キース・アウト

マスメディアはこう語った

『教職員の「自腹」年100万円』って、この記事のタイトル、もしかしたら「教師ってマジ大変だぜ! 忙しいだけじゃなくて自腹まで切って仕事しなくちゃならねぇんだ。こりゃあ教師なんて、やっぱ、やるべき仕事じゃねえな」って言っていないかい?

(写真:フォトAC)

記事


教職員の「自腹」年100万円の例も 7割超が授業などの費用負担
(2024.05.20 朝日新聞)

www.asahi.com

 公立小中学校の教職員千人余りのうち、2022年度中に教材費などを自己負担する「自腹」の経験があるという人が7割以上を占め、1万円以上を負担した人が3割を超えていたことが、研究者らの調査でわかった。「公立学校の予算が少ないことや、教職員にとって予算の使い勝手が悪いため、負担を抱え込んできた実態が浮き彫りになった」と研究者らは見る。
(以下、略)

 割愛した部分を読むと調査会社に登録している教職員1034名からインターネットを通じて調査したということだが、ネットに登録するような積極的なもの言う教員たちにはそれなりの偏りがある。年間100万円はウソではないにしても、毎年100万円ずつ数十年も出し続けていると言うこともないだろう。あるとしたら支出の中身と頭の構造を問わなくてはならない。

【私だって自腹は切った】

 もちろん振り返れば私だって1年に100万円近くも使ったことはある。特にワープロ専用機の時代やコンピュータ時代の初期は、学校に使える機械がないためすべて自腹で購入して研修も自腹で行った。
 他にも、30年以上前のことになるが、自分はなぜあんなに学校にいたがるのかと考えたら、コピーと印刷だけは学校にいなければできないと気づいてコピー専用機を買った。月給10万円そこそこの時代に二十数万円もかかったと記憶している。
 コンピュータ時代になっても普通のプリンターでは十分に仕事ができないため、A4プリンターとA3プリンター、それに印刷機代わりのモノクロのページプリンターと3台を使い分けていた時代もある。
 学校でやれば自腹を切らずに済むのに子育ての真っ最中で、家に帰らなければならない時代、教材づくりのためのインク代もトナー代もすべて自腹だった。
 
 持ち帰り仕事のためではなく、学級そのものへの投資も(大したものではないが)自腹だった場合は少なくない。
 教室は目に見える学習環境そのものだから美しく保ちたい。汚いことをしてはいけない、美しく生きなさいという以上は環境も美しくしておかなくてはならない。年間を通じて貼っておくような掲示物はカラー印刷でしかもラミネートしておかなくてはならない。予定黒板も教室の後ろにある括りつけのものでは生徒が見落とす。専用の黒板を用意して前に置こう。
 ガムテープを剥がした後の汚れなどは本当に苦になる。だから私はスプレー式のクリーナーを年に数本を消費する。スプレー式防錆潤滑油も好きでこれは年に2本ほど。その他、落書き消しやシール剥がしのスプレー、汚れ取りのヘラ・ブラシ。
 クラスマッチで生徒が賞を取ればそれを飾る額を買い、窓辺が美しく見えるよう(そして窓際のロッカーの上に座ったり立ったりして落ちるバカが出ないよう)並べて置くプランターも培養土も花のタネも、学年費で落ちないようなら自腹を切るしかない。ときどき切り花も用意する。

【金を払うことが保険である場合もある】

 教員としての私はそうしたものに払う金を惜しまなかった。仕事の効率を上げたり生徒指導や学習指導の効果を高めたりするために必要な金、危機回避のための保険金のようなものだと感じていたからだ。
 ほかの業種だって似たようなことはあるだろう。ITの先駆者たちは企業の指示が出る前にすでに機器やアプリに触っているだろうし、保険の外交員だってノベルティやら販促品を自腹で購入していると聞いた。サラリーマンとしての常識的な範囲を越えて高価なスーツやアクセサリを身に着ける人もいるが、それが仕事の質や効率を上げると信じる人は身だしなみにこそ金を惜しまない。もちろん会社を説得したところで、通る話ではないからだ。
 
 教師も同じで、より良い仕事をしようとすればどうしても金は使いたくなる。もちろん「自腹は切るべきではない。教室で必要なものは公費でやるべきだ」というのは筋だが、言えばやってくれるというものではない。それに「教育委員会に働きかけるには時間も手間もかかるから自腹の方が安上がり」と思うこともあるし、「こちらに予算を回した分、(同じ教育予算の)もっと重要な分を知らぬうちに削られてもかなわん」という気持ちも動く。

【程度問題】

 いずれにしろ程度の問題なのだ。
「百円ショップに行ったらかわいいマグネットクリップがあった。これを教室で使ったら子どもは喜ぶだろうな、そう思って5個買った」
くらいならいい。しかし自分がやりたい授業のために、必要な文房具を児童生徒の人数分購入するとなると、それはダメだ。周りも迷惑する。
――難しいことではない。常識的にやれということだ。

【それにしてもどういう記事だ?】

 それにしても朝日新聞、おまえはどちらの味方なのだ?
 教師に同情的な記事と思うが、タイトルはあきらかに、
「教師ってマジ大変だぜ! 忙しいだけじゃなくて自腹まで切って仕事しなくちゃならねぇんだ。こりゃあ教師なんて、やっぱ、やるべき仕事じゃねえな」」
と言っているとしか思えない。