キース・アウト

マスメディアはこう語った

春休みの先生は死ぬほど忙しいと言われるが、「この程度のことだったの?」と馬鹿にされるような話が現職教員によって語られている。

(写真:フォトAC)

記事

 

「春休み、学校の先生は何してる?」新学期の準備に追われる“10日間の戦い”【現役教師に聞いた】

(2026.03.25 AllAboutニュース) 

news.allabout.co.jp

 2025年度が終わり、進級・進学の季節が近づいてきています。

家庭で新年度の準備が進む一方で、学校の先生たちはどのような春休みを過ごしているのでしょうか?
(中略)
◆掃除、新年度の教材準備、研修……1年で最も忙しい10日間
春休みは、3月の修了式を終えてから入学式までの約10日間(土日を除く)。私はこの10日間を前半、後半に分けて作業を進めています。

最初の5日間は教室と職員室の掃除です。1年間使った教室は、毎日子どもたちと掃除をしているとはいえ、思っている以上に汚れています。

(中略)
 例えば大型ディスプレイの裏、黒板の上などには意外とホコリがたまっているので、時間をかけてしっかりと掃除しています。靴箱やロッカーなどに貼られている名前シールもこのタイミングできれいにはがします。

「教室の掃除に5日間も?」と思われるかもしれませんが、次にその教室を使う先生と子どもたちに気持ちよく使ってもらうための大事な仕事です。

また、受け持つ学年が変わると職員室でも先生たちの席替えが発生するので、身の回りを整理・掃除します。

そして、後半の5日間で次の学年の準備に取り掛かります。
(以下略)

 とりあえず、この文をどう評価したらいいのか分からない。学校の様子は地方によってずいぶん違っているところがあるから大阪府では実際この通りなのかもしれないが、1年で最も忙しい10日間と小見出しにあって実際にはその半分の日数を教室と職員室の掃除に当てていると聞けば、普通の人だったら、
「これで1年で最も忙しい10日間なら、日ごろはどんだけヒマなんだ?」
ということになりかねない。実際にコメント欄にはそうした記述も来ている。ほんとうのところは大阪府の先生に訊いてみるしかないが、これといった知己がいるわけでもない。仕方がないので手持ちの情報で推し量れる分だけは考えてみよう。

【春休みは多忙と言っても3月中はほとんど仕事がない?】

 さて、今年の大阪府内の小学校の卒業式は小学校が3月18日(水)、中学校が3月13日(金)となっている*1。 そこから土日を含んで小学校は5日後、中学校は11日後の3月24日(火)が修了式(3学期末なので“終了式”という言い方になる)。在校生はその日まで授業があるので、卒業学年の担任以外は終了式のその日まで、いつもと変わらぬ日常が続く。

 入学式は大部分の小学校が7日(火)、中学校は3日(金)となっている。1学期始業式は小中ともに8日(水)*2
 したがって引用記事の中にある、
春休みは、3月の修了式を終えてから入学式までの約10日間(土日を除く)。
は今年の場合、3月25日(水)~4月6日(月)までということになる。3月中に土日が1日ずつ。4月も土日が1日ずつなので、3月も4月も勤務日はちょうど5日ずつだ。

 記事では、
私はこの10日間を前半、後半に分けて作業を進めています。/最初の5日間は教室と職員室の掃除です。
ということなので、簡単にまとめると3月中は掃除で費やして、4月に入ってからの5日間に、割愛した部分にある細かで雑多な仕事をするということなのだろう。

 単純に考えれば、新年度あれほどたくさんの仕事をするなら、3月中に手を付けておけば良いではないかということになるが、そうはいかない部分もある。新年度に転入してくる先生を差し置いて、勝手に教材や遠足先を決めるわけにもいかないし、自分のクラスの教室準備なども進めるわけにはいかない。学級担任を含めて校務分掌は4月1日に校長から委嘱されるもので、「その日まで分からない」といった建前があるからである。
 また実際に3月末に担任の急な変更があったり、学級数そのものが減ったり増えたりといったこともあるので、4月を待たないとできない仕事もたくさんあるのだ。
 しかし――3月中は、ほんとうに掃除以外にやることはないのか?

【3月中にやっておくべき仕事も山ほどあるだろう?】

 学級担任が誰になるかは分からない、あるいは分からない建前であっても、来年度の児童数は分かるはずだ。2年1組が何人で、2組が何人かということも、夏祭りの参加者ではないのだから分かっていなくてはならない。
 そうなると机やいすの数も合わせなくてはならない。旧2年1組は30名だったが新2年1組は35名だということになれば、5名分をどこからか持ってこなくてはならない。それって、新担任が近くの教室から勝手に持ってくればいいというものではないだろう。だれかが数を集計し、「どの教室からどの教室へ何台移送」といったふうに計画を示さなくてはならない。いつやるのか?

 教室で使う大型の三角定規だのの備品。きちんとそろっているかどうかは誰が確認し、誰が補充するのか。天井照明などの不備はいつも通り副校長や教頭に言えばいいのか? 春の副校長や教頭は死ぬほど忙しいぞ。4月を待って、新担任が自分で用意するというのも変ではないか。
 細かなところでは、入学式の大看板。傷んでいたら修繕しなくてはならないだろう。年度が「令和7年」のままになっていないか? 誰が、いつ、書き直すんだ? 新入生の教室の飾りつけも、式場の準備も、みんな4月のになってからでいいのか?

 引用記事では、
後半の5日間で次の学年の準備に取り掛かりますとあってやるべき仕事の中に、時間割、週案、学年だよりの作成があるが、担任がそれぞれつくる時間割、同じ曜日の同じ時間に、5クラス同時に理科室を使うようなことになったらどうするのだ? 理科室や家庭科室などの特別教室の使用は、予め係が割り振らないと進まない。それも4月に入ってからの仕事なのか? 

 そう考えると3月中にやっておかなくてはならない仕事は山ほどある。校務分掌の引継ぎ書類の整理、各種報告書の作成、指導要録(義務化されている児童生徒個人の記録)の記入や確認はどうするのだろう?

【大阪は特別だという話かもしれない】

 繰り返しになるが学校の様子は地域によってかなり違う。もしかしたら大阪の場合は、3月~4月に教育委員会から大量の人員が派遣されて年度収め・新年度始め仕事を代行してくれるとか、入学式・始業式をやった後に「年度始め休業」が10日間ほどあるとか、そんな事情があるのかもしれない。そうでなければ三月末の貴重な5日間を、掃除だけやって過ごしていられるはずがないのだ。

 大昔のことになるが一度、大阪からの転入生を受け入れたことがある。転出元の学校からは後日、指導要録の写しが送られていたが、私たちがコメ粒ほどの小さな文字でびっしり書き込んでいた何か所かの所見欄が、すべて「特記事項なし」のゴム印だったのには驚いた。
学校事務に対する基本的な考え方が違うのだ。
 今でも同じかどうかは分からないが、大阪に全国を代表させてはいけないのかもしれない。

【ちなみに】

春休みが教員にとって1年で最も忙しい10日間というのは、さすがに私でも正しくないと思う。敢えて言えば「夏休み・冬休みといった長期休業の中で、最も忙しい10日間」ということだろう。本当の忙しさは、4月から始まり大型連休まで続く。そのために私は、敢えて3月末には休みを取ることにしていた。

 今年ならさしずめ今日明日(3/28~3/29)二日間に土日出勤して、死ぬほど働いて仕事を終え、30日(月)・31日(火)と年休をとるわけだ。休日出勤手当があるわけでも代休があるわけでもないのに休日出勤して、10時間以上も働き、その分を振り替えて年休で体を休めるーー他の職種ではあまりないことかもしれないが。