キース・アウト

マスメディアはこう語った

いったい教員の仕事の何割がDX(デジタル・トランスフォーメーション)で縮小できるというのか。授業や生徒指導や保護者対応のどれくらいをAIは代行してくれているのか、くれるのか。下手に導入して教委が「使え、使え」とうるさいので使ってみるが、研修や習熟に時間も手間もかかりすぎて、ミスも続出で後始末ばかりさせられている。

(写真:フォトAC)

記事

 

先生たちは理解しているのか?
     教育現場のICT化で “個人情報漏えい” 相次ぐ
 

  教諭は困惑「現場に “やってみましょう” とは言うけれど…」
  専門家は指摘「手が回ってない可能性、研修が不十分」

(2025.02.13 チューリップテレビ
newsdig.tbs.co.jp


学校で使われている『クラウド』という情報共有システムをめぐり、子どもたちの “個人情報の漏えい” が富山県で相次いでいます。なかには児童が回答した “いじめに関するアンケート結果” など機密性の高い個人情報までも…。現場の教諭からは、十分な研修がないままICT活用が進むことに懸念の声もあがっています。教育現場で何が起きているのか、情報漏えいを防ぐには…。
(中略)

■誤まった作業で相次ぐ “情報漏えい” …

小中学校計19校でルール違反が判明

そのクラウドをめぐって生徒や児童の重要な情報が漏えいする問題が富山県内の学校で相次いでいます。1月12日、富山北部高校の3年生19人分の名字と成績が1年生全員に閲覧できる状態になっていました。

さらに…

富山市の堀川南小学校でも、児童が回答したいじめに関するアンケート326人分をほかの児童が閲覧できる状態となっていたことがわかりました。

教員が『クラウド』の使い方を誤ったのが原因でした。

(以下、略)

【昔どこかでみたギャグマンガ2題】

 どちらが夕飯の用意をするのか、コタツの向こうとこちらでメールのやりとりをしている夫婦の話、それがひとつ目。もうひとつは職場で火災が起こって一緒にいた二人がパニックに陥り、「消防署には連絡をしたのか」「消火器を持ってこい」「消火器ってどこにあるんですか?」「ボク、使い方が分からないですが・・・」を、いちいちLINEでやり取りするので火事が広がる一方という話。どちらも現代のIT化、ICT化、DX化(定義が分からんので全部書いておく)を嘲笑ったものである。

 

【この授業に意味はある?】

 今回、取り上げた記事に描かれている授業――実際を観ていないのでわからないと言えばわからないのだが、頭に浮かぶのはコタツの両側の夫婦や火事に右往左往する従業員の姿である。

 記事によると、
先生から課題が出されると、児童たちは一斉にノートパソコンに向かって自分の考えを打ち込み始めました。児童たちは驚くような速さでタイピング。もちろん “ブラインドタッチ”
とかだが、私の知っている昭和・平成の子どもたちは、課題が出されるとまず考えた。さっと鉛筆をもってすらすらかける子などめったにいなかった。それがノートパソコンだと一斉に可能になる魔法が私には分からない。まさか手書き原稿が横にあってそれを写しているだけではないと思うが、1万歩、ゆずって、現代の子どもたちが課題を与えられるとすぐに文章にできる子ばかりだとしても、なぜ手書きではいけないのか。

 

先生からの提案を受け、児童たちはシートに同じようなことについて調べている友達の所に行って、意見交換します。
「おーい、◯◯くん。△△さんが同じようなことを書いているよ。ここに来て意見交換したらどう?」
ということだと思うが、教師が机間を回ってノートを見る手間と、パソコン内で見るのとで、どれだけ違うのだろう? これもよく分からない。

 

 子どもにしても
「紙に書くと、回して読んだりしないといけないけど、スプレットシードで書くと自分のパソコンで他の人の意見もみられるから便利です」
 いや、別にパソコンで見られなくても、机の間を歩き回って覗いて来ればいい。見たくなるような意見なんて、申し訳ないが特定の場所にしかない、その子のところ行け! と年寄りは思う。
 モニター画面を見ながら黙々と互いの考えを読むのと、手を挙げて指名され、
「はい、◯◯くん! 君の考えは?」
とやるのとどちらがよいのか。
 もちろん将来的に「皆が集うような形での学校」はなくし、日本中が在宅教育に切り替えていくのならそれも良いが、いまから“ほぼすべての授業”で使用…するというなら、そのメリットをもっと分かり易く、十分に説明していただけるとありがたい。

【DXが教員の仕事を増やす】

 さて、本題を忘れていた(取り上げた記事でもかなり迂回をしているが・・・)。問題は『クラウド』の利用に際して、 “個人情報の漏えい” が相次いでいるという点だ。

 なかには児童が回答した “いじめに関するアンケート結果” など機密性の高い個人情報までも…出て行った場合もあったという。確かに深刻である。
 富山市教育委員会は、個人情報を含むアンケートをクラウド上で実施しないよう呼びかけていました。しかし、富山市内の小学校17校、中学校2校の合わせて19校で、ルールが守られていませんでした。

 富山市内の小学校と中学校の数はそれぞれ 66校と27校、したがって小学校の26%、中学校の12%だからこれは完全な不徹底。しかし記事の後の方を見ると、
「健康観察とかそういうのはクラウド上でやっているし、健康観察は個人情報じゃないのかなと思う」
といった具合で、そもそも線引き自体が難しそうである。
「あれはやっていい、これはやってはいけない」といったケース・バイ・ケースの仕事はそもそも兼任には向いていない。専属の従事者がいてしかるべきである。

 

クラウドの活用について)事務的な活用のところまで手が回ってない可能性があります。そちらのほうの研修が現時点では十分でない可能性はあります
 それはそうだが研修や習熟の手間を考えたら、ITやらICTやらDXによる教員の働き方改革などやめてほしい。アナログの方がよほど効率もよく安全な場合も少なくないのだ。
*私は現職のころ、十年余りも死ぬほどパワーポイントを使ってから飽き、模造紙によるポスター・セッションに戻ったことがある。結局、ポスターは教室に張っておけるのがいい。もちろんパワポでプレゼンテーションをして結果を模造紙大にプリントアウトできればいいのだが、そんな予算はどこにもなかった。