(写真:フォトAC)
記事
『教頭先生(52)』が"ネコババ" 同窓会費 約16万円を横領 「仕事にストレス感じていた」 後任担当者が"不審なカネの出入り"に気づき発覚 全額返済するも"懲戒免職"に 北海道教育委員会
(2024.118 北海道文化放送)
小学校の同窓会費などから現金約16万円を横領したとして、北海道北部の苫前町の小学校に務める52歳の男性教頭が懲戒免職となりました。
北海道教育委員会が11月7日、発表しました。
道教委によりますと男性教頭は、前任地の羽幌町の小学校で、2022年3月から10月にかけて、自身が管理していた同窓会会費などの通帳から、5回に分けて15万7742円を引き出し、横領しました。
教頭は横領した現金でたばこや文房具などを買っていたということです。
(以下、略)
評
【驚くべき教頭という職】
教員は多忙といっても教頭職の多忙さは尋常ではない。
校長秘書、学校総務部総務課総務係、会計課、庶務課雑務係、修繕係、渉外、職員指導係、防災安全係、苦情処理係等々、ありとあらゆる仕事をひとりでやっている。セブン・イレブン(7時から11時までの勤務)という話もあるが、単身赴任時代の私はファイブ・ナイン、正確にはフォーサーティ・ナインとでも言えばいいのか、4時半には仕事を始められるようにしていた。
私は単身で他にやることもないから面白がってやっていたが、家事・育児・介護が絡んで苦しい教頭もいれば、学校に深刻ないじめ問題や保護者とのトラブルを抱えて、四苦八苦の教頭もいて、“これでよく死なないものだ”と感心することもあった。交通事故を起こさないというのも、当たり前ではあるがあの忙しさの中では賞賛しなくてはならない気もしてくる。
そんな異常な状況はもう何十年、いや下手をすると百年以上も続いているわけで、これだけ定着していると、教頭先生数人が立て続けに死にでもしない限り、是正されないのかもしれないと思ったりもした。だから昇任した後で一緒に仕事をした教頭先生には、
「先生、いかがですか」
と水を向けたて、けっこう嫌がられたりもした。
【ただしほころびも出る】
ただ、年齢のこともあって、病に倒れる人は一般より多少おおいいような気もするし、年に1~2回、いい齢をしてどうしてこんなつまらない犯罪で捕まるのだ? と首をかしげるような事件が報道されることもある。コンビニでの菓子パンの万引きだとか、女子高生のスカートの中の盗撮だとかである。
もともとそういった性癖を持っていたと考えることもできるが、60歳近いその齢まで一度も捕まらず出世してしまったというのも考えにくいし、仮に昔からやっていたとしても教頭になってからは“絶対にできない”と、そんな決意はできなかったのかと思ったりもする。
一般教員と管理職では同じ犯罪でも影響がまったく違っていて、管理職の犯罪は迷惑をかけるところが多すぎる、そんなことは分かりそうなはずなのに、なぜそれが歯止めにならなかったのか不思議である。
わずか16万円のためにキャリアと退職金を犠牲にした記事の教頭先生も、そうした不思議のひとりである。しかしこの人は私にヒントをくれていたようだ。タイトルにある、
「仕事にストレス感じていた」
である。
【ストレスが判断を誤らせる】
犯罪の理由にストレスをもってくるとたいていの人たちは、「ストレスによる苛立ちを犯罪によって払拭し、“スカッとした”気持ちを得ようとした」といった話として聞くが、ストレスが引き起こす反応(ストレス反応)には身体的・行動的・心理的にさまざまなものがある。
例えば身体的反応としては“動悸、異常な発熱、頭痛、腹痛、疲労感、食欲の減退、嘔吐、下痢、のぼせ、めまい、しびれ、睡眠障害、悪寒による震え”など、行動的反応としては、“怒り、けんかなど攻撃的行動、泣く、引きこもる、孤立、拒食・過食、幼児返り、チック、吃音”など、そして心理的なものとしては“不安、イライラ、恐怖、落ち込み、緊張、罪悪感、あるいは感情鈍麻、孤独感、疎外感、無気力”など。さらに “集中困難、思考力低下、短期記憶喪失、判断・決断力低下”などの障害が現れるという。
中でも注目すべきは「思考力の低下」と「判断・決断力の低下」。現実にはぼんやりした状態で、“やってはいけないこと”“日ごろはしないこと”を行ってしまい、事後、気づくというパターンである。盗んだ菓子パンを手にして呆然としている教頭、盗撮をし終えて「オ、何をしたんだ?」と訝る教頭――
記事の教頭の場合は“気の迷い”や“出来心”といったレベルを越えて続けたものであるが、“わずか16万円のために棒に振っていい人生ではない”とか“転任によって自分の管理下でなくなる口座の欠損は、補填しておかなければ必ずバレる”といった、子どもでも分かりそうな判断が丸ごと抜け落ちているのだ。そうである以上、単に「愚かでだらしない中途半端な教頭の犯罪」と言って済ませるわけにもいかないだろう。メディアにはそこまで追及してほしかった。
(参考資料)