キース・アウト

マスメディアはこう語った

「高知県の小学校教員採用試験、合格者の7割が辞退しても県教委が涼しい顔をしているワケ」~いつものことですから・・・

(画像:フォトAC)

記事


小学校教員採用予定の倍以上が合格しても募集人員確保できず 辞退7割 高知県教委

(2024.10.31 テレ朝ニュース) 

news.tv-asahi.co.jp

 高知県教育委員会は、来年度に採用する小学校の教員について、合格した280人のうち、およそ7割にあたる204人が辞退したと明らかにしました。

 元々の採用予定人数は130人。倍以上の合格者を出したことになりますが、辞退者の続出で追加合格者の13人を加えても、現時点で89人の教員しか確保できていません。
(以下、略)

 このニュースの意図は何だろう?
「教員採用は絶望的な段階に入った」
ということだろうか、
「教員採用試験を、民間や他の公務員試験の腕試しで受けるならいいが、教員になるべきではない」
ということなのか、あるいは、
高知県教委はバカなのか」
という話だろうか。いずれにしろ気持ちが前向きにならない記事である。280人分の204人、学校も教職もよくも嫌われたものだ。 

高知県の教員採用試験事情】

 しかしそれにしても採用予定者130名に対して2倍以上の280名もの合格者を出したというのも大変なことだ。どこぞの私立高校、私立大学に似て、最初から大量の辞退者を見込んでのことなのだろう。さらに言えば教員採用試験の倍率が平均で2倍を切ろうという時代に、よくもまあ280名もの合格者を出せるだけの受験生を集めたものだ。

 調べてみると今年度の志願者数は587名。四国4県ではダントツに多く、近隣の岡山市や福岡県に匹敵する。昨年は766名というとんでもない数の受験生を集め、競争率が6倍近くにもなった人気県なのである。
 いや、正確でない。
高知県の教員採用試験は、ものすごい数の受験生が受けに来て、採用予定数の2倍以上の合格者が出て、そのうちの7割が辞退するので結局は人数が足りなくなる不思議な試験である」
が正しい。

高知県教員採用試験の魔法】

 ではどうしてそんなことになったのか。
 実は簡単な話であって、教員採用試験を巡っては文科省が日程の前倒しを求めており、今年は例年よりも約1カ月早い6月16日を標準日としていたところ、高知県はさらに2週間も早い6月1日に実施していたのである。ちなみに昨年は6月17日に実施したが、それも試験のピークと比較すると3週間も早かった。
 それだけ早いと全国から受験生を集めることができる。腕試しとして受けたり、とりあえず合格をひとつ手に入れておいて、あとは安心して本命の試験に向かうという高校受験や大学受験と同じやり方が採用される。それだけのことだ。
高知県の小学校教員採用試験、合格者の7割が辞退しても県教委が涼しい顔をしているワケ」はそんなところにある。

 高知県は「他に先んじた採用試験」という試みでは先進県だ。したがって大量の辞退者という状況にも対応策をもっている。とりあえず追加合格を出して、12月頃に改めて採用試験を行う。それでも足りなければそこで改めて考える。それでいと高知県教委は思っているのだ。

【自ら火をつけ、自ら消そうとするメディアのマッチポンプ

 問題は高知県教委ではなくマス・メディアである。
 大量の辞退者が出ることを織り込んで行う教員採用試験、したがってあるのは極めて正常な状況だというのに、いかにも異常事態のように取りあげ、恐怖を演出するとともにそこまで事態を悪化させた県教委を嘲笑う。そのやり方自体が公教育を圧迫すると知りながら、状況を面白おかしく扱いたい、その方が売れるという誘惑に耐えられない。自分たちが書く記事のためにさらに教育が苦しくなったら、またそれをネタに記事を書けばいい――そうしたやり方は、少なくともジャーナリズムではなく、マッチポンプ型の放火犯の所業と言えよう。
(参考)
「2025年度教員採用試験(24年度実施)の日程のまとめ」