どうやら大阪地裁はブロンドやブルネットの外国人留学生でも高校が黒く染めさせることを認めたらしい――という誤報まがいの記事が出た。

 たとえ地毛であっても赤っぽい髪は黒く染めなくてはならない。
 そんな恐ろしい判決が大阪地裁から出たらしい。
 これで大阪府内の高校は金髪や赤毛の留学生を受け入れることが難しくなった。
 しかしそんなことがあるのだろうかと、関西テレビの視聴者は訝るだろう。
という話。

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(写真:フォトAC)
 

記事

 地毛なのに”黒染めを強要された” 女子生徒が大阪府を訴え 
「指導に違法性はない」と判決

(2021.02.16 関西テレビ

www.ktv.jp


大阪地裁は「教師らは地毛が黒髪だと認識し指導するなどしていて、違法とは言えない」とした

通っていた府立高校で茶色の地毛を黒染めするよう強要されたとして元女子生徒が大阪府を訴えていた裁判の判決で大阪地裁は頭髪指導については「違法性はない」と認定しました。

訴えによると大阪府立懐風館高校に通っていた女性(21)は、生まれつき茶色っぽい髪の毛で、中学校で黒染めを強要された経験があるため、入学するにあたり、保護者が高校側に配慮を求めていました。

しかし、高校の教員は女性に対し、髪を黒く染めるよう繰り返し指導。

女性は頭皮に痛みが出るほど何度も黒染めして登校しましたが学校側から「黒染めが不十分だ」などと言われ続け、2年生の9月から不登校になったということです。

また、3年生になり、学校に戻ろうと面談に行くと、出席名簿から女性の名前が消され、教室から席が無くなっていたとということです。(下線部は原文のママ)

女性は「生徒指導の名の下の『いじめ』だ」として、大阪府に約220万円の損害賠償を請求。

これに対し大阪府は…

大阪府教育委員会・向井正博教育長(2017年)】
「学校側は生まれつき黒髪であったことを前提として指導したということ」

府側はこれまでの裁判で「女性のもとの髪の色が黒いことを教師3人が髪の根元を見て確認している」などと主張。

名簿から名前を消したことなどについては「不登校状態が目立たないようにした」として訴えを棄却するよう求めていました。

16日の判決で大阪地裁は黒染めの指導について「教師らは女性の髪を直接見て地毛が黒髪だと認識し指導するなどしていて、違法とは言えない」としました。

一方で、学校が名簿や席を排除したことについては、「不登校の状態にあった女性の心情に配慮したものと言えず、裁量権の範囲を逸脱し違法」として大阪府に慰謝料などとして33万円の支払いを命じました。

判決を受けて学校の校長は…
(以下略)

 【「タイトルに誤りがあっても記事を読めばわかる」という悪質】

 マスコミはしばしばウソではないが真実でもない記事を平気で世に送り出す。その手法はさまざまだが、引用した記事はタイトルに詐術を施した点で特に悪質だ。

 毎日マスメディアから排出されるニュース記事が何千あるか知らないが、おそらくそのすべてに目を通している人はいないだろう。たいていは見出しにさっと目を通して世の中の動向を感じ取り、必要なものだけを拾い上げて丁寧に読む、そんなやり方をしているにちがいない。テレビだったら関心の薄いものはぼんやりと聞き流し、興味のあるものがあれば本腰を入れて視聴する、そういうものだろう。

 したがってタイトルで印象を操作されると間違ったものでもそのまま記憶され、定着してしまう、だから厄介なのだ。その場合、「本文をしっかり読めばわかる」「キャスターの話をしっかり聞けばわかる」は言い訳でしかない。

 そこで引用した記事のタイトルだが、
『地毛なのに”黒染めを強要された” 女子生徒が大阪府を訴え 「指導に違法性はない」と判決』
 これを読んで人は何を感じるだろう? 特にクォーテーションマーク(“”)の位置が気になる。
 クォーテーションマークは会話や引用を示すためにつける符号だから「黒染めを強要された」だけが引用であって、その部分は被告の主張だから真偽のほどは関西テレビのあずかり知らぬところだ、ということだろうか。すると他の部分、「地毛なのに」と「女子生徒が大阪府を訴え」と「『指導に違法性はない』と判決」については事実ということになる。

 日本の裁判所としたら極めて異例で、かつ、あってはならない判決だろう。実際にやるかやらないかは別として、大阪府は金髪の留学生でも黒染めを強要する権利を認められたのだ。そんな無体なことがあっていいはずがない。
――それがこのタイトルから与えられる印象である。

 もう一度読んでみよう。
『地毛なのに”黒染めを強要された” 女子生徒が大阪府を訴え 「指導に違法性はない」と判決』
もちろんそんなことはない。

【判決の内容】

 各紙の内容を概観するとこの裁判で争われたことは次の3点にまとめることができる。

  1. 生徒の染髪などを禁止した校則ならびに生徒指導の方針に違法性はなかったか
  2.   原告女生徒に対する指導に違法性はなかったか
  3.   原告女生徒が不登校になったあとの学校の対応(席をなくす、名簿から削除する等)に違法性はなかったか

 このうち1については他紙によると、
 高校は必要な事項を校則等によって一方的に制定し、これによって生徒を規律する包括的権能を有しており、生徒も学校の規律に服することを義務付られるとし、そのうえで本件の校則も、社会通念に照らして合理的なものであり、学校の裁量の範囲内のものとして違法とはいえないと判断した。
 つまりこの程度の校則を定めることに何ら問題ないとした。

 2.については私が引用したこの記事にある通り、
「教師らは女性の髪を直接見て地毛が黒髪だと認識し指導するなどしていて、違法とは言えない」
 つまり生まれつき茶色っぽい髪の毛という女性の訴えを退けたのである。


 また3.については女性側の訴えをほぼ認めて、大阪府に33万円の支払いを命じている(請求は約220万円)。

 

【しかしテレビ局は認めない】

 原告女性の髪はもともと茶色っぽいものではなかった――それはこの裁判の肝だ。生まれつきの髪を強制的に染めさせようとしたという話だったから、マスコミは飛びつき、世間は怒った。それが嘘だったとなると世論は一気に冷える。

 考えてみれば、
 頭皮に痛みが出るほど何度も黒染めして
というのも、
 黒く染めたものをまた赤く染めて、さらに指導を受けて黒く染め直しといったことを繰り返し行ったからそうなったのであって、なんど染めても黒くならない染料などそうはないだろう
という疑いも生まれてこようというものだ。

 しかし関西テレビは何としてもこの裁判を「地毛の茶髪であっても黒く染めさせる高校と教委の強権体制、そして裁判所の頑迷」という話にしたいらしい。

 不当判決と書かなかっただけでも、まだましということだろうか――。


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