キース・アウト

マスメディアはこう語った

人も増やさず仕事も減らさないまま、文科省は教員の労働時間だけを強制的に減らす方策に出た。傷ついた馬は声も立てずに死んでいく。優しい馬よ。私はお前が死ぬのを見に来よう《マリー・ローランサン》

(写真:フォトAC)

記事


残業縮減計画、公表義務付け 教員の働き方改革推進―給特法改正案

(2025.01.24 時事通信www.jiji.com


 公立学校教員の働き方改革や処遇改善を図る「教員給与特別措置法」(給特法)改正案の概要が24日、判明した。全ての教育委員会に対し、教員の残業時間と縮減目標を盛り込んだ計画の策定と公表を義務付ける。残業代の代わりに基本給の4%を上乗せ支給している「教職調整額」については、段階的に10%に引き上げると規定する。2月上旬の国会提出を予定している。

(以下略)

 目算もないのに「調整額13%アップ」とぶち上げて後に引けなくなった文科省と、働き方改革の進捗状況をみながら10%までなら上げてもいいよ(改革が進まないなら途中で止めるよ)と冷酷な財務省が折衝を重ねた結果、財務省は「出来高漸次上昇案」を撤回する代わりに文科省に13%を10%で我慢させ、さらに目に見える形で働き方改革を進めることを文科省に認めさせた(改革が進まないとまた教員が残業代を出せとか騒ぐから)ということだろう。それで両省の手打ち式は終わった。

 

 そこで文科省が出してきた「目に見える改革」が「教員の残業時間と縮減目標を盛り込んだ計画の策定と公表を義務付ける」というアイデアだ。言っておくが人を増やさず仕事も減らさず、教師の殺人的に多忙な状況は放置したまま、とにかく教育委員会と校長を叩いて就業時間外の教員を学校から強制排除する、そういうことである。

 

 私はドストエフスキーの『罪と罰』、第一編第五章に出て来る馬車馬の話を思い出さずにはいられない。
 夢のなかで幼少期に帰った主人公ラスコーリニコフは、酔った農夫が痩せた雌馬の引く馬車に次々と人を乗せ、それを走らせようと躍起になっている場面に出くわす。周りに集まった人々もみな酔っているので農夫を煽り、一部の男たちも笑いながら鞭を持ち出して馬を打つ。興奮した農夫は、
「オラの馬だ、オラのもんだ、好きにしてやる」
と叫んでさらに鞭打つが、馬は進もうとしてまったく進めない。そのうちに苛立った農夫は長柄の棒を持ち出して馬を叩き、それでも動かないとみると金梃子を引っ張り出してそれを馬の背に叩きおろす。馬はたまらず大きな音を立ててその場に倒れてしまう。子どものラスコーリニコフはその馬に取りすがって泣くのだ。

 

 偶然だが今日、「AERA with Kids+」に『「小学校の平日1日の授業時数は過去最多」 休み時間、放課後が奪われる「詰め込みすぎカリキュラム」の問題点とは』という記事が出ていた。私がいつも言っているように、教師の多忙は行事や部活など周辺状況のせいではなく、教師の本来業務が増え続けてきた結果である。そのことをきちんと説明した記事で、是非とも読んでいただきたい。dot.asahi.com