キース・アウト

マスメディアはこう語った

 学校で児童生徒に1人1台配布されている端末が、相次いで故障したり壊されたりしているという。一部では保護者に修理費を求めたり、あるいはPTA予算で保険に入っていたりするらしいが、子どもに高価な道具を渡したのだ、30人の学級で1年間に5~6台壊れるくらい、最初から織り込んでおけよ。

記事

 

学習端末「よく机から落ちる」「こんなに壊れるとは」…自治体にのしかかる修理費
(2022.10.08 読売オンライン)

www.yomiuri.co.jp

 学校で学習用デジタル端末が小中学生に1人1台配布されて1年以上たち、端末の故障が相次いでいる。端末を落とすなどの事故が目立ち、修理費が年間数百万円に上る自治体もある。今後、機器の更新でも自治体や保護者の負担が生じる可能性もあり、現場は対応を迫られている。
 
4か月で40台
 「こんなに壊れるとは予想しなかった」。東京都の区立小学校の男性副校長(48)は驚く。端末は全校約650人に配られ、昨年春から本格的に使い始めた。1年目の故障は約60台だったが、今年度は4~7月だけで約40台に上った。故障の多くは学校や自宅で落としたり、ぶつけたりしたことが原因だ。
  
 学校の机には、教科書、ノート、文具に加え、端末も置かなければならなくなった。都内の公立小学校で6年を担任する女性教諭は「机に空きスペースがなく、よく端末が机から落ちる」という。「来年の1年生が使うので大事に使って」と呼びかけるが、落としてしまう子供は減らない。少数だが、わざと壊す子もおり、昨夏には小5男子がキーボード部分をはがしてしまった。
(以下、略)

 

【「こんなに壊れるとは予想しなかった」わけがない】

 学校管理の実質的な責任者である副校長として、
「予想通り、小学生なんてこんなもんでしょ」
とはとてもではないが言えない。だから「こんなに壊れるとは予想しなかった」と言っているだけで、そんなこと、少しも予定外ではない。現場の教師に匿名で聴けば、
「学校で使って家にも持ち帰らせているのですから、30人のクラスで年間5~6台の破損は仕方ないでしょ」
くらいのことはきっとみんなが言うはずだ。

 信じられない人は小学生の下校風景を見に行ってみればいいのだ。
 学校の児童玄関を飛び出した子どもたちは、まだ時間があればランドセルを投げだして、校庭に遊び出る。投げ出してというよりは地面にぶん投げて走っていく。背負ったままの子どもも、よせばいいのにそのままで鉄棒の逆上がりに挑戦して、落ちる。どういう意味があるのか背中を向け合い、ランドセルをぶつけ合って「ドンケツゲーム」みたいなことを始める子もいる。彼らはいずれもその中にPC端末の入っていることを忘れている。

【モバイルのみの学習は不可能だ】

 もちろん普通の扱いの中で壊してしまうこともある。記事にもあるとおり、
 「学校の机には、教科書、ノート、文具に加え、端末も置かなければならなくなった」
 のだ。端末の入る以前だって教科書を落とす子、筆箱を落とす子はいくらでもいた。そこに端末が加わればいろいろ落ちる頻度は高まるに決まっている。
「だから早くデジタル教科書にすればいいのだ」
という声も聞こえてきそうだが、教科書も資料集もノートもデジタル化して、端末上で切り替えるなどということ、子どもができるようになるためには相当時間がかかるだろう。それに小学生の学習なんて机上に広く展開して初めてできるもので、小さなモニター画面でできるものでもないと思う。大人のデイトレーダーでも机上にモニターが何台も並んでいるように、一覧性が大切な場面は山ほどあるのだ。

【そんなもの最初から分かっている必要経費】

 だからモバイルを使った学習はダメだと言っているのではない。端末がやたらと壊れたり故障したりすることについては予算的に最初から織り込めということだ。
 記事の割愛した部分には、配給した端末約1万1000台に対して修理費用として75台分約260万円を計上した自治体の話が出てくる。誰が考えても足りるはずのない金額だが当初予算と言うのはそういうものだろう。あとは補正でやればいい。
 ではどのくらいを覚悟しておけばいいのか?

 ちょっと想像してみるといい。
 30人のクラスの30台の端末。一年間日常的に持ち帰りするとして、何台修理が必要となるか。
 わずか3台(1割)ということはないだろう。同じ子どもが壊す可能性も含めて5~6台は覚悟した方がいい。ということは2割だ。
 1万1000台配給した先の自治体で言えば2200台分、わずか7600万円ほどである。ICT教育が絶対ならそれもやむを得ない支出ということだろう。覚悟すべき金額だ。