(写真:フォトAC)
記事
広島市の給食費未納額、2700万円に増加見通し 2023年度 再び教員を介して納付催促
www.chugoku-np.co.jp(2024.06.25 中國新聞デジタル)
広島市教委は25日、市立小や中学で2023年度の給食費の未納額が約2700万円に上るとの見通しを明らかにした。働き方改革の一環で徴収事務を学校から市教委に移し、前年度の32倍となった22年度を上回った。再び教員を介して納付を促す対応を余儀なくされている。
(以下略)
評
【24万円だった滞納が2700万円まで膨れ上がる】
学級担任が給食費徴収業務を行っていた時期は全市で年に24万円~199万円だった滞納が、市教委に移管したら2022年度は2044万円、23年度は2700万円にもなる見通しだとか。たまらず市教委は督促状を学校に送付し、日ごろ接する担任教師から渡してもらうことにした、という話である。
給食費が学級担任の手を離れたとたんに滞納を始める保護者の厚顔恐るべしという話なのか、児童生徒を言わば人質にとった学級担任の威力、恐るべしというのか、いずれにしろ元の鞘に納めた方がいいことは最初から分かっていたことである。学級担任としても給食費の徴収は保護の経済状況を知るまたとないチャンスで、取り扱うことのメリットも少なくない業務。だから戻されてもけっこう――ただし今が暇ならば、ということだ。
【先生たちに催促させるのは忍びないが、教委にできるとは思わない】
私は一時期、管理職として職員室の正面の席で仕事をしていたことがある。電話番も兼ねての管理職だから目の前に代表番号の固定電話があるのだが、そこでときどき保護者に電話して、給食費の督促をする学級担任の先生の姿を観ることがあった。それはほんとうに苦々しい体験だった。
教職は気高く尊い仕事である。それなのに大切な教育の従事者が、給食費ごとき下世話な話で、電話口で繰り返し頭を下げているのだ。払ってもらう給食費が、その人の懐に入るというわけでもないのに――。
だから市教委または市役所への業務移管は大いに歓迎すべきことだったが、市教委・市役所にできることではなかったようだ。どうせ市は給食費督促のための専従チームなどつくる気はない。市長は自らの公約を実現するための予算は使うが、職員が楽になるための予算などつける筋合いもない。とうぜん作業は滞り、滞納は増える。
【保護者に自主的に払わせる方法はない】
滞納が増えるということは、日々の給食の質が落ちるということだ。誰かが誰かの分を払わされているということでもある。
そうなると「滞納の家庭の子どもには給食を提供しなければいい、そうすれば自主的に払うようになるに違いない」という人が出て来るが、そんなことはありえない。
想像してみるがいい。配膳の時間、その子が食器を手にした瞬間に担任は「給食費を払っていないからキミの分はないよ。食器をカゴに戻しなさい」と言わなければならないのだ。できるか? よほど冷酷な神経をもって育ってきた人でない限り、そんなことは誰にもできない。パンや牛乳など数の決まったものは注文段階から減らすこともできるが、減らしたあとで飲んだり食べたりできなくなるのは給食費を払わない家の子ではなく、担任の先生である。教師は――というよりも誰がその場にいても、子どもに黙って、自分の分を差し出してしまうに決まっている。
やはりどうやったところで親に自主的に払わせる方法はなく、辛抱強く説得するか見守るしかない。
【学校の外に出しても出しきれないか、やがて戻ってくるもの】
給食費の徴収と同じように、教員の働き方改革で外部に出そうとしたものがまた戻ってきそうな気配がある。
さっぱりうまく行っていない部活動の地域移行も、外部コーチのわいせつ事件というニュースが流れたとたんに、「やはり学校の先生に任せておいた方がいいのではないか」という空気が広がろうとしている。
いじめや暴力といった生徒指導の案件は、学校でしないですぐに警察に任せるべきだという話もあるが、今の警察は人手不足で自転車盗ですら書類を預かるだけで本気で探してくれるわけではない。教師の働き方改革のために、警察官の大幅増員ひいては増税に、人々は応じてくれるだろうか? いや私としては警察官を増やすなら教員を増やしてほしい。
最近になって話の出てきているのは、学校医による不適切な検診の件で、これも「学校が引き受けるのではなく、検査項目の一覧表をつくって保護者に病院へ連れて行ってもらうべき」といった話になる。親たちに内科・耳鼻科・眼科・歯科などの予約を取ってもらい、仕事を休んで連れて行ってもらうという話だ。
親たちはいい(本当は良くない――できないから)、うまくすれば3日程度休むだけで「健康診断スタンプラリー」は終わる。辛いのは学級担任である。いつまでたっても検診を終えてくれない保護者に電話をして、繰り返し頭を下げて「検診に行っていただく」というたいへんな仕事が新たに加わる。全員分が揃わなければ書類提出もできない。
最期は結局、教師が仕事を休んで検診に連れて行く羽目になる。なぜ先生がそんなことをしなくてはならないのか――(答え)他にやる人がいないから、だ。
【新たに学校に「学級担任」を設ける】
教員の仕事はこんなふうに増えていく。家庭に返すべきだ、親がやるべきだという話になるたびに、事後処理というむしろ余計に面倒な仕事が生れ出て来る。やはりここは学校職員を増やすしか方法がない。仕事を減らしても、すぐに増えてしまうに決まっているからだ。
どう増やすかについては私に秘策がある。学級担任を雇うのだ。
中学校では新たに学級担任という職を増やし、給食費の督促も含めて学級事務全般、進路指導・生徒指導、キャリア教育を始めとする追加教育全般、特別な教科道徳、総合的な学習の時間、特別活動のすべてを担当してもらい、朝の2時間をそれらの授業にあてる(週10時間程度のコマ数)。
学級担任は教科の授業を持たないので、午前10時以降は給食と清掃、帰りの会以外に生徒の指導をせず、事務仕事は5時までに済ませ帰宅する。教科指導は従来のように教科担任が行うが出勤は10時からとし、代わりに部活動をやってもらって19時の退勤とする。
小学校もそれに準じる学級担任とするが、教科担任は中学校ほど厳密に分ける必要はなく、一クラスの全教科をひとりの教科担任(国語・算数・社会などの“教科”を教えるという意味での教科担任)で賄うようにする。教科担任はその代わり学級事務や生活指導はしなくていいようにする――と、そんな方法しかないだろう。
かなり優れたアイデアだと思うが、金がない以上、いつまでも絵に描いた餅のままなのだ。