キース・アウト

マスメディアはこう語った

中央教育審議会が答申を出して教員の働き方改革や待遇改善・人材確保などについて新たな提案をした。しかし中身は言い古されたことばかり。文科省もそろそろ教員や教育の質が下がってもかまわないと思い始めているらしい。

(写真:フォトAC)

記事

 

教審が教員の働き方改革の答申――校務DXも含む改革を求める
(2024.08.30 教育とICTonline) 

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 文部科学省は2024年8月27日、中央教育審議会中教審)の総会を開き、盛山正仁文科大臣に『「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について』を答申した。これは、2023年5月に同省が中教審に諮問した3つの事項について、特別部会を設けて検討してきた結果だ。
(中略)

教育委員会にDXの推進を求める

 まず「学校における働き方改革の更なる加速化」では、教員の時間外勤務を月80時間以内に抑えることを目標とし、各教育委員会が教員の働き方改革の進捗状況を「見える化」し、PDCAサイクルを通じて継続的に改善していく仕組みが必要と指摘する。勤務時間内に適切な休憩を取れるよう、昼食時間の交代制導入や、業務終了から翌日の業務開始までに一定の時間を確保する勤務間インターバルの導入を求めた。

 働き方改革の実現方法として、ICT活用の必要性も指摘している。教育委員会と学校は「ICT環境整備を進めるとともに、GIGAスクール構想の下での校務DXを加速する必要がある」と訴える。特に教育委員会に対しては、汎用クラウドツールの活用、ペーパーレス化、日常的な情報交換のオンライン化などによるデジタル化を推進するよう、強く求めている。

 「学校の指導・運営体制の充実」としては、教職員定数の改善と配置の再検討、若手教員への支援強化、学校内外の連携機能を強化するための「新たな職」の創設、支援スタッフの拡充などを提言した。さらに、社会人の学校への参入などにより、多様な専門性を有する教職員集団の形成が必要だとして、参入しやすくなる免許制度の検討も求めている。

教員給与の調整額は10%以上に
 3つめの「教師の処遇改善」では給与体系や職種にも踏み込んだ。給特法などにより、教員の給与は一般行政職に対して約7%の優遇措置があったものの、今では優遇分はほとんどなくなっている。こうした現状を踏まえ、「教職調整額の率は少なくとも10%以上とすることが必要」だとした。これに加えて、学級担任の教員には義務教育等教員特別手当の額を加算すること、管理職について手当を改善することなども提言している。
(以下略)

中央教育審議会中教審)】

 中央教育審議会(略称:中教審)は部科学大臣の諮問機関として文部科学省内に設置されている審議会である。ここで出された答申がやがて具体化して現場に降りてくる。多く場合は「答申」の段階で取り返しがつかなくなっているので、もっと早い時期に影響力を行使して行かなくてはならないのだが、現役の教師たちは忙しすぎて政府の動向など見ていられない。答申どころか文科省の指示・政策として具体的な形で現場に降りて来て、初めて内容知って驚くのが普通だ。それでは追い込まれるのも無理ない。

 もっともさらに言えば、答申どころか文科大臣の「諮問」の段階で、何が諮られているのかを調べておかないと、文科行政の将来が見えてこない。そもそも諮問内容は文科省がつくり、資料も添えてくるから、委員の話し合いにもすでに傾斜がかかっているのだ。行政の素人である委員たちができもしない答申を出さないように、最初から制御されているのである。

【教師が傷んでもかまわない、教育の質が落ちてもかまわない】

 そういった知識を頭にいれてからか今回の答申をみると、そこには二本の強い意志が原らいていることが分かる。
 ひとつは、「大幅な予算増、大量の人員増は絶対に行わない」ということ、もうひとつは「教育内容は増やしこそすれ、絶対に減らさない」ということである。その点で文科省の姿勢は一貫してる。
 例えば、
働き方改革の進捗状況を「見える化」し、PDCAサイクルを通じて継続的に改善していく仕組みが必要と指摘する。
 予算的・人員的・内容的に教員が楽になる政策は打たないが、強制によって時短を果たすという強い宣言である。いわばアクセル全開で走っている最中にスピードを緩めることもせず、アクセルも踏みっぱなしで、強力なブレーキをかけるということである。そのために「学校が、教員が傷んでもかまわない」と、口にこそ出さないもののその意図が見て取れる。
 さらに言えば文科官僚は絶対に口にしないが、すでに何年も前から、「そのために子どもたちの教育の質が落ちてもかまわない」とさえ彼らは思うようになってきている。
業務終了から翌日の業務開始までに一定の時間を確保する勤務間インターバルの導入なんて強制的にやればできないことではないが、その代わり教材研究や授業準備はおろそかになり、授業はおざなりになる。児童・生徒・保護者とのきめ細かなやりとりや本質的な指導はできなくなる。しかしそれも仕方ないじゃないか――文科省はそう思い始めているのだ。

 教育は一面で社会福祉であり、他面で人材育成である。学力や学歴がなくて社会の底辺に沈みがちな弱者を何とか支えて行こうというのが昭和までに教育だったが、底辺に落ちた子たちは生活保護やいずれはベーシック・インカムで救えばいいのだ。人材育成については、一部のエリートがしっかり働けば国は動いて行く。ゲイツジョブズやマスクが1000人もいれば、残りは馬車馬のように働く奴隷たちでかまわない。
 だって世論や国会議員たちは「あれもやれ、これもやれ」とうるさいのに、教育のために追加で払う金はほとんどないのだ。

【ICTに劇的な効力はない】

 働き方改革の実現方法として、ICT活用の必要性――これも繰り返し言われてきたものだが、小中学校教員の2割弱は1カ月の時間外勤務が80時間以上になる状況を劇的に変えるものではないことは明らかだ。もちろん通知票や指導要録の所見欄をあたりさわりのない文章で生成AIに書かせ、試験問題も自動生成で作成して採点集計も自動化するとか、生徒指導もチェックリストにして、項目をチェックするだけで、「自宅謹慎」「停学」「退学」「刑事告発」「文書による戒告(もちろん文章はAIが書く)」などが自動的に決まって執行されるとなれば別だが、今のままではICTも「焼け石に雀の涙」みたいなものだ。

【あとは単なる打ち上げ花火】

 最後に出てくる、
「学校の指導・運営体制の充実」としては、教職員定数の改善と配置の再検討、若手教員への支援強化、学校内外の連携機能を強化するための「新たな職」の創設、支援スタッフの拡充などを提言した。さらに、社会人の学校への参入などにより、多様な専門性を有する教職員集団の形成が必要だとして、参入しやすくなる免許制度の検討も求めている」
等々はいつもの打ち上げ花火。「やりますよ~」と言って期待をさせて「できませんでしたよ~」で終わるいつもの類型である。
 ちなみに教員給与の調整額は10%以上については、私はやると思う。これだけ大騒ぎをしておいてやらなければ、現役教師の意欲はベタ下がりに下がってしまうからである。
 教師は傷んでもかまわない、しかしいなくなるのはやはり困るのである。