くない活動】

 したがって教員不足などなかった一昔前なら、この制度もさほど悪いものではなかった。教員が出張に出かける、通院のために数時間教室を空ける、そういった時間だけ退職教員がボランティアに入る――それは学校にとっても暇を持て余してる一部の退職教員にとっても、利益になることだったろう。
 しかし今は違う。
『学校は担任や養護教諭が不在時に一日4時間、月5日を上限に見守りできる人を依頼。依頼を受けた「smileういんず」は対応できる人をマッチングして学校に派遣』
は退職教員が無制限に搾取されないための最後の砦かと思うが、どこまで守れるかということだ。


【理念は現実に踏みつぶされる】

 一人の教員が突然休職に入る。
 最初の一週間、午前中は「smileういんず」が教室に入り、午後は校内の先生たちで何とかやり繰りする。校長はその間、必死に代理の教師を探し、翌週には間に合わせようとする。しかし見つからない。
 今や3カ月間も担任不在の教室がある時代だ。おいそれと変わりが見つかるはずがない。約束の期限は「月5日」だから1週間で消費されてしまう。
 そこで校長は「smileういんず」に泣きを入れる。なんとかもう一週間、続けてはもらえないかと。

 これがビジネスなら話は簡単だ。
「時給を2倍にするから一週間だけ頼む」
 それで通る場合は通る。教室に入る方も事情があれば事務的に断ればいい。しかしボランティアは違う。
 それでもなんとか受けてもらったとして、代理探しが2週間~3週間と長引けば、さすがに校長もタダ働きさせるわけにはいかず、講師として雇い入れることを考える。自分が受けなければ教室が空きっぱなしになると分かっていて、さて、ボランティア教師は決然とこれをはねのけることができるだろうか。


【この仕事、持続可能か?】

 かくして「smileういんず」の試みは追い込まれる。「一日4時間、月5日を上限」ならいいが、フルタイムの教員となればとてもではないが応じられない、そう考える元教員は、そもそもボランティアに加わることにさえ躊躇する。そのままずるずるとフルタイムに引きずり込まれたら、断れないことははっきりしているからだ。

 こうした取り組みは、何十年も前から文科省都道府県教委が予算を立ててすべきことだったのだ。そうすれば教員の負担も多少軽くなり、研修意欲も高まったはずだ。
 
 TeNYテレビ新潟よ、「smileういんず」の活動をもうしばらく追い、本質的な教員不足にどう対応していくか、私たちに知らせてほしい。