(写真:パブリックドメインQ)
記事
下着の色まで指定 行き過ぎた“校則” 見直しを 文科省が通知
(2021.06.13 HNK)
生徒の下着の色まで指定するなど、行き過ぎた校則や指導が問題となる中、文部科学省は全国の教育委員会に対し、社会常識や時代に合わせて積極的に校則を見直すよう通知しました。
学校の校則については、大阪の府立高校の頭髪指導をめぐる裁判をきっかけに、各地で見直しの動きが広がり、下着の色を「白」と指定して実際に確認するといった人権上の問題や、マフラーを禁止するなど、合理的でない校則への指摘が相次いでいます。
これを受け文部科学省は、全国の教育委員会などに対し、校則が子どもの実情や保護者の考え方、また社会の常識や時代にあった内容になっているか、絶えず積極的に見直すよう、通知しました。
各地の改善事例も紹介し、教育委員会の取り組みとして、校則の内容や見直し状況の実態調査をした例や、校則について生徒が考える機会を設け、改正手続きを明文化するよう求めた例を挙げています。
また、学校単位の取り組みとして、学校のルールで変更したい点を生徒が議論する取り組みや、生徒会やPTAに意見を聞き取っている例、それに、ホームページで校則の内容を公表している例が示されています。
そのうえで、校則の内容や必要性について、児童や生徒、保護者と共通理解を持つことが重要だと呼びかけています。
評
校則については山ほど言ってきて、まだ山ほど話したいことがあるが、今日は別の観点からひとことだけ言っておく。
教員の働き方改革が強く言われる昨今、文科省は通達ひとつを出すにもたいへん気を使い、詳細な資料をつけたり今回のように例を挙げて方向性を示してくれたりする。
しかしそれにしても、
学校単位の取り組みとして、学校のルールで変更したい点を生徒が議論する取り組みや、生徒会やPTAに意見を聞き取っている例、それに、ホームページで校則の内容を公表している例が示されています。
これをきちんとやったらどれほどの時間と手間がかかるか、文書を書いた文科官僚はもちろん、大臣やその他の政治家、あるいはメディア、世間の人々はまったく理解していないようだ。
もちろん教職員が一方的に審議して下し置く校則なら簡単だが、学校のルールで変更したい点を生徒が議論する取り組みだの、生徒会やPTAに意見を聞き取るなど始めたら、「どこまではまるドツボかな」みたいな話になる。
下着ひとつをとっても、児童生徒の中にはどうしても白以外のものをつけたい子もいればどうでもいい子もいる。下着といっても下半身の話ではない。制服のブラウスや体育着・Tシャツから透けて見える上の話である。
一方に扇情的な下着をつけたがる娘を抑えきれず、なんとか学校に禁止してほしいと切実に願う保護者がいるかと思えば、息子の嫌がるランニングシャツならまだしも、白のタンクトップなんてどこに売っているんだと息巻く親もいる。
「それは親の責任で――」と言いたくても、担えない家庭があることは学校が一番よく知っている。
しかしパンドラの箱はこじ開けられたのだ。
髪型も服装も持ち物も、校則のひとつひとつがまな板に載せられ、吟味される。どう転んでも不満を言う人はとうぜん出てくるから、学校が説得に回らなければならない。髪型や下着の自由は既定になってしまったから、学校自身が納得していないのにも関わらず、保護者や地域の人々を説得しなくてはならない。
1年かかるか2年かかるか分からない。しかしとにかくやるしかない。
さて文科省を始め政府・各自治体は「教員の働き方改革」に非常に熱心だ。
教師を思い遣ってのことではない。今のままだと人材どころか必要数の教員ですら確保できない可能性が出てきたからだ。
それにも関わらず、仕事は日増しに増え、職場として学校のブラック化は進展する。
この一年余りのあいだに増やされたもののうち、大きなものだけを数えてみよう。
- コロナウイルス感染症対策、
- リモート学習のためのタブレット端末の準備及び学習内容の充実、
- スマホの持ち込みを許可したためにしなければならない雑務・機器の管理、
- 子どもの性被害を減らす「生命(いのち)の安全教育」、
- そして今回のブラック校則の見直し。
どれをとっても必要で、たいへんで、片手間でできるものではない。
そして代わりに削減された仕事は・・・・、
今のところ、ない。