(写真:フォトAC)
記事
先生の7割が自宅に仕事を持ち帰り 「残業30時間」目標の陰で広がる“隠れ残業” 子育て中の教師が解説
(2026.01.21 Yahoo)
学校の先生たちの働き方改革が進められる中で、一つの大きな懸念が浮上しています。「見かけ上の残業時間は減っても、自宅での持ち帰り仕事が増えるだけではないか」という問題です。*1 *2
*1:9割超が残業、7割が持ち帰りを実施。教員未配置が負担増を招いており、抜本的な増員が必要と訴える。出典:教育新聞
*2:残業削減目標が掲げられたが、業務削減が伴わねば「持ち帰り仕事」が増えるだけという現場の懸念がある。出典:読売新聞
先生の約7割が仕事を自宅に持ち帰っている
全日本教職員組合(全教)の調査によると、勤務時間の前後で時間外労働をしている教職員は9割以上に達しています。さらに深刻なのは、約7割の教職員が自宅に仕事を持ち帰っているという実態です。
持ち帰り仕事の内容で最も多いのは、「翌日の授業や単元の準備」(59%)です。子どもたちの前に立つための大切な準備を、先生たちは自宅で夜遅くや土日に行っているのが現状です。
「残業削減目標」が「隠れた残業」を生むリスク
政府は現在、教員の処遇改善(給特法改正)を進めており、2029年度までに月平均の残業時間を「30時間程度」に削減する目標を掲げました。
(以下、略)
評
引用した記事の筆者は教員歴20年の現役教師だそうだが、学校問題の着眼点はいいものの分析は甘い――というか論点を外す。思うに歴史的経緯に対する配慮が不足しているのだ。
【教員不足が長時間労働の主因か?】
今日ここで取り上げた記事も、
「先生の約7割が仕事を自宅に持ち帰っている」
という事実を押さえ、
仕事を減らさずに残業時間を減らせば、
『「残業削減目標」が「隠れた残業(引用者注:持ち帰り仕事)」を生むリスク』
が高いことを示す。ここまではよい。しかしその先で、
「教員不足が招く長時間労働の悪循環」
と、が教員不足が持ち帰り仕事の主因であるかのように語るのはいかがなものか。
教員が足りないと言われるようになったのはここ10年間ほどの話だが、それ以前の教員が足りていた時代に長時間労働はなかったのか、持ち帰り仕事はなかったのか――。そんなことはないだろう。むしろこの10年あまりは改善傾向にあるはずだ。教員不足は一部の長時間労働に拍車をかけたかもしれないが、未配置問題がなくなれば長時間労働がなくなるというものでもない。
【教員の抜本的な増員と未配置の解消は現実的な解決策なのか?】
さらに自分もYahooニュースに記事を載せる身でありながら、結論をどこかの「専門家」に預けてしまうのも納得できない。しかもその内容は支離滅裂だ。
「専門家は、単なる時間削減だけでなく、教員の抜本的な増員と未配置の解消こそが、働き方改革の実効性を高める最低条件であると指摘しています」
未配置解消は働き方改革と無関係に果たされなければならない喫緊の課題である。子どもが授業を受けられていないからだ。
また「教員の抜本的増員」は20年前なら議論になったが今はならない。採用の枠を広げても来てくれる人がいない、そんなことは記事の筆者自身が前の日(1月20日)に縷々述べていたこと*3である。
*3:教員採用倍率ダウン=質の低下?現場目線で見る「本当に危ないポイント」
出典:Yahoo
【単なる時数削減とは何か】
さらにもうひとつ前に戻って「単なる時間削減」、そんなものが働き方改革の計画のどこにあったのだろうか。政府は2029年度までに月平均の残業時間を「30時間程度」に削減すると言っているが、それは目標であって絵に描いた餅だ。これが“総合的な学習の時間70時間をなくします”とか“小学校英語をなくします”だったら確実な時数削減だから、“70時間ぽっちの削減じゃ足りない。単なる時間削減だけでなく~」といった具合に文章を続けることもできるが、まだ達成されていない目標では話にならない。そもそも月8時間を越えて存在してはいけない教員残業を政府が「減らします」ということ自体がおかしいのである。
「時間外労働を減らす」は「時間外にやらなくてはならない量の仕事を減らします」か、「分業できるように人数を増やします」のどちらか、あるいは両方によってしか達成できない。そのうちの後者の実現性がなくなった今、可能性は前者にしかない、それは誰が見ても明らかなことだ。
「仕事を減らさずに時間だけを制限すれば、それはすべて持ち帰り仕事になる」
そこから記事を書き始めたら筋違いのこと、できもしないことを結論にするのではなく、現状と論理の導くところへ、真っ直ぐに進むべきだ。
優秀な論客になりそうなだけに残念なことである。