キース・アウト

マスメディアはこう語った

職員室盗聴:パンドラの箱は開いた。子どもたちから学校を守らなくてはならない時代が来たのだ。(2022.11.29 追記あり)



記事

 

タブレット端末に職員室での会話が録音 生徒ら不登校に 山口
(2022.11.17 NHK

www3.nhk.or.jp

山口県岩国市の公立中学校で、生徒が置き忘れたタブレット端末のアプリに職員室での教諭どうしの会話が録音され、会話の内容を知った生徒の1人がその後、登校していないことがわかりました。
岩国市教育委員会は「子どもたちなどに不安を与え、大変申し訳ない」と陳謝しました。

 

岩国市教育委員会によりますと、先月31日、市内の公立中学校で複数の生徒が学習用のタブレット端末を教室に置き忘れているのに教諭が気付き、職員室の机で一晩、保管したということです。

 

このうち1台で録音アプリが起動していたため、職員室での教諭どうしの会話が録音され、教諭はそのことに気付かないまま、生徒に返却しました。

 

録音された会話には、生徒の生活指導に関する情報や生徒に対する教諭の個人的な感情などが含まれていて、返却された生徒は録音されていることに気付き、複数の同級生に音声データを送信したということです。

 

その後、データの内容を知った生徒の1人が今月上旬から登校していないほか、会話が録音されていた教諭の1人も出勤していないということです。

学校側は、音声データを持っていたり、録音された会話で名前が出たりした生徒全員の自宅を訪ねて謝罪するとともに、データを削除したということです。

 

岩国市教育委員会の守山敏晴教育長は記者会見で「子どもたちや先生、地域の方に不安を与えたことを大変申し訳なく思う」と陳謝したうえで「どの学校でも起こりうる事案なので、タブレット端末の使い方の指導を徹底するとともに、教諭についても言動を気をつけるよう改善していく」と述べました。

 NHKですら全国放送にするニュースなので、すでに様々なコメントが出そろっている。
 多くが「これをやられたらかなわん」という感じで学校に同情的だが、
「教員の人権感覚の問題かもしれません。(中略)聞かれると、ひどく傷つけるようなことを会話しているのだとしたら、それは本当にいいのでしょうか」(教育評論家:妹尾昌俊)
とか、引用記事の岩国市教委の森山委員長の、
「教諭についても言動を気をつけるよう改善していく」
とか、教師の発言を問題視する見方も少なくない。
 状況を考えると、「どんな場合も陰口はいけません」とか「陰口にも程度があるでしょ」とかいった極めて道徳的な内容で、問題解決とは程遠い話だという気もするが、“子どもの心は地球より重い”と考える人たちが、常に一定数いることは前提としなければならないだろう.

【いったい何が起きたのか】

 学校で子どもたちの使うタブレット端末に、どんな機能があるのか知らないので何とも言えないが、少なくとも私のスマホiphone)で録音をしようとしたら、画面をタップして電源を入れ、顔認証のあとで上にスワイプしてホーム画面を表示させ、録音アプリ(ボイスメモ)のあるページに移って、アプリをタップした上で録音ボタンを押さなければならない。同じくらいの段階があるとしたら偶然録音が始まる可能性は極めて低く、やはり生徒が録音状態で放置したのだろう。
 しかもタブレット端末が職員室に運ばれるまで、ほとんど無音の状態が長く録音されていたはずで、それを4時間に及んで最後まで聞いた執念も理解できない。

 

 そんなところから生徒の意図的な盗聴を疑う声も多いが、たとえ盗聴であっても学校や教委が公表して本人や保護者に謝罪を求めることはないだろう。学校で起こったことは学校が責任を負うことで、世論はほぼ一致しているからだ。学校も岩国市教委もすでに謝罪してしまっている。この問題は学校の責任として終わる。
 ただし忘れてはいけない。今回の事件の突きつけるものはあまりに大きいからだ。

【悪のファーストペンギンたち】

 世の中には、ひとりの勇気ある先駆者によって行われたことが、あっという間に社会に広がることがある。いまテレビドラマでも評判の「ファースト・ペンギン」である。

 

 1971年、ある未婚の女性が新生児の遺体をコインロッカーに隠すという方法に気づいた。そして実行する。するとこのやり方はあっという間にブームとなり、コインロッカーベイビーは全国で発見されるようになる。村上龍はこれを題材に「コインロッカーベイビーズ」という小説まで書いた。

 

 21世紀が目前となった1999年、高齢者の家に「オレ、オレ」と言って電話をかける極めてユニークな詐欺犯が出現した。警察は注意喚起の必要から詳しく手口を紹介したが、それをその通り実行する輩があとを絶たず、20年以上たった今日も続いている。
 いずれも先駆者の勇気ある行動から始まったものだ。

 

 今回、故意か偶然か、学校の端末によって職員室の盗聴ができることが明らかになった。そのファースト・ペンギンのあとを、目つきの悪いペンギンたちが次々と飛び込んでいく。

【探せば隙は山ほどある】

 もちろんしばらくの間、教室に置き忘れたタブレットはひとつひとつ電源が落ちているか確認され、職員の声の届かないところにある専用のケースに入れられ、保管されるだろう。管理がだらしなくなるまでの間は。
 しかし毎朝、持ってきた生徒から預かって職員室に保管している個人のスマホはどうか? いちいち電源が切れていることを確認して保管しているだろうか? 録音機能は働いていないかどうか? 毎朝のことだが。

 

 あるいは教師に敵意を持つ生徒が、机の中においた学校タブレットで辛抱強く不適切発言の出るのを待っている可能性も考えなくてはならない。まさか子どもがそんなことを、と考える人は、2019年に東京都町田市の都立高校で起こった事件を忘れてしまった人だ。その程度のこと、子どもはすぐにも行える。

kite-cafe.hatenablog.com


 生徒が生徒を盗聴する可能性についても留意しておかなくてはならない。
 休み時間、女の子が集まりやすい場所に置き忘れた男子のタブレット、もしかしたら意図的に置かれたものかもしれない。それで録音されたのが自分の悪口だったら自業自得でガッカリすればいいだけだが、他の子の悪口や秘密の暴露だったらどうだろうか? 面白い使い方ができそうだ。

 

 国は児童生徒のプログラミング学習に力を入れているが、いまに天才的なハッカーが生まれてくる。現在だけでも全国に323万人もの中学生がいて、その中の323人は1万人にひとりという逸材だ。その子たちが学校のサーバーに繋がったタブレットで遊んでいる。もちろん全員が良い子とは限らない。大丈夫か?

 

 いや、学校貸与の端末からファイヤーウォールを突破して、友だちの成績や生徒指導案件を盗み出すくらいの技量の子の誕生は、政財界にとって望んだり叶ったりかもしれない。もともとそれが目的だった。
 苦労したり責任を取ったりは、校長をはじめとする学校や地方自治体、そして文科省がやってくれるだろう。

追記(202.11.29)

newsdig.tbs.co.jp

「衝動が抑えられなかった」 女子中学生の着替えを盗撮 男子生徒が学習用タブレット端末で 愛知

やっぱりね。また教委と学校が謝らなくちゃイカン。