キース・アウト

マスメディアはこう語った

名古屋市教育会問題、および校長教頭などへの昇任人事問題が、ここにきてバタバタと解決に向かう。薄暗い部分に光が当てられ、さまざまなものが透明になるが、だからすべてがうまくいくとは限らない。

(写真:フォトAC)


記事

 

校長などへの昇任選考 「校長推薦」を廃止し「自薦方式」に 市教委の金品授受問題を受け 名古屋市 
(2025.01.20メーテレ

www.nagoyatv.com

 

名古屋市教育委員会が教員団体から金品を受け取っていた問題を受け、教育委員会は校長などへの昇任の選考で必要だった「校長推薦」を廃止し、「自薦方式」に変更しました。
名古屋市教育委員会は教員団体から校長などの推薦名簿が提出される際に、現金や商品券を受け取っていました。
(以下略)

【問題の所在】

 いくつもの問題が複合的にあるため、継続的に見ていないととても分かりにくい事件である。簡単に整理すると、2024年2月、「名古屋市教育会って何? 教育委員会と何が違うの?」といった主婦の素朴な疑問を調査した毎日新聞が、次のような事実を掴んだ。

  1. 名古屋市には「名古屋市教育会」という100年以上の歴史を持つ、教職員を中心とした任意団体があり、担任教師を通してチラシを配布。広く保護者からも寄付(一口100円、5口以上)集めている。
  2. 教育会はその資金を使って教員の研修や部活動、PTA活動の助成などを行ってきた。

 

 さらに調べると問題点も多く、代表的なものとして以下が挙げられる。

  1. そもそも任意団体である教育会の寄付を、学級担任を通して行っていいものか。たとえチラシに「寄付は任意」と書いてあっても、担任を通して渡されたものに保護者は応じざるを得ない。
  2. 収入が2,900万円しかないのに、事務運営費が1,000万円以上のあり、その大部分は3人の事務担当者の給与等である。3人は常に校長OBで構成されており、元校長の天下り先と考えて間違いない。
  3. 教育委員会が行う校長・教頭などへの昇任審査に際して、教育会は推薦名簿とともに教育会費から多額の金品を渡すことが通例となっている。そこに贈収賄の可能性はないか。

【調査検証チーム報告書】

 特に3は刑事事件にも発展しかねない大問題だったが、名古屋市教育委員会が調査検証チームをつくって調査した結果、推薦名簿(または候補者名簿)を作成して提出する教員団体(大学の卒業年次会や同窓会、その他)は86団体、その中で金品を提供していた団体が74団体もあり、ほとんどが人事資料または慣例として提出しただけで、自分たちの名簿が人事に反映すると考えることもなく、金品も口利きまたは付け届けといった意味合いはない。ただ教育委員会で人事を担当する教職員課の主事たちをねぎらい、激励する程度の意味しかもっていなかった、その程度のものであることが明らかとなった。教職員課の人事担当はほとんどが学校から出向している元校長や教頭だから仲間をねぎらう、そんな意識が働いていたようである。
 この調査結果は名古屋市教育委員会のサイトに中間報告最終報告としてアップロードされており、かなり面白いものなので興味のある方は読んでみるといいだろう。
 もちろん教職員課の主事たちの待遇は公費をもって改善すべきものであり、こうした金品の授受は一般に理解しがたいものだから廃止すべきである――それがこの調査報告の結論のひとつである。

【問題の解決】

 問題点の1についても、学校を通しての寄付募集は廃止することが決まった*1。しかし学校を通さずに2,000万円以上の寄付を集めることなどとうていできるはずもなく、最新のニュースでは名古屋市教育会自体の解散も決まったようである*2。これで問題点の2も解消したことになる。

 今日取り上げた記事の『校長などへの昇任選考 「校長推薦」を廃止し「自薦方式」に』は以上の問題点とは直接関係ないが、新たな昇任人事制度の構築に向けた提案のひとつとして、「最終報告」が取り上げたものである。
「(現在は)制度上、校長が推薦をせず、又は否定的な所見を記載した場合に、該当者が昇任等候補者として名簿登載されず、又は不利な評価をされる仕組みになっていること」
 そこに問題があるから是正しろという話である。校長が抵抗するような昇任でも、本人が希望するなら候補者名簿にはいちおう入れろ、ということだ。そのことの是非は別の機会に話そう。

【新たな問題】

 ただこの改革案、さまざまなところに問題を残すことになるだろう。

  1. 昇任人事を自薦として、果たして自ら手を挙げる人物が必要数そろうだろうか――これだけ教職不人気の中で、その頂点に立つことが幸せとも思えない。
  2.  自ら手を挙げる人がゼロということはあり得ない。しかしこんな状況で手を挙げる教師はどんな人たちなのか。もちろん志の高い、立派な教師が多いことは前提であるが残りは――。

 ちなみに東京都教育委員会は2023年度から昇任試験において自薦方式を廃止し、推薦方式に変更した。本人の希望に従って待っていたら、枠が埋まらないからである。さて名古屋、どうなることやら。