(写真:フォトAC)
記事
「ブラック職場」と言われるのになぜ? 新人先生たちの動機から見えた、教員不足解消のヒント
(2025.04.08南日本新聞デジタル)
あなたは、どうして先生に?。鹿児島県内の公立学校では今春、新規採用約540人が教職員としてスタートを切った。教員不足が深刻な中、どうすれば担い手を確保し続けられるのか。1日の辞令交付式に臨んだ新人たちに志望動機を聞くと、ヒントが見えてきた。
「恩師に憧れたから」。会場で多く聞かれた声だ。
高山中学校(肝付町)で保健体育を担う西丸知良さん(23)が教師を志す契機となったのは、柔道を続けるかどうか迷っていた中学時代、指導者がくれた「前途洋々」の言葉だ。目の前の霧が晴れ、将来に希望が持てた。「時には子どもの前に立ち、隣に座って一緒に考え、後ろからも支えられる先生になりたい」と力を込める。
(以下略)
評
いまどき教員不足解消の新たなヒントが残っていたのかと、客寄せパンダみたいな派手な見出しに魅かれて記事を読んだが、
- より働き方改革を進め、
- 採用試験の年齢制限引き上げなどによって門戸を広げ、
- 教職に興味のある人に学校を見てもらう機会を増やし、
- 若年退職の元教員にはブランクを補う講座を用意する
と、これまで文科省や各自治体教委が切って来たカードを、具体的な発言とつなげて羅列しただけの記事。目新しい方策があるわけではない。しかしだからと言って記事が無意味なわけではない。
なぜならここには、
「ブラック職場」と言われるのに教職を選んだ新人教員たちの、希望に満ちた瑞々しい声が満ち溢れているからだ。
「時には子どもの前に立ち、隣に座って一緒に考え、後ろからも支えられる先生になりたい」
看護師の母親から「どの仕事も大変だよ。大丈夫」と背中を押された
「子どもの良さを引き出して伸ばしていける先生になりたい」
教職に関するマスコミの記事を読めば、相変わらずの教員不祥事とボロボロに疲れた教員の姿、学級崩壊・学力崩壊・精神崩壊。もはや教職はFランク大学の学生の溜まり場――と、悪態の限りが尽くされている。しかしその職場に目を輝かせて就こうとする若者がいるのだ。
考えてみると教員という職業はよくできている。平成不況のような就職難の時代には人柄まで勉強してしまうような優秀な頭脳を持った若者が集まり、現在のように売り手市場で求職者がいかような職も選べる時代には、真に人柄のよい若者が集まって来る。
巷間いわれているように、教員は東大・京大を出なくては務まらない仕事ではない。院卒である必要もない。
教職は一種の職人芸だからよほど才能のない特殊な人でない限り、10年誠実に取り組んでいれば誰でもがひとかどの教師になれる。あとはその10年を、周囲や制度がどう支えて行くかだけなのだ。