キース・アウト

マスメディアはこう語った

福岡県の学習塾が中学校の過去問題を収集し、テスト対策を行っていることが問題となっている。教師はテストづくりで手替え品替え、学習塾の分析から逃れようと算段をするが、塾も必死で追いついてしまう。この悪循環を断つために秘策を編み出した人たちがいる。超高度な問題づくりをしようというのだ。

(写真:フォトAC)

記事

 

塾「実績への企業努力」教員「問題作り替え限界」 塾で中学テスト過去問指導
(2023.01.25 西日本新聞

www.nishinippon.co.jp 福岡県内の学習塾で中学校の定期テストの過去問を収集、保管し、生徒に解かせる指導が広く定着していることが明らかになった。「高校入試の実績を上げる企業努力」「同じ出題を繰り返す学校も悪い」と主張する塾に対し、中学教員は「授業内容のうちテストで問うべき部分は毎年同じで、問題を作り替えるのは限界がある」と反発。「塾に月謝を払って過去問に取り組むのは、カネの力で入試を有利にするのと同じだ」と批判する。

(中略)

 塾側も良い指導法と手放しでは思っていない。九州の大手学習塾チェーン本部は、過去問を扱わないよう何度も通達している。「テストは正々堂々と受けるべきだ」と担当者。一方、福岡県内の塾経営者は「反則技だが、受験を勝ち抜くにはやむを得ない」と話す。

 中学の教員は憤りをあらわにする。福岡県内の公立中の40代教員によると、前年と似た問題文で選択肢の順番を入れ替えたら、そこだけ間違えた生徒がいたという。「過去問を丸暗記したとしか思えない」。本紙「あなたの特命取材班」に証言する。

 自らは塾に過去問を利用されないように、テストをなるべく作り替える。塾が問題を集めているのを知りながら同じ出題を続ける教員を「怠慢」だと感じるからだ。ただ、時間と労力の負担が大きいこともあり、完全に変えるのは難しい。
(中略)
 現在の学習指導要領は、主体的に取り組む態度など「学びに向かう力」の育成を求めている。だが、福岡県内の別の公立中教員(44)は、中学の授業内容や定期テストに加え、高校入試も知識偏重型から脱していないと実感するという。「塾が過去問指導を続ける背景には、なかなか変わらない教育現場の現状がある」と指摘した。 

【これが問題だったのか?】

 これはまったくの落とし穴だった。
 学習塾が過去問集めをしているなんて考えもしなかった、というのではない。過去問集めなんて当然であって、今さら問題になるような内容ではないと思っていたのだ。
 
 過去問の収集と分析・実施なんて私が学習塾の講師だった半世紀まえでさえやっていたし、私の勤めていた新興弱小学習塾でさえそうだったのだから、大手ならなおさら大掛かりにやっていたに違いない。いや学習塾でなくても、ちょっと気の利いた保護者ならお兄ちゃんやお姉ちゃんのテストを引っ張り出して、下の子にやらせるくらいは当然思いつくはずだ。
 そしてそうである以上、学校は同じテスト問題の使い回しなどということは絶対にしなかった。
 
 もちろん同じ教師がつくる同じ単元のテストで、記事にあるように、
「授業内容のうちテストで問うべき部分は毎年同じで、問題を作り替えるのは限界がある」
という事情もあってどうしても似通ってくる。
 それを手替え品替え、あの手この手で作り変えてくるのが教師の手腕であり、そうした教師側の変更を見越して予想問題を提示するのが塾講師の仕事だった。
 
 そもそも過去問の分析と予想問題の作成は塾講師の本業で、その部分がしっかりできなければ入試対策はできないし、過去問分析を中心とした試験対策が卑怯だというなら学習塾も予備校も存在できない。
 
 記事の中には、前年と似た問題文で選択肢の順番を入れ替えたら、そこだけ間違えた生徒がいたという部分があったが、その生徒は他の部分をすべて丸暗記で乗り切ったのだろうか? そこ以外はすべて前年と同じ問題だったのだろうか? ――そんなことはあるまい。もしほんとうに言ったとしたら、それは誇張か虚偽か、そもそもそんな教師が存在しないかのいずれかである。

【何が望みだ?】

 学習塾に過去問収集と分析・実施をやめろといっても辞めるはずがない。それが仕事だからだ。学校の教師に“いま以上に努力して塾に過去問利用をされないようにつくりかえろ”といっても限界がある。それは記事中に示した通りだ。
 ではどうしたらよいのか――。
 
 記事は答えを最後の部分で暗示的に示している。
 福岡県内の別の公立中教員(44)は、中学の授業内容や定期テストに加え、高校入試も知識偏重型から脱していないと実感するという。「塾が過去問指導を続ける背景には、なかなか変わらない教育現場の現状がある」と指摘した。
 要するに、現在の学習指導要領が求めている主体的に取り組む態度など「学びに向かう力」を問うテストを、毎回作成すればいいだけのことなのだ。
 見本はある。全国学力学習状況調査や最新の高校入試がしばしば示すアレである。
 
 たいへんだぞ! とりあえず、福岡の教師たちよ! 気合を入れていけ!