キース・アウト

マスメディアはこう語った

英語やコンピュータやその他もろもろの新しい学習によって、学校から子どもたちが駆け回り、しっかり働く時間が失われていく。おかげで子どもたちはすっかり老人化してロコモティブシンドロームに苦しむようになっているという。だが、だったら昔のように走り回らせ、働かせればいいじゃないか。

(写真:ACフォト)

記事

 

「前屈」「雑巾がけ」できない…子どもの運動機能に異変「子どもロコモ」とは? 原因は「姿勢の悪さ」や「運動不足」に
(2024.02.20 BSS山陰放送

newsdig.tbs.co.jp

「ロコモ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 年齢とともに、立ったり座ったりする機能が低下した「ロコモティブシンドローム」の略称です。
大人だけなく、子どもたちにも広がっています。その背景にあるのは、「姿勢の悪さ」や「運動不足」です。
年齢とともに、骨や関節などの「運動器」の働きが衰え、歩くなどの動きに異常をきたす状態のことを指します。
一般的には中高年に多く見られますが、近年、子どもたちの間でも、バランス能力や柔軟性が低下した「子どもロコモ」が増加傾向にあるというのです。

全国ストップ・ザ・ロコモ協議会 林承弘 理事長
「たとえばしゃがみ込みができないとか、あるいは体前屈ができない、肩が垂直に上がってこない。もうひとつはバランスが悪いということですね。雑巾がけができない。体を支えられず顔面を打ってしまいます」

日常生活にも支障が出る「ロコモ」。
子どもたちの体に異変が起きている原因は、姿勢の悪さや運動不足です。

全国ストップ・ザ・ロコモ協議会 林承弘 理事長
スマホの姿勢ってのはもうすごく体の姿勢を悪くする一つの原因とも言えるんですよね。運動不足も重なってですね、体が硬くなっている。さらに追い打ちをかけるようにコロナですよね。さらに身体を動かさなくなって。いろんな動作が自分の手じゃなくて出来てしまう『超便利社会』が、逆に言うと、子供たちの体を使うことの経験を減らしてるってことが言えるかなと思います」

便利なものがあふれたことで体を動かす機会が減ったことや、スマートフォンやゲーム機などの普及で全身を動かして遊ぶ機会が減少。
基本的な体の使い方が身についていないといいます。
(以下略)

 割愛した部分に書かれているのは「子どもロコモ」かどうかをチェックするポイントの紹介。実際の子どもたちを調べている様子。そして改善策としての「子どもロコモ体操」の提唱である。
 全国ストップ・ザ・ロコモ協議会の林承弘理事長は
「数分でもいいですから毎日必ず行うこと、それを継続するってのはものすごい大事だと思ってます」
と語っている。しかし待てよ?

 もともとある運動不足とスマホ姿勢が重なって体が硬くなっているところに、新型コロナが追い打ちをかけてさらに子どもが動かなくなり、「いろんな動作が自分の手じゃなくて出来てしまう『超便利社会』が、(略)子供たちの体を使うことの経験を減らしている」ことに原因があるなら、子どもたちがスマホを手にしていない時間に、いろいろなことを自分でやらせ、意図的に子どもたちが身体を動かす機会をつくればいいことではないか。
 学校ならそれが簡単にできるし、そもそも学校というのはそういう場所だったのではないか――。

 朝の活動でグランドを駆け回る子がいて、20分休みも慌ただしく外に飛び出していく子どもたちがいる。昼食もそこそこにまた外遊びに出かけ、放課後も暗くなって教師に怒られるまでいつまでもグランドで遊んでいる。それが本来の子ども姿ではなかったか。
 もう半世紀以上も前の話だが、私が児童として通っていた学校には、朝清掃と午後清掃、さらにそれとは別に全員が屋外に出る外清掃・花壇・畑の時間があった。毎日3回もある“清掃活動”は私たちをウンザリさせたが、身体は強くなったはずだ。

 しかし現代は子どもに、小指の先ほどの痛みも与えてはいけない時代だ。朝の活動の全校体育の時間も減りマラソン大会も水泳大会も縮小される。清掃も一日置きにしてしまった。20分休みがドリル学習のために15分になり、やがて普通の10分休みになってしまう。
 かつて体育は知育・徳育とともに学校教育の三本柱のひとつだったが、英語やらコンピュータやらに押されて見る影もなくなった。

 「子どもロコモ体操」は悪いものではなさそうだ。しかしそんなことをする時間があったら子どもは外に飛び出して遊べばいいのだ。あるいは毎日、掃除をしっかりさせるだけで、しゃがみ込みも体前屈もできるようになり、バランスも良くなって雑巾がけで転ぶようなこともなくなるはずだ。
 ほんらい学校で遊んでいるだけで身につくものをわざわざ「子どもロコモ体操」で補うのは、食事の質をわざと落としてサプリメントで補うのと同様、愚かなことである。